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直腸がん術前治療の効果予測指標を発見

2023年02月28日 10:21

231名の医師が参考になったと回答 

 直腸がんの治療において、術前化学放射線療法(CRT)の効果を予測することができれば個々の患者に対して最適な治療方針の提案が可能となる。がん研究会有明病院(東京都)大腸外科副部長の秋吉高志氏らは、CRT施行前の進行直腸がん患者の生検検体を用いて、次世代シークエンサーによる遺伝子発現解析(RNAシークエンス解析)を実施。CRTの治療効果を予測する遺伝子発現パターンを同定したとJAMA Netw Open2023; 6: e2252140)に発表した。

CRT開始前の298例の腫瘍検体を遺伝子発現解析

 直腸がん治療を行う際、手術前に放射線と抗がん薬を組み合わせて行うCRTは標準治療として広く行われている。しかし治療効果は患者によってさまざまで、がん細胞が完全に消滅する場合もあれば、ほとんどが残存するケースもある。秋吉氏らはCRTの効果に関連する因子を探る目的で研究を行った。

 同氏らは2004年4月〜20年9月にCRTを行った進行直腸がん患者について、事前に腫瘍検体を収集。十分ながん細胞を含むなどの条件を満たした298例(年齢中央値61歳、男性68.8%)の検体を用いて次世代シークエンサーによるRNAシークエンス解析を行い、効果良好群と効果不良群の遺伝子発現パターンの違いを検討した。効果良好の定義は、摘出検体の腫瘍縮小グレード(tumor regression grade; TRG)が3〜4、または臨床的完全奏効が得られ3年以上経過観察を行った例とした。

効果良好群で細胞傷害性リンパ球の遺伝子発現スコアが高値

 解析の結果、分子生物学的分類(CMS分類)による生存率の違いは見られなかったものの、CMS 1の患者(6.4%)で効果良好例の割合が高かった。効果良好群では免疫細胞ががん細胞を殺すための遺伝子(GZMA)や、がん細胞に対する免疫促進に働く遺伝子(PDCD1TIGITCD274など)の発現上昇が見られた。また、効果良好群では効果不良群に比べ、細胞傷害性リンパ球の遺伝子発現スコア(細胞傷害性リンパ球スコア)が有意に高かった〔スコア中央値0.76(四分位範囲 0.53〜1.01) vs. 0.58(同 0.43〜0.83)、P<0.001〕。

 多変量解析の結果、細胞傷害性リンパ球スコアはCRTの効果を予測する独立した因子であることが分かった(オッズ比3.81、95%CI 1.82〜7.97、P<0.001)。術後の病理学的因子を含めた多変量Cox比例ハザード回帰分析から、細胞傷害性リンパ球スコアは無再発生存率(ハザード比0.38、95%CI 0.16〜0.92、P=0.03)および全生存率(同0.16、0.03〜0.83、P=0.03)を予測する独立した因子であることが明らかになった()。

図.細胞傷害性リンパ球スコアによる生存率曲線

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(がん研究会プレスリリースより)

 以上から、秋吉氏らは「CRTを開始する前の腫瘍検体における細胞傷害性リンパ球スコアにより、CRTの効果を予測できることが明らかになった」と結論した上で、細胞傷害性リンパ球スコアが直腸がん個別化医療におけるバイオマーカーとして活用される可能性に期待を示している。

(長谷部弥生)

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