2型糖尿病への自動インスリン投与の有用性は?
2023年02月16日 18:10
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日本でも既に複数が実用化されている、自動インスリン投与(AID)システム。米・Emory UniversityのGeorgia M. Davis氏らは、2型糖尿病患者における同システムの安全性および有効性を検証し、結果をDiabetes Care(2023年2月14日オンライン版)に報告した。
HbA1c 8%以上の2型糖尿病患者24例を対象
糖尿病治療においてインスリン注射を必要とする患者は多く存在するが、新デバイスの対象は1型糖尿病患者が中心である、とDavis氏ら。そうした中で登場したAIDは、グルコースモニター(CGM)機器でリアルタイムに測定された血糖値に合わせたインスリン量が自動投与されるシステム。食事や高血糖時の補正(追加投与)が不要な完全Closed Loop型AIDシステム「Omnipod 5」(米国では2022年に承認)は、2型糖尿病患者での安全性および有効性が十分に検討されていないとして検証した。
対象は、インスリン(基礎および基礎・追加)治療中で、HbA1cが8〜12%の18〜75歳の2型糖尿病患者24例。CGM使用の有無は問わず、過去6カ月以内における重度の低血糖または糖尿病ケトアシドーシスの既往例は除外した。主な患者背景は、平均年齢60.6歳、糖尿病の平均罹病期間19年、平均BMI 33.5、女性50%、平均HbA1c 9.4%、平均インスリン投与量61.5単位/日、短時間作用型インスリン追加投与の平均回数1.6回/日だった。
24例をインスリン療法のパターン別に基礎・追加群12例と基礎群12例に分け、2週間の標準治療でCGMによる血糖値を測定(非使用例には盲検化)した上で、8週間のOmnipod 5を使用し、安全性および有効性を検討した。なお、経口糖尿病治療薬の継続使用については、主治医の判断に委ねた。
高血糖時間が減少、低血糖時間は増加せず
安全性の評価は、AID使用期間におけるCGM低値が250mg/dL(高血糖レベル2)以上および54mg/dL(低血糖レベル2)に達した時間の割合とした。
検討の結果、血糖値250mg/dL以上に達した時間の割合は、全体が10.5%、基礎・追加群が9.3%、基礎群が11.7%で、標準治療期間(ベースライン)との変化量は順に−16.9%、−12.2%、−21.6%と、いずれも有意な減少が示された(順にP<0.0001、P=0.0089、P=0.0015)。
一方、54mg/dL(低血糖レベル2)に達した時間の割合は基礎・追加群でのみ0.03%で、全体および基礎群では0.00%で、標準治療期間と差は見られなかった。
いずれのインスリン投与パターンでも、TIRが有意に増加
有効性の評価は、AID使用期間後におけるHbA1cのベースラインと比較した変化量とした。その結果、HbA1cの変化量は全体が−1.3%、基礎・追加群が−1.2%、基礎群が−1.4%と、いずれも有意な減少が確認された(順にP<0.0001、P=0.0001、P<0.0001)。また、血糖値が70〜180mg/dLの治療域(target in range;TIR)の範囲内にあった時間の割合の変化量は、それぞれ21/9%、17.8%、26.1%と、いずれも有意な増加が認められた(順にP<0.0001、P=0.0019、P<0.0001)。
以上から、Davis氏らは「外来治療中の2型糖尿病患者において、基礎・追加および基礎のインスリン投与パターンを問わず、Omnipod 5を用いたAIDシステムの安全性および優れた改善効果が示唆された」と結論。現在のインスリン療法で満足な結果が得られていない2型糖尿病患者を対象とした、さらなる検証の必要性を指摘している。
(松浦庸夫)