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記憶力低下に強く関連する生活習慣因子とは

2023年03月02日 05:00

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イメージ画像 ©Adobe Stock ※画像はイメージです

 食事や運動、社会と関わる機会など6つの健康的な生活習慣因子のうち、4つ以上を満たす人では記憶力の低下が緩やかであることや、これらのうち最も強く記憶の低下に関連する因子が中国の大規模前向きコホート研究で示された。同研究では、認知機能低下リスクが高いアポリポ蛋白(apo)Eの対立遺伝子ε4(ApoE4)の保有者においても健康的な生活習慣と記憶力低下の遅延に関連が認められたという。中国・Capital Medical UniversityのJianping Jia氏らがBMJ2023; 380: e072691)に報告した。

60歳以上の住民2万9,072例を10年間追跡

 記憶力は加齢に伴い低下するが、生活習慣が高齢者の記憶力に及ぼす影響に関しては十分なデータがなかった。そこでJia氏らは今回、人口ベースの前向きコホート研究で高齢者の記憶力低下の遅延と関連する生活習慣を検討した。

 解析対象は、認知機能が正常で2009年のベースライン時にapoE遺伝子検査を受けた60歳以上の2万9,072例(平均年齢72.23歳、女性48.54%、apoE4保有者20.43%)。追跡期間は2019年12月26日、死亡、研究への参加中止のいずれか早い時点までとした。

 検討した6つの健康的な生活習慣因子は、①健康的な食事(果物、野菜、魚、肉、乳製品、塩、油、卵、穀物、豆類、ナッツ類、茶の12種の食品のうち7種以上を適度に摂取)、②日常的な身体活動(1週間に中強度の運動を150分以上または高強度の運動を75分以上)、③社会との接触(会合やパーティーなどへの参加、友人や親族を訪問、旅行、オンラインでの会話などの機会が週2回以上)、④活発な認知活動(読み書き、読書、カード遊び、麻雀などのゲームの機会が週2回以上)、⑤喫煙習慣なし(生涯で100本未満/3年以上前から禁煙)、⑥飲酒習慣なし―であった。

 これら6つの因子のうち4~6つを満たす人を良好な生活習慣群、2~3つを満たす人を平均的な生活習慣群、0~1つを満たす人を不良な生活習慣群に分類した。

 記憶機能はWHO/UCLA Auditory Verbal Learning Task(AVLT)、包括的認知機能はMini-Mental State Examination(MMSE)を用いて評価した。

健康的な食事が最も強く関連

 検討の結果、10年間(2009~19年)の追跡期間において、不良な生活習慣群と比べて良好な生活習慣群では記憶力の低下が有意に緩やかだった(AVLTのzスコアの差:0.028ポイント/年、95%CI 0.023~0.032、P<0.001)。また、ApoE4保有者と非保有者に層別化して解析した結果、保有の有無にかかわらず、不良な生活習慣群に比べて良好な生活習慣群および平均的な生活習慣群では記憶力の低下が緩やかであることも示された。

 また、6つの健康的な生活習慣因子以外の健康関連因子や経済的因子、社会的因子なども調整して解析した結果、いずれの健康的な生活習慣因子も記憶力低下の遅延に関連していたが、最も強い関連を示したのは健康的な食事であった。

 以上を踏まえ、Jia氏らは「好ましい行動を組み合わせた健康的な生活習慣の遵守が記憶力低下の遅延に関連することが示された。また、このような関連は遺伝的に記憶力が低下しやすい集団においても認められた」と結論。その上で「今回の研究結果は、高齢者の記憶力低下を抑制する公衆衛生上の重要な情報となる可能性がある」と付言している。

(岬りり子)

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