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AMEDが考える健康管理サービス

社会にどう実装する?シンポジウムを開催

2023年03月10日 07:00

389名の医師が参考になったと回答 

イメージ画像 © Adobe Stock ※画像はイメージです

 日本医療研究開発機構(AMED)では現在、「予防・健康づくりの社会実装に向けた研究開発基盤整備事業(ヘルスケア社会実装基盤整備事業)」と題し、エビデンスに基づくヘルスケアサービスの社会実装に向けたプロジェクトを進めている。同プロジェクトは、3月1日に医療、産業、行政の各界関係者が参集したシンポジウムを開催。医療界から登壇した福岡大学衛生・公衆衛生学教授の有馬久富氏はデジタル技術を活用した血圧管理に関する指針作成について、大阪大学大学院社会医学講座特任准教授の野口緑氏は生活習慣病予防に向けた行動変容指標の開発について、それぞれ現状を報告した。

デジタル技術を用いた血圧管理の指針を作成中

 日本では、毎年約10万人が高血圧を伴う心血管疾患(CVD)で死亡しているとされる。高血圧は生活習慣の改善により予防できるというエビデンスが確立されているが、過去40年間において60歳代以上の高血圧有病率は横ばいであり、高齢化に伴って今後は増加傾向を示すものと考えられる。

 また、治療により血圧値を収縮期血圧(SBP)140mmHg/拡張期血圧(DBP)90mmHg未満に下げることで心血管イベントを抑制できることが明らかになっている。それにもかかわらず、日本人高血圧患者4,300万例のうち3,100万例がこの基準を達成していないのが現状だ。

 このような降圧目標と現実の乖離を埋めるツールとして有馬氏が期待を寄せるのが、デジタル技術の社会実装である。昨年(2022年)には高血圧治療補助アプリが承認を取得、保険適用され話題を集めたが、有効性のエビデンスが確立されていないアプリも存在するなど、本格的な社会実装に向けて課題は山積している。

 そこで日本高血圧学会では、現在、デジタル技術を活用した血圧管理に関する指針の作成を進めているという。指針はMindsのマニュアルに準拠し、システマチックレビューを行った上で推奨が示される予定である。同氏は「完成した指針を国民や企業関係者に広く使用してもらい、日本から新しい斬新なデジタル技術が発信される一助になればと考えている」と展望した。

行動変容の介入は有用、指標を質・量の両面から開発

 これまで生活習慣病の予防法として、患者にパンフレットなどで生活習慣改善を促したり、具体的な行動目標を示したりするといった手法が取られていた。しかし野口氏によると、このような手法では患者は生活習慣病を自分事として捉えにくく、糖尿病や循環器疾患が発症しない限り、行動変容の継続が困難であったという。

 そこで、同氏らは「生活習慣病重症化予防のための戦略研究」(J-HARP)において、全国43自治体の特定健診受診者のうちCVDや糖尿病合併症の高リスク者とされた1万5,708例を対象に、独自開発したチャート式結果表と説明資料を用いた行動変容の介入効果を評価した。

 重症化の高リスク患者の累積受診率について介入群と対照群(一般的な保健指導介入群)を比較したところ、12カ月時は介入群が58.1%、対照群が44.5%と介入群で有意に高かった(対照群に対する介入群の多変量調整後ハザード比1.46、95%CI 1.24〜1.72)。対象を脂質異常症患者に限定すると、介入群が59.2%、対照群が42.6%(同1.67、1.38〜2.02)と同様の結果であり、この結果は『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版』にも掲載され、「行動変容のための5要素」が掲げられた。

 同氏らは現在、生活習慣病予防に効果的な行動変容の指標について、質的および量的の双方から研究開発を進めている。「継続的な行動変容に効果的である具体的な方法や条件、質的指標とともに、量的指標の開発も重要。両者の統合を通じてヘルスケア分野の研究開発に必要な要件や注意点の整理を行う」と同氏。「これらを通じて、持続的なヘルスケアサービス環境の構築、行動変容を継続させるオンライン保健指導の実現、PHRを活用したスマートシティ戦略の推進などをサポートできると確信している」と述べた。

(小野寺尊允)

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