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アトピーの痒みの原因と治療薬候補を発見

2023年01月20日 17:17

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イメージ画像 © Adobe Stock ※画像はイメージです

 アトピー性皮膚炎(AD)は、増悪と寛解を繰り返す強い痒みを伴う湿疹を特徴とする。分子標的薬の登場により治療に進歩が見られるものの、強い痒みが患者の日常生活や身体・精神面に及ぼす影響は大きく、原因の解明および治療薬の開発が求められている。富山大学理事/副学長(分子病態検査学講座)の北島勲氏、佐賀大学分子生命科学講座分子医化学分野准教授の布村聡氏らの研究グループは、ADモデルマウス(FADSマウス)を用いた実験によりADで痒みを引き起こす原因蛋白質を発見し、痒みを著明に改善する治療薬候補を同定したとCell Rep2023年1月7日オンライン版)に発表した。

炎症反応の病態への関与を検討

 ADなどのアレルギー性疾患の病態には、2型ヘルパーT(Th2)細胞による2型炎症反応の関与が知られている。搔破行動により皮膚のバリア機能が障害されると、Th2細胞が炎症性サイトカインを産生、痒みが惹起される。ADではTh17/Th22細胞やNF-κBによる炎症など、2型以外の炎症反応が高発現する患者も存在するが、病態への関与は明らかでない。

 そこで研究グループは、ADにおける強い炎症反応と炎症に関わる免疫機能および痒みを感知する神経機能の相互作用の解明、痒みの治療薬開発を目的にFADSマウスを用いて検討を行った。北島氏らが作製したFADSマウスは、NF-κBシグナル伝達に関わる遺伝子IKK2をNestin発現細胞で特異的に欠失させ、ヒトのADに近似した病態を呈する。

 まず、対照マウスとFADSマウスを比較したところ、FADSマウスでは皮下組織の炎症が強く、血中ペリオスチン濃度が有意に高値を示し(P<0.05)、皮膚炎病巣部位および血中におけるペリオスチンの過剰産生が示唆された。

 次に、FADSマウスとペリオスチン欠損マウスを交配させてFADS/Postn(-)マウスを作製した。ペリオスチン欠損のないFADS/Postn(+)マウスと比べ、FADS/Postn(-)マウスでは顔面の湿疹増悪が改善し、皮膚における皮下組織の増生が抑制、炎症細胞の浸潤も抑制された。

 また、FADSマウスは生後4週時ごろから顔面の湿疹部位を激しく搔破し始め、12週時にはさらに激化したのに対し、FADS/Postn(-)マウスでは4週時の顔面の搔破行動は極めて少なく、12週時にも抑制されていた。さらに、痒み反応に対する神経電気信号の抑制も認められたため、ペリオスチンがFADSマウスの痒み発症に重要な役割を果たしていることが示された。

ペリオスチン阻害薬により炎症と痒みが軽減

 続いて、糖蛋白(GP)Ⅱb/Ⅲa受容体と細胞接着分子インテグリンαvβ3の両方に拮抗作用を有するペリオスチン阻害薬(CP4715)をFADSマウスに腹腔内投与したところ、FADS/Postn(-)マウスで見られた顔面湿疹および搔破行動の改善が認められた。

 これらの結果から、ADでは皮下線維芽細胞で過剰産生されたペリオスチンが角化細胞のNF-κBを活性化、炎症反応亢進および感覚神経活性化を介して痒みを増強すること、CP4715はペリオスチン受容体αvβ3に作用し、皮膚炎症と痒み反応を抑制することが示された()。

図. ADの痒み増強におけるペリオスチンの役割とCP4715の作用機序

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(富山大学プレスリリースより)

 以上を踏まえ、研究グループは「FADSマウスを用いた検討から、ADでは過剰産生されたペリオスチンが知覚神経に作用して強い痒みを引き起こすことを発見し、この痒みを著明に改善する治療薬候補としてCP4715を同定した。NF-κB関連炎症などの2型炎症と異なる炎症反応の発現機序やADの病態への関与を解明、制御することで治療につながると考えられる」と結論。「AD治療薬としてのCP4715の開発を進めていく」と付言している。

(小野寺尊允)

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