メニューを開く 検索

トップ »  医療ニュース »  2023年 »  がん »  術後乳房照射なしでも生存率変わらず

術後乳房照射なしでも生存率変わらず

ホルモン受容体陽性低リスク乳がん対象のPRIMEⅡ試験

2023年02月24日 05:05

336名の医師が参考になったと回答 

イメージ画像

 英・University of EdinburghのIan H. Kunkler氏らは、乳房温存術とホルモン療法を受けた高齢の早期乳がん女性に対する術後乳房照射の意義を検討した第Ⅲ相ランダム化比較試験PRIMEⅡの結果をN Engl J Med2023:388:585-594)に発表。術後乳房照射なし群では局所再発が有意に増えたものの、遠隔転移や全生存(OS)には照射の有無で差がなかったと報告した。

照射の有無による局所再発率と全生存率を検討

 PRIMEⅡ試験は、英国、ギリシャ、オーストラリア、セルビアの76施設で行われた。対象は65歳以上のホルモン受容体陽性〔エストロゲン受容体(ER)あるいは/およびプロゲステロン受容体陽性〕、腋窩リンパ節陰性、腫瘍径3cm以下の原発乳がん患者。腫瘍グレードは1と2で95%以上を占めた。

 clear marginを達成した乳房温存術+術後または術前ホルモン療法を受けた1,326例を術後乳房照射なし群(668例)と術後乳房照射(40~50Gy)群(658例)にランダムに割り付けた(割り付け期間は2003年4月16日~09年12月22日)。

 主要評価項目は局所再発(local recurrence)。副次評価項目は、領域再発(regional recurrence)、対側乳がん、遠隔転移、乳がん特異的生存(BCSS)、OSとした。局所再発は放射状瘢痕(radial scar)内または同側乳房内のがん病変、領域再発は同側の腋窩リンパ節または鎖骨上リンパ節内の病変と定義した。

10年OSは照射なし群80.8%、照射群80.7%

 平均10年(中央値9.1年)の追跡期間中、累積局所再発率は術後乳房照射なし群の9.5%(95%CI 6.8~12.3%)に対し、術後乳房照射群では0.9%(同0.1~1.7%)と有意に低かった〔ハザード比(HR)10.4、同4.1~26.1、P<0.001〕。

 一方、遠隔転移に関しては術後乳房照射なし群の1.6%(95%CI 0.4~2.8%)に対し、術後乳房照射群では3.0%(同1.4~4.5%)と有意差はなかった。

 10年OSは術後乳房照射なし群が80.8%(95%CI 77.2~84.3%)、術後乳房照射群で80.7%(同76.9~84.3%)とほぼ同等だった。領域再発とBCSSに関しても両群で大きな違いはなかった。

 ER発現状況別のサブ解析では、いずれのサブグループにおいてもER高発現がんの方が累積局所再発率は低かった。ER高発現がんの10年局所再発率は術後乳房照射なし群の8.6%(95%CI 5.7~11.4%)に対し、術後乳房照射群では1.0%(同0.1~1.9%)と低かった(HR8.23、95%CI 3.24~20.85)。

当該患者への術後乳房照射省略は妥当

 Kunkler氏らは、乳房温存術と術後乳房照射の併用で10年局所再発率が低下するという今回の結果は、同様の患者を対象としたCALGB9343試験の結果と一致すると指摘(J Clin Oncol 2013;31;2382-2387)。一方、術後乳房照射なし群の9.5%という10年局所再発率は、欧州乳がん専門医学会(EUSOMA)のガイドラインで言及されている10%という10年再発率の範囲内にあるとも述べている。

 同ガイドラインは、補助ホルモン療法を受けている70歳以上の低リスク乳がん患者には術後乳房照射を施行しないことを推奨している。PRIMEⅡの結果も術後乳房照射の省略は局所再発こそ増やすものの、遠隔転移やOSには悪影響を及ぼさないことを支持するものである。

 同氏らはまた、「術後乳房照射を併用せずにその後局所再発した場合でも、乳房温存術の再施行や術後乳房照射の選択肢は残されていることから、再発が必ずしも乳房喪失を意味するわけではない」とも指摘。「PRIMEⅡ は、65歳以上のホルモン受容体陽性低リスク乳がん患者であれば、乳房温存術とホルモン補助療法を行い、術後乳房照射を省略しても安全性が損なわれないことを示す堅固(robust)なエビデンスを提供した」と結んでいる。

木本 治

無料でいますぐ会員登録を行う

【医師限定】

初回登録で500円分のポイントをもれなく進呈!

(4月末迄/過去ご登録のある方を除く)

  • ・ ご利用無料、14.5万人の医師が利用
  • ・ 医学・医療の最新ニュースを毎日お届け
  • ・ ギフト券に交換可能なポイントプログラム
  • ・ 独自の特集・連載、学会レポートなど充実のコンテンツ

ワンクリックアンケート

円安水準を更新。円安で何を思う?

トップ »  医療ニュース »  2023年 »  がん »  術後乳房照射なしでも生存率変わらず