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眼底写真でパーキンソン病を評価

ディープラーニングを使った分析アルゴリズム構築

2023年02月14日 17:50

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 韓国・Sungkyunkwan UniversityのSangil Ahn氏らは、ディープラーニング(深層学習)で網膜の眼底所見を処理し、パーキンソン病(PD)患者の神経学的機能を評価する意思決定分析モデルを構築したとJAMA Ophthalmology2023年2月9日オンライ版)に報告。ディープラーニングを活用した分析モデルは、PD患者の神経学的機能の評価法として期待でき、網膜と脳の関係に関する最近の知見を解明する手がかりにもなりうる、と述べている。

ニューラルネットワークで画像のパターン認識が可能

 PDの診断は臨床症状とMRI/MRAなどを用いた画像診断に基づいて下されるが、後者は患者の医療費負担が大きいことから、より簡便な機能評価指標の開発が求められている。

 網膜は血管を非侵襲的に評価できる唯一の臓器であり、最近、眼底写真データに基づく心血管疾患リスクの評価を試みた研究が複数報告されている。網膜と脳は胚起源が共通していることから、PDを含む神経変性疾患の発症に重要な役割を果たす生物学的特徴を多数共有している。

 近年、ディープラーニングのアルゴリズムは複数の医療分野で活用されており、従来の分析方法の枠を超える新しい知見を臨床にもたらす可能性もある。

  ディープラーニングとは多層人工ニューラルネットワーク(ANN)で構成される機械学習技術の1つであり、中でも、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)は畳み込みフィルター(convolutional filter)を通して入力値(input value)である画像から特徴を抽出し、同様なパターンの認識、分類に特に優れている。

H-YスケールとUPDRSスコアに対する感度・特異度を検討

 Ahn氏らは、2020年10月7日~21年4月30日に韓国・Kangbuk Samsung病院神経内科を受診したPD患者と非定型の運動異常を有する非PD患者の眼底写真を解析。Hoehn-Yahrの重症度分類(H-Yスケール)およびPD統一評価スケール(UPDRS)-Ⅲのスコアを予測するCNNを構築した。

 主要評価項目は、受信者動作特性(ROC)解析の曲線下面積(AUC)を求め、内部検証用データセットおよび外部検証用データセットを用いて、H-YスケールとUPDRS-Ⅲスコアに対する感度と特異度を明らかにすること。

 対象は615例で、内訳はPD患者が266例(43.3%、平均年齢70.8歳、男性134例)、非定型運動異常を有する非PD患者が349例(56.7%、同70.7歳、113例)だった。

 H-Yスケールに基づき、対照群(H-Yスケール0)、早期ステージ PD群(同1)、中等度または進行ステージPD群(同2以上)の3群に分け、さらに、UPDRS-Ⅲスコアに基づいて、対照群(UPDRS-Ⅲスコア0)、同 1~14群、同15以上群に分類した。

 PD患者群から539枚、非PD群から700枚の眼底写真データを入手し、ランダムに80例のデータを検証データセットとして確保。残りを訓練データセットに用いた。

臨床データ併用のマルチモーダルモデルが最良

 CNNには主要な画像分類アーキテクチャが複数存在するが、Ahn氏らはそれらのうちResNet-18を採用。眼底写真データのみを使用するモデルに加え(Model 1)、さまざまな臨床データを加えた3つのモデルを考案したが、眼底写真データ+性、年齢、糖尿病、高血圧のデータを学習させたマルチモーダルモデル(Model 4)で最も良好な結果が得られた。

 H-Yスケールに対する感度は83.23%(95%CI 82.07~84.38%)、特異度は66.81%(同64.97~68.65%)、AUCは0.77(同0.75~0.79)、正確度は73.8%(同71.55~75.21%)だった。 

 UPDRS-Ⅲスコアに対する感度は82.61%(95%CI 81.38~83.83%)、特異度は65.75%(同62.56~68.94%)、AUCは0.77(同0.75~0.79)、正確度は71.64%(同70.19~73.09%)であった。

 今回のアルゴリズムについて、Ahn氏らは「①横断的方法から構築したモデルなので、PDの症状や神経学的機能不全の進行を予測することはできない、②PD患者のデータに基づくものであり、アルツハイマー病など他の神経変性疾患には適用できない」と限界を認める一方、「比較的少ないデータでも、ディープラーニングの活用により神経変性疾患の評価において有望な結果が得られる可能性を示すことができた」と結んでいる。

木本

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