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女性の脂質異常症、肥満に伴うリスクは軽微

減量だけの対策では不十分

2023年02月16日 15:03

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 神戸大学大学院健康創造推進学分野特命教授の田守義和氏らは、65歳の神戸市民約1万1,000人を対象に、肥満の併存疾患(糖尿病、高血圧、脂質異常症)の肥満度別有病率、普通体重に対する肥満度別疾患リスクを検討。肥満の進行に伴い各疾患の有病率および各疾患リスクは有意に上昇するが、女性では脂質異常症のリスク上昇幅は軽微で、脂質異常症対策は減量だけでは不十分であることが明らかになったと、Sci Rep2023; 13: 2346)に発表した。

脂質異常症の有病率は標準体重群でも60%超と高い

 肥満者では、さまざまな併存疾患により健康寿命が短縮し、QOLも低下する。肥満の代表的な併存疾患である糖尿病や高血圧、脂質異常症は、動脈硬化を進展させて脳卒中や心疾患などの生命を脅かす病態を引き起こす。しかし、肥満度別に併存疾患の有病率や発症リスクとの関連を詳しく検討した研究はほとんどない。

 そこで田守氏らは、2017年4月~21年3月に神戸市が実施する健康診断を受診した65歳の市民1万852人を対象に、糖尿病、高血圧、脂質異常症の肥満度別有病率、標準体重群に対する肥満度別疾患リスクを評価した。

 BMIが18.5未満を低体重、18.5以上25未満を標準体重、25以上を肥満と定義し、肥満をBMIが25以上30未満の肥満度Ⅰ、30~35未満の肥満度Ⅱ、35以上の肥満度Ⅲに分類した。

 検討の結果、全体の有病率は糖尿病が9.7%、高血圧が41.0%、脂質異常症が63.8%だった。肥満度別に見ると、いずれの疾患とも低体重群が最も低く、肥満の進行に伴い有意に上昇した(全て傾向のP<0.05)。ただし、脂質異常症は標準体重群でも有病率が高く、肥満の進行に伴う上昇幅は緩やかだった(標準体重群:62.8%、肥満度Ⅰ群:75.6%、肥満度Ⅱ群:78.5%、肥満度Ⅲ群:80.0%、)。この傾向は女性でより顕著だった(それぞれ66.2%、78.3%、76.4%、75.0%)。

図.肥満度別に見た糖尿病、高血圧、脂質異常症の有病率

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(神戸大学リリース)

女性では脂質異常症リスクのピークは肥満度Ⅰ群

 肥満度別に疾患リスクを検討したところ、肥満が糖尿病リスクの上昇と有意に関連していた〔肥満度Ⅰ群:オッズ比(OR)2.56、95%CI 2.21~2.96、肥満度Ⅱ群:同5.32、4.00~7.08、肥満度Ⅲ群:同12.95、6.80~24.66、全てP<0.001〕。高血圧リスクとの間にも同様の関連が認められた(それぞれ同2.77、2.49~3.08、9.59、6.81~13.51、19.44、5.96~63.39、全てP<0.001)。脂質異常症リスクとも有意に関連したが上昇幅は軽微だった(同2.37、 2.11~2.66、3.13、2.41~4.06、3.65、1.93~6.91、全てP<0.001)。

 男女別に解析したところ、女性では脂質異常症のリスク上昇幅はより軽微で、ピークは肥満度Ⅰ群だった(肥満度Ⅰ群:OR 1.84、95%CI 1.56~2.17、P<0.001、肥満度Ⅱ群:同1.65、1.14~2.39、P=0.031、肥満度Ⅲ群:1.49、0.54~4.11、P=0.441)。

 以上を踏まえ、田守氏は「肥満の代表的な併存疾患は減量によって改善が見込める。しかし、これまで肥満度別の詳しい検討がなかったため、どの併存疾患についても『減量が重要』といった画一的な指導に終始していた。しかし今回の知見から、女性では肥満が糖尿病や高血圧には強く影響する一方で、脂質異常症への影響は弱いことが明らかになった。したがって、脂質異常症の対策において減量だけでは不十分であり、食事や運動など生活習慣の改善を見据えた指導や診療が必要である」とコメントしている。

(比企野綾子)

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