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短時間の軽運動で記憶力向上―脳内覚醒機構を活性化

 2024年06月03日 10:00

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 新たな認知症治療薬が9月に承認されたが、進行を遅らせる効果にとどまる。発症後の根本的な治療が難しい中、薬以外の予防策として研究が進んでいるのは運動だ。流通経済大学スポーツ健康科学部(茨城県龍ケ崎市)の諏訪部和也准教授らはこのほど、高齢者が散歩程度の運動を10分間行うだけで、安静時より直後の記憶力が向上した、とする研究結果を発表した。

▽10分間の低強度運動で

 諏訪部准教授らは2018年に、若年成人36人にヨガ、太極拳などに相当する超低強度の運動を10分間行ってもらい、直後の記憶力が向上したことを明らかにした。記憶機能を担う脳内の組織である海馬が刺激され、脳内のネットワークが強化されることも分かった。

 今年10月に公表した研究では、健康な高齢者21人に散歩程度の低強度運動を10分間行ってもらい、直後の記憶力を調べたところ、10分間の安静時に比べ、記憶力が明らかに上がる結果が得られた。

▽運動時に瞳孔径が拡大

 さらに低強度運動で記憶力が向上するメカニズムについても検討した。

 「加齢によって記憶力が低下する原因の一つとして、海馬を含む脳の広範囲の神経活動を調節する脳内覚醒機構の機能低下が考えられていました。脳内覚醒機構は簡単に言うと、頭をしゃきっと目覚めさせるシステム。この活動レベルは、瞳孔(黒目)の大きさが指標になります。そこで、低強度運動時の瞳孔径の変化を調べました」

 その結果、運動時は安静時に比べ瞳孔径が拡大し、拡大の程度が大きいほど記憶力向上の効果が高いことが分かった。「低強度運動による記憶力向上のメカニズムとして、脳内覚醒機構の活性化が関与していると考えられました」

 諏訪部准教授は「ちょっとした家事や農作業などの身体活動も同様と思われますが、散歩程度の軽運動でも認知機能に良い影響をもたらすことを明らかにできました」と語る。今後、短時間の低強度運動を習慣的に行うことが記憶などの認知機能に及ぼす効果や、そのメカニズムを研究する予定だ。「瞳孔径を指標とした運動プログラムの開発も進める予定です」(メディカルトリビューン=時事)

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 流通経済大学スポーツ健康科学部の所在地 〒301―8555 茨城県龍ケ崎市120 電話0297(64)0001(代表)

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