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透析患者の痛風併発、転帰に影響せず

北米・7万5,000例超を解析

2023年02月15日 05:00

354名の医師が参考になったと回答 

イメージ画像 © Adobe Stock ※画像はイメージです

 慢性腎臓病(CKD)患者では痛風の併発率が高いが、透析を受ける末期腎不全(EKSD)患者において痛風が臨床転帰に及ぼす影響は不明だった。ブラジル・Pontificia Universidade Catolica do ParanaのMurilo Guedes氏らは、国際前向き登録研究に参加した北米の透析患者7万5,000例超のデータを基に、痛風の有病率と転帰を検討。有病率は高いものの、臨床転帰または患者報告転帰の不良との関連は弱かったことなどをKidney3602023; 4: 54-62)に報告した。

有病率は13~21%、既往患者への尿酸降下薬処方は不十分

 透析は尿酸排泄を促進するため、原理的には痛風の悪影響を緩和すると考えられるが、米国の透析患者を対象とした観察研究では、痛風の新規発症と全死亡のリスク上昇に関連が示されている。しかし、痛風は発作を繰り返し慢性化しやすい疾患であり、痛風の発作歴や診断歴のみを見るのではなく、尿酸降下治療中の患者も含めた有病率と臨床転帰との関連を検討する必要がある。

 Guedes氏らは、血液透析(HD)患者の国際前向き登録研究であるDOPPSから2012~20年における北米のHD患者7万297例のデータを、腹膜透析(PD)患者の国際前向き登録研究であるPDOPPSから2014~20年における北米のPD患者5,117例のデータをそれぞれ抽出。まず、透析患者における痛風の有病率を検討した。痛風の有病率は、診断歴ありの患者と尿酸降下薬3剤(コルヒチン、フェブキソスタット、アロプリノール)のいずれかを処方中の患者の合計で算出した。

 その結果、痛風の有病率はHD群で13%、PD群で21%だった。内訳は、それぞれ診断歴ありが2%と5%、コルヒチン処方が2%と3%、フェブキソスタット処方がともに1%、アロプリノール処方が9%と12%だった。

 両群とも、透析期間が長いほど痛風有病率は低かった。また、非痛風患者と比べ、痛風患者では高齢、男性、高BMI、心血管疾患の併存あり―の傾向が認められた。

 透析未導入のCKD患者を対象とした複数の研究における痛風有病率は16~36%と、今回の結果と同程度であり、透析により有病率が大きく低下するわけではないことが示された。

 また、痛風診断歴ありで尿酸降下薬を処方中の患者は、HD群が42%、PD群が48%だった。同氏らは「透析は尿酸値や痛風発作の発症率を下げると考えられているが、HD患者における痛風発作の5年発症率は15%との報告があり、今回の結果は処方が不十分である可能性を示唆している」と指摘している。

全死亡、入院、患者報告転帰との関連は弱い

 次にGuedes氏らは、痛風を有するHD患者9,409例、PD患者1,060例と、傾向スコアを用いて背景をマッチングさせた非痛風患者を1:1で選出。痛風と全死亡、入院、患者報告転帰との関連を検討した。

 共変量を全て調整後に解析したところ、非痛風患者に対する痛風患者の全死亡リスクはHD群〔ハザード比(HR)0.94、95%CI 0.87~1.02〕、PD群(同0.95、0.71~1.28)ともに有意差が認められなかった。全入院リスクも同様に、HD群(同1.01、0.96~1.06)、PD群(同1.06、0.91~1.23)とも有意差がなかった。

 また、複数の評価尺度を用いて痛風と患者報告の身体的QOLおよび精神的QOL転帰との関連を検討したが、いずれも関連は弱かった。

 一方、炎症の代替マーカーでESKD患者における予後不良と関連付けられているエリスロポエチン抵抗性指数は、傾向スコアマッチング後の非痛風患者に比べ痛風患者で平均3~6%高く、痛風による炎症が透析患者の貧血を悪化させている可能性が示唆された。

 Guedes氏は「北米の透析患者において、痛風の有病率は高いが十分な尿酸降下薬が処方されていない可能性が示された。一方、痛風の併発は、臨床転帰および患者報告転帰とは関連していなかった」と結論している。

(小路浩史)

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