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ダパグリフロジンに尿酸上昇抑制効果

心不全患者1万1,000例を含むRCT2件の解析

2023年03月07日 15:31

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 痛風は心不全の一般的な併存疾患であり、臨床転帰の不良と関連している。既報から心不全治療に用いられるSGLT2阻害薬は尿酸低下効果を示すことが知られており、痛風の発症を抑える可能性がある。英・University of GlasgowのJawad H. Butt氏らは、約1万1,000例を対象としたSGLT2阻害薬ダパグリフロジンの第Ⅲランダム化比較試験(RCT)2件(DAPA-HFとDELIVER)のデータを解析。症候性かつN末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)高値の心不全患者を対象に、痛風の合併例と非合併例でダパグリフロジンの効果を検討した結果、痛風合併の有無にかかわらず心不全に対する有効性が一貫して認められた。さらに、尿酸降下薬またはコルヒチンの新規導入を減らすなど、ダパグリフロジンの尿酸低下効果という新たな作用の可能性が示されたとJAMA Cardiology2023年2月22日オンライン版)に発表した。

左室駆出率にかかわらず、痛風の有病率は約10%

 DAPA-HFおよびDELIVERは、ダパグリフロジンの有効性および安全性を検討するため26カ国で実施された第Ⅲ相RCT。両試験の違いは、対象患者の左心室駆出率(LVEF)がDAPA-HFの40%以下に対し、DELIVERでは40%超であること。

 両試験では、ニューヨーク心臓協会(NYHA)心機能分類でⅡ~IV度およびNT-proBNPが上昇している心不全患者1万1,005例(DAPA-HF 4,747例、DELIVER 6,258例)を登録。ガイドラインで推奨されている標準治療にダパグリフロジン10mgを1日1回追加投与する群とプラセボを追加投与する群にランダムに割り付け、主要複合評価項目として心不全の悪化または心血管死のリスクを評価した。ベースライン時の痛風の有病率、痛風と臨床転帰との関連、痛風の合併の有無別にダパグリフロジンの効果、痛風再燃の代理指標となる尿酸降下薬またはコルヒチンの新規導入との関連についても検討した。

 ベースライン時の痛風合併例は1,117例で、有病率は10.1%だった。LVEFによる差はなく、40%以下の患者で10.3%(4,747例中488例)、40%超の患者で10.1%(6,258例中629例)だった。

 平均年齢は、痛風合併例と非合併例で差はなかった(それぞれ69.6歳、69.3歳)。一方、非合併例に比べ合併例では男性が多く(80.3%、1,117例中897例)、BMI高値、推算糸球体濾過量が低く、ループ利尿薬の頻回な投与(いずれもP<0.001)が確認された他、さまざまな合併症があり、心不全の状態がより重症だった。

痛風の有無、LVEFに関係なく一貫した効果

 主要複合評価項目である心不全の悪化または心血管死に関し、プラセボ群に対するダパグリフロジン群のリスク低下は痛風非合併例では有意差が〔ハザード比(HR) 0.79、0.71~0.87〕、痛風合併例では低下傾向がそれぞれ認められたが(HR 0.84、95%CI 0.66~1.06)、交互作用はなかった(P=0.66)。

 心不全入院や全死亡などの転帰に対するダパグリフロジンの効果も、痛風の合併の有無にかかわらず一貫していた。

 中央値22カ月の追跡期間中、ベースライン時に尿酸降下療法を行っていなかった9,556例のうち370例(3.9%)が治療を開始した。プラセボ群に対しダパグリフロジン群では尿酸降下薬の新規導入リスクを57%低減させ(HR 0.43、95%CI 0.34~0.53)、コルヒチンの新規導入リスクを46%低減させた(同0.54、0.37~0.80)。

 ダパグリフロジン投与と尿酸降下療法またはコルヒチンの新規導入との関連は、痛風の合併の有無(それぞれ交互作用のP=0.73、P=0.76)またはLVEFの高低によって変わらなかった(それぞれ交互作用のP=0.65、P=0.06)。

心不全患者のポリファーマシー改善も

 今回の結果から、心不全患者の1割に痛風の合併が認められ、不良な転帰と関連していることが判明した。Butt氏らは「ダパグリフロジンの効果は、痛風合併の有無にかかわらず一貫して認められたことから、同薬の新たな利点になりうる」と結論。ダパグリフロジン群で高尿酸血症や痛風の治療薬の新規導入が減少したことについては、「SGLT2阻害薬の尿酸低下作用を反映している可能性が高いが、メカニズムは不明」と考察している。

 既存の痛風治療薬には、心不全治療に用いられるACE阻害薬やフロセミドなどとの薬物相互作用に加え、過敏症などの深刻な副作用のリスクがあるため、心不全患者への使用は避けることが望ましいとされている。今回の知見から、同氏らは「ダパグリフロジンにより痛風治療薬の新規導入が減少したことから、心不全患者のポリファーマシーを改善するとともに服薬アドヒアランスを向上させる可能性がある」と期待を示している。

(宇佐美陽子)

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