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肥満とアルツハイマーで脳萎縮パターン類似

1,300例超の脳地図で直接比較

2023年01月26日 17:05

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イメージ画像 © Adobe Stock ※画像はイメージです

 最近、成人期の肥満が脳萎縮や認知機能低下に関連することが報告されているが、これまで肥満者とアルツハイマー病(AD)患者の脳萎縮パターンを直接比較した研究はなかった。カナダ・McGill UniversityのFilip Morys氏らは、大規模縦断研究2件・1,300例超のデータを用いて、肥満者とAD患者の脳地図を直接比較。両者の脳萎縮パターンが強く相関する一方で、アミロイドβ(Aβ)とタウ蛋白の蓄積には相関が認められなかったことなどをJ Alzheimers Dis2022年12月19日オンライン版)に報告した。

左側頭皮質と両側前頭前皮質で高い相関

 Morys氏らは、米国とカナダにおける多施設AD登録研究Alzheimer's Disease Neuroimaging Initiative(ADNI)から、登録時に軽度ADだった患者群およびBMI、年齢、性をマッチングさせた同数の認知機能正常な対照群の脳画像データを抽出。UK Biobankからは、AD患者群と年齢および性をマッチングさせた認知機能が正常な普通体重群(BMI 18.5~25)および肥満群(同30超)の脳画像データを抽出。これら4群(各341例、計1,364例)の脳地図を作成し、主解析として大脳灰白質の萎縮パターンを比較した。

 脳領域の萎縮における相関解析では、Spearman相関係数を用いたノンパラメトリック検定に加え、隣接する脳領域同士の空間的自己相関の影響を緩和するために並べ替え検定(spin検定)を行った。

 解析の結果、肥満群とAD患者群の脳地図は灰白質の萎縮パターンが高度に相関していることが示された(Spearman's ρ=0.363、Pspin=0.0103)。相関の高い部位は、左側頭皮質と両側前頭前皮質に集中していた。

普通体重のAD患者に限定した解析でも有意に相関

 次に、BMIによる交絡を排除するためのフォローアップ解析を行った。主解析のAD患者群から普通体重のAD患者165例(BMI 18.5~25)と肥満のAD患者41例(同30超)を抽出。それぞれに、年齢と性をマッチングさせた認知機能が正常な普通体重群と肥満群を対照群として設定し、脳萎縮パターンを比較した。

 その結果、普通体重のAD患者と肥満者との間にも脳萎縮パターンの有意な相関が認められた(Spearman's ρ=0.308、Pspin=0.0402)。

肥満関連の脳萎縮はAβやタウ蛋白質の蓄積に先行か

 さらに、肥満者とAD患者でAβとタウ蛋白質の蓄積パターンにも相関が認められるかを検討した。ADNIから、Aβ蓄積764例、非蓄積576例のPET画像データを、過去の別研究からタウ蛋白質陽性447例のデータをそれぞれ抽出し(いずれもAD患者と認知機能正常者を含む)、Aβとタウ蛋白質の蓄積パターンの脳地図を作成し、肥満者とAD患者で比較した。

 その結果、両者のAβ脳地図およびタウ蛋白質脳地図には、いずれも相関は認められなかった(Aβ:Spearman's ρ=0.079、Pspin=0.3128。タウ蛋白質:Spearman's ρ= 0.170、Pspin=0.1595)。

 Morys氏らは「肥満に関連した大脳皮質の萎縮は、Aβ-タウカスケードの進展やAD発症に先行する可能性がある」と推察している。

 これらの結果を踏まえ、同氏らは「肥満関連の灰白質萎縮パターンはADと類似していることが確認された」と結論。さらに「今回の知見から、肥満や過体重の中年者において、減量や代謝性危険因子を標的とした介入の重要性が示された」と付言している。

(小路浩史)

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