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「ダビンチSP」登場:切開創1カ所で手術可能

2023年02月07日 16:58

230名の医師が参考になったと回答 

 インテュイティブサージカル合同会社は1月31日、内視鏡手術支援ロボットda Vinci(ダビンチ)の最新モデル「SPサージカルシステム」の販売を開始した。ダビンチSPはアームを1本に減らしたシングルポート型(単孔式)で切開創が最小1カ所で済むという低侵襲性を実現したのが特徴。同日に東京都で開催された製品発表会では、下部消化管外科領域のロボット支援下手術のエキスパートで札幌医科大学消化器・総合、乳腺・内分泌外科学講座教授の竹政伊知朗氏が登壇。同氏は単孔式内視鏡手術は患者の満足度が極めて高いとして、「大腸がん手術のように広い操作領域を要する場合、ダビンチSPを用いるメリットは大きい」と述べた。今後の経肛門的直腸間膜切除術への応用にも期待を示した。

体への負担軽減、整容性も向上

 ダビンチSPは、日本国内で570台以上(2023年1月時点)導入されているダビンチサージカルシステムの最新機種。同システムは腹腔鏡手術を支援する内視鏡下手術支援ロボットで、腹部に開けた小さな穴に手術器具を取り付けたロボットアームを挿入し、医師がサージョンコンソールと呼ばれる操作ボックスの中で内視鏡画像を見ながら手術を行う。複数のロボットアームには鉗子や内視鏡カメラが取り付けられており、内視鏡カメラで撮影された三次元(3D)映像を見ながら、両手や足でコントローラーを操作する。

 既存のダビンチが複数のアームを用いて手術を行うマルチポート型(多孔式)であるのに対し、ダビンチSPはアームが1本のシングルポート型であるのが特徴。アームには直径2.5cmのカニューラと呼ばれる筒の中に、内視鏡と3本の鉗子が備えられており、体腔内に挿入して手術を行う。

 同社は従来、日本国内でダビンチXiを初めとする多孔式システムを販売してきた。多孔式では複数必要な体表の切開創がダビンチSPでは最小1つに減らせることで、内視鏡下手術に伴う患者の体への負担軽減、整容性向上が期待できる。また小切開で体腔内の深く狭い術野、組織へのアクセスが可能となった。

手術時間短縮や成績向上も期待

 竹政氏は、これまで臍部を切開して腹腔鏡を挿入し患部を切除する単孔式腹腔鏡下手術を多数手がけてきた。単孔式腹腔鏡下手術は2009年に日本で導入された術式で、2~3cmの創部から複数の鉗子を挿入するため操作上の制約が大きく、開腹手術に比べて技術の指導や習得が開腹手術に比べて難しいなどの問題があり、限られた術者により限定的に行われてきた。難易度が高い半面、術後の消化管運動の開始が早く、術後の癒着は少ない、早期の退院や社会復帰が可能であるなどさまざまな利点がある。

 同氏は「単孔式腹腔鏡下手術は患者の治療満足度が極めて高い。これをロボット手術で行うことを可能にしたダビンチSPは、安定した視野で高い操作性を実現でき、大腸がん手術のような広い操作領域を必要とする場合のメリットは大きい」と述べた。手術時間の短縮など、成績の向上につながることが期待されるという。

 消化器がんの中でも、直腸がん手術は術者の経験や習熟度が問われる領域で、執刀医の経験や技量によって治療成績に差が出るといわれる。同氏は「施設によって術後の再発率に5倍以上開きがあるとのデータもあり、術者の技量が問われる」と指摘。日本ではがん患者が増えている一方で、「外科医の数が減り続け、特に外科医を志望する若手医師が減少するなど術者が不足している状況。こうした中、若手の医師にこそロボット手術に積極的に挑んでほしい。そのためには医師への教育が必要」と同氏は訴えた。

遠隔手術や手術指導も可能に、医療格差是正に期待

 竹政氏は、今後ダビンチSPの価格が下がれば、地方の医療機関での導入が増え、遠隔手術や手術指導が可能になり、医療格差の是正や患者の治療選択肢の拡大にもつながると指摘。

 今後の展望として、近年注目されている肛門から内視鏡と鉗子を挿入して行う経肛門的直腸間膜切除術(Transanal total mesorectal exision;TaTME)の実現にも期待を寄せた。TaTMEは画期的な治療である半面、技術面での難易度が極めて高いとされる。同氏は「技術面での壁を乗り越えれば、優れた治療成績が得られることが示されつつある。ただし、私は単孔式腹腔鏡下手術の経験を積んできたのでTaTMEへの親和性が比較的高かったが、単孔式腹腔鏡下手術の経験がない医師には難しいといわれる。まだ実験段階ではあるが、われわれは献体を用いてダビンチSPを肛門から挿入し、直腸がん手術を実施している。現段階ではヒトに導入するところまで到達していないが、早ければ数年以内に実用化できる可能性もある」と述べた。

 ダビンチSPは2022年9月に製造販売承認を取得。一般消化器外科、胸部外科(心臓外科ならびに肋間からのアプローチ手術を除く)、泌尿器科、婦人科、頭頸部外科(経口的に行う手術に限る)領域の手術に保険適用となった。

(小沼紀子)

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