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抹茶で強いうつ様症状が改善

症状が弱ければ作用発揮されず

2023年02月21日 16:15

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イメージ画像 © Adobe Stock ※画像はイメージです

 近年、日本の伝統的な飲み物である抹茶は、健康補助食品やスナック菓子などの香料として世界的に親しまれている。抹茶には、さまざまな有益作用が期待されているが、飲用する前後の精神状態の違いや効果の個人差に着目した研究は行われていない。熊本大学大学院生命科学研究部准教授の倉内祐樹氏らは、社会集団から隔離した状態で飼育したマウスに抹茶を投与する実験を実施。抹茶は、うつ様行動(うつ様症状)が強いマウスでのみ抗うつ作用を発揮すること、脳内ドパミン神経回路の活性化を亢進して抗うつ作用を発揮することを明らかにしたとNutrients2023; 15: 581)に発表した。

抗うつ薬の代替として天然物を探索

 うつ病の標準治療は、休養、精神療法、薬物療法である。しかし、抗うつ薬には副作用のリスクがあり、最近では治療抵抗性うつ(TRD)が社会問題となっている。こうした背景の下、薬剤よりも安全な代替品を探索すべく、さまざまな天然物や植物抽出物の潜在的な抗うつ特性についての研究が行われている。日本ではお茶が医薬品として扱われてきた歴史があり、抹茶にはリラックス効果が期待できるとされるものの科学的根拠は十分でない。

 倉内氏らはこれまで、抹茶には不安軽減作用があることを報告している(J Funct Foods 2019; 59: 301-308)。今回は、「抹茶の作用には、摂取時のストレス状態やストレス感受性の個人差が影響する」との仮説を立て、ストレス状態が異なる2種類のマウスを用いた実験で検証した。

尾懸垂試験の無動時間が有意に短縮

 まず、ストレスに対する感受性が異なるC57BL/6J系統マウスとBALB/c系統マウスを社会集団から隔離して1匹のみで飼育し、ストレスを負荷した。その結果、うつ様症状はC57BL/6J系統マウスで強く現れたのに対し、BALB/c系統マウスでは極めて弱かった。

 次に、抹茶粉末を滅菌水に懸濁し、10、30、100mg/kgを経口投与した後、尾懸垂試験によるうつ様症状を評価した。

 その結果、対照とした生理食塩水投与時に比べ、抹茶100mg/kg投与時にはC57BL/6J系統マウスでは尾懸垂試験の無動時間が有意に短縮し、うつ様症状が改善した(P=0.0004、図1-A)。一方、BALB/c系統マウスでは有意な行動変化は見られなかった(P=0.4933、図1-B)。

図1. ストレス状態が異なるマウスのうつ様症状に対する抹茶の効果

fig_001de.png

 続いて、抹茶100mg/kg投与前にドパミンD1受容体遮断薬を腹腔内投与し、同様の実験を行ったところ、C57BL/6J系統マウスにおける無動時間の短縮は認められなかった。これらのことから、抹茶はうつ様症状が強いC57BL/6J系統マウスに対してのみ抗うつ作用を発揮すること、ドパミンD1受容体の活性化を介した機序が存在することが明らかになった。

投与により前頭前野などの神経活動レベルが亢進

 さらに、両マウスのうつ様症状と脳内ドパミン神経回路の活性化状態の関係性を明らかにする目的で、行動薬理学的解析と脳内の神経活動の指標である転写因子c-Fosを発現する神経細胞を検出した。

 その結果、C57BL/6J系統マウスでは、前頭前野-側坐核-腹側被蓋野を中心とした脳内ドパミン神経回路の活性が著明に低下していたが、抹茶投与により前頭前野(図2-A)、腹側被蓋野(図2-C)、側坐核(図2-E、G)の神経活動レベルが亢進した。それに対し、BALB/c系統マウスでは、もともと脳内ドパミン神経回路の活性が極めて高く、抹茶投与による変化はなかった(図2-B、D、F、H)。

図2. うつ様症状と脳内ドパミン神経回路の活性化状態との相関関係

fig_002de765.png

(図1、2とも、熊本大学プレスリリースより)

 以上を踏まえ、倉内氏らは「強いうつ様症状が現れるC57BL/6J系統マウスに対する抹茶投与は、脳内ドパミン神経回路の活性亢進を介して抗うつ作用を発揮することが示唆された」と結論。「うつ病発症の予防には、日常的なストレスに適切に対処するセルフケアの実践、心身の健康維持が重要だ。今回の知見が、日常生活における精神状態の違いやストレスに対する感受性の個人差を考慮し、抹茶を活用した健康増進プログラムの開発・実践につながることが期待される」と展望している。

(小野寺尊允)

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