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中年期の水分補給不足で早期死亡リスク増

2023年01月16日 17:18

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イメージ画像 © Adobe Stock ※画像はイメージです

 中年期に水分補給量が十分でない人は、老化速度が上昇し、慢性疾患や早期死亡のリスクも高まる可能性がある。このような観察データの解析結果を米・国立心肺血液研究所(NHLBI)のNatalia I. Dmitrieva氏らがEBioMedicine2023年1月2日オンライン版)に報告した。

水分・塩分バランス調整が正常な1万1,255例を解析

 長期の水分摂取制限が寿命を縮めることは、マウス実験で証明されている。Dmitrieva氏らは「適切な水分補給によりヒトでも老化プロセスを遅らせることができる」との仮説を立て、米国のARIC(Atherosclerosis Risk in Communities)試験のデータを使って検証した。ARIC試験は、45~66歳の米国人1万5,792例を1987~89年(Visit 1)に登録した前向きコホート研究。25年以上追跡され、現在も進行中である。

 健常者における水分補給量の不足は、血清ナトリウム(Na)値と張度の上昇に反映される。血清Na値は水分補給量が減ると上昇するので、同氏らはこれを水分補給習慣の代用マーカーとして使用した。

 今回は、水分補給量の多寡が健康に及ぼす影響を検討するため、水分補給量以外の要因で血清Naが増減している可能性のあるは者は除外した。具体的には水分・塩分バランス調整機構が乱れていると考えられる、①平均血清Na値が正常範囲(135~146 mmol/L)を逸脱している、②血糖値が140mg/dL超、③BMIが 35超―の者を除外した(高血糖は脱水を惹起するが血清Na値は低下する。また、肥満は体液分布異常をもたらし血清Na値を上昇させる)。最終的に1万1,255例のデータを解析した。

生物学的年齢で加齢プロセスを評価

 Visit 2(1990~92年)を今回の解析のベースラインとした。この時点の平均年齢は57歳(女性53%、男性47%)、白人80%、黒人20%、最終フォローアップの2011~13年(visit 5)での平均年齢は76歳だった。

 中年期における血清Na高値が老化の加速と関連するかどうかを明らかにするため、Dmitrieva氏らは、加齢に伴う慢性疾患と全死亡をアウトカム変数とする生存時間解析(time-to-event analysis)を行った。加齢プロセスの評価尺度には生物学的年齢(biological age)を用いた。

 まず、ベースラインの生物学的年齢を曝露変数として生存時間解析を実施し、ARICコホートにおける慢性疾患と死亡率の予測能を評価。次に血清Na値を曝露変数、生物学的年齢を従属変数とする横断的なロジスティック回帰分析を実施した。

血清Na142mEq/Lを閾値として高リスク群の同定が可能か

 解析の結果、中年期の血清Na値142mEq/L超は慢性疾患発症リスクの39%上昇と関連し〔ハザード比(HR)1.39、95%CI 1.18~1.63〕、144mEq/L超は早期死亡リスクの21%上昇と関連することが明らかになった(同1.21、1.02~1.45)。血清Na値 が142 mEq/L超であることは暦年齢よりも生物学的年齢が高いことと有意に関連し〔オッズ比(OR)1.50、95%CI 1.14~1.96〕、生物学的年齢の高さは慢性疾患リスク(HR1.70、95%CI 1.50~1.93)および早期死亡リスクの上昇(同1.59、1.39~1.83)との関連が認められた。

 Dmitrieva氏らは「今回示された中年期の血清Na値142mEq/Lという閾値は、より厳格な臨床評価が必要な高リスク群の同定に有用かもしれない」と考察している。

 同氏は、観察研究であることによる交絡因子の存在は否定できないと研究の限界を示しつつも、中年期から70~90歳までの長期追跡をARIC試験の強みとして挙げ「水分補給量の減少は血清Na値上昇の主因の1つであることから、今回の知見は最適な水分補給における現行の推奨を補強するものである」と結論している。

木本 治

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