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ホルモン補充療法はapoE4保有女性の認知機能改善

開始年齢が早いほど海馬容積も維持される

2023年01月27日 05:10

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 英・University of East AngliaのRasha N.M. Saleh氏らは、欧州アルツハイマー型認知症予防(EPAD)コホートに登録された女性のデータを解析。「ホルモン補充療法(HRT)とアポリポ蛋白(apo)Eの対立遺伝子ε4(apoE4)を保有する女性の認知機能改善に関連を認めた。また、HRT開始年齢が若い方が海馬容積は維持されていた」とAlzheimers Res Ther2023;15:10)に発表した。

登録時50歳以上の女性1,178例を解析

 アルツハイマー病(AD)患者の3分の2以上は女性だが、その理由の1つとして閉経期におけるエストロゲン量の減少が考えられる。HRTは以前から女性の認知機能低下に対する戦略として検討され、初期の観察研究では経口エストロゲンによる認知症予防効果を示したものもあるが、臨床試験の結果は一貫していない。

 一方、apoE遺伝子型が認知機能低下およびADリスクの重要な決定因子であることは間違いなく、高リスクのapoE4保有者が女性に多いという知見や、HRT開始年齢が認知機能改善効果に関係するとの報告もある。

 EPADは認知症の臨床診断に至るまでのADの経過を理解する縦断モデルの構築を目的に、2015年に開始されたプロジェクトで、AD二次予防(早期発見/早期治療)のための概念実証試験(PoC)の設計に資することが期待されている。
 
 欧州10カ国で認知症と診断されていない50歳以上の男女を登録した。今回の検討では、2020年10月にリリースされたデータセットを用い、全コホート1,906例のうち女性1,178例を対象とした。

apoE4+HRTでRBANSの遅延記憶スコアが有意に改善

 Saleh氏らはまず、年齢、被教育期間、利き手、配偶者の有無を調べ、臨床的認知症尺度(CDR)スコア1(軽度認知症)以上の者を除外。対象1,074例(平均年齢65.1歳、HRT実施83例)をapoE遺伝子型で、non-apoE4群(E2/E2、E2/E3、E3/E3)675例とapoE4群(E3/E4、E4/E4)399例に分類。E2/E4については、apoE2がADのリスク低減に関与することから除外した。

 HRTは現在実施中/過去に使用の両方を対象とし、HRTの種類(エストロゲン単独/プロゲステロン併用)や薬剤の投与経路(経口/経皮)、用量を問わず対象とした。HRTの開始年齢は、参加者の年齢からHRT実施期間を差し引いて求めた。

 解析の結果、年齢、利き手、配偶者の有無、CDRスコア、HRT実施例、HRT実施期間にはnon-apoE4群とapoE4群で差はなかった。教育期間はapoE4群で有意に短かった(14.4年 vs. 13.8年、P=0.014)。

 認知機能については、Mini-Mental State Examintion(MMSE)、Dot Counting Test (DCT)、Repeated Battery for the Assessment of Neurosychoogical Status (RBANS)などで評価した。その結果、RBANSトータルスコアにおいてapoE遺伝子型 X HRTの交互作用が認められ(交互作用のP=0.097)、RBANSの遅延記憶に関しては有意な交互作用が認められた(交互作用のP=0.009)。遅延記憶スコアは、他の3群(apoE4 + 非HRT群、non-apoE4 + HRT群、non-apoE4 + 非HRT群)よりもapoE4 +HRT群で一貫して高かった。

  non-apoE4群、apoE4群の群内における比較では、HRT実施とHRT非実施に有意差が見られたのはapoE4群のみで、HRT非実施者に比べHRT実施者は、RBANSトータルスコア(P=0.045)、遅延記憶スコア(P=0.002)のいずれも有意に高かった。

HRT実施で嗅内野、偏桃体容積大きい

 Saleh氏らはさらに、内側側頭葉の特定領域の容積変化に関するMRI所見を検討した。その結果、左嗅内野と左右の偏桃体容積は、non-apoE4+HRT非実施者に比べてapoE4+HRT実施者で大きかった(左嗅内野:交互作用のP=0.002、左偏桃体:交互作用のP=0.003、右偏桃体:交互作用のP=0.005)。

 apoE遺伝子型群内での比較では、やはりはapoE4群でのみ左右嗅内野と左偏桃体容積が、HRT非実施者よりもHRT実施者で大きかった。non-apoE4群では、偏桃体容積はHRT非実施者よりもHRT実施者で小さかった。

 最後に同氏らは、HRTの早期開始が海馬容積に及ぼす影響について検討した。その結果、apoE4群ではHRT開始年齢と海馬容積に負の関連が認められた。すなわち、HRT開始年齢が若いほど左右の海馬容積が大きかった(左海馬:標準化偏回帰係数 β = -0.577、P=0.028、 右海馬:同-0.555、P=0.035)。この関連はnon-apoE4群では見られなかった。

木本 治

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