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アジスロマイシンで経腟分娩の敗血症を予防

死産や児の敗血症予防効果はなし

2023年02月20日 16:25

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 米・University of Alabama at BirminghamのAlan T.N. Tita氏らは、経腟分娩における予防的抗菌薬としてアジスロマイシン経口投与の有効性と安全性を検討した大規模プラセボ対照比較試験の結果をN Engl J Med2023年2月12日オンライン版)に報告。母体の敗血症予防に対する有効性が示されたことから、安全性監視委員会は中間解析の段階で試験の早期中止を勧告した。

アフリカ・アジア・ラテンアメリカの8カ所で実施

 予防的抗菌薬としてのアジスロマイシンの静注投与が、予定帝王切開における母体感染リスクを低減することは知られているが、経腟分娩でも同様の効果が得られるかどうかは不明である。

 今回Tita氏らが報告したのは、大規模国際共同プラセボ対照ランダム化比較試験A-PLUS(Azithromycin Prevention in Labor Use Study)の中間解析結果。米国のGlobal Network for Women's and Children's Health Researchに参加している低~中所得国(サハラ以南アフリカ、アジア、ラテンアメリカ)の8施設で2020年9月~22年8月実施した。

 経腟分娩を予定している2万9,278例を、アジスロマイシン群2gを単回経口投与する群(1万4,590例)とプラセボ群(1万4,688例)にランダムに割り付けた。

 ベースラインでの患者背景に両群で差はなく、アジアからの登録が55%を占めた。18.4%が誘発分娩で、8.6%は感染リスクの高い患者だった。

 複合主要評価項目として、母体における出産後6週間以内の敗血症/死亡、児における死産/新生児死亡または出生4週間以内の死亡/敗血症の2つを設定。副次評価項目は、感染症(絨毛膜羊膜炎、子宮内膜炎、創傷感染、骨盤膿瘍、乳腺炎、肺炎、腎盂腎炎など)、抗菌薬使用状況、入院期間、再入院、特別ケア病棟への入院、緊急受診など。安全性については、薬の副作用(悪心、嘔吐、下痢)、アレルギー(アナフィラキシー、肝不全、不整脈、児の幽門狭窄)などとした。

母体の敗血症リスク低下が複合主要評価項目の改善に寄与

 検討の結果、母体の6週間以内の敗血症または死亡は、プラセボ群の344例(2.4%)に対しアジスロマイシン群では227例(1.6%)有意に少なかった〔相対リスク(RR) 0.67、95%CI 0.56~0.79、P<0.001〕。

 児の死産または出生4週間以内の死亡あるいは敗血症は、プラセボ群で出生児1万4,756例中1,526例(10.3%)、アジスロマイシン群で同1万4,648例中1,540例(10.5%)と有意差は見られなかった(RR 1.02、95%CI 0.95~1.09、P=0.56)。

 母体における複合主要評価項目を個々に検討すると、敗血症についてはプラセボ群339例、アジスロマイシン群 219例(2.3% vs. 1.5%、RR 0.65、95%CI 0.55~0.77)と有意差が見られたものの、全死亡は、9例、11例(0.1% vs. 0.1%、同1.23、0.51~2.97)と差はなく、敗血症発症率の差が複合評価項目に影響を及ぼしていた(敗血症による死亡は1例と4例で死亡率はいずれも<0.1%)。

 アジスロマイシン投与による有害事象発生率の上昇は見られなかった。

ルーチン投与には懸念すべき材料も

 以上を踏まえ、Tita氏らは「母体の死亡率は両群とも低かったが、敗血症の発症率はアジスロマイシン群で有意に抑制された。これは帝王切開を受けた女性に対するアジスロマイシン静注の予防的投与の有効性を示した過去の報告と一致するものである」と結論。

 その上で、経腟分娩における経口アジスロマイシンのルーチン投与には、抗菌薬耐性菌の増加、母体や新生児の細菌叢に及ぼす影響などが懸念される、と付言している。

木本 治

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