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高齢の治療抵抗性うつ病、次の一手は

抗うつ薬の増強か切り替えか

2023年03月15日 05:00

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イメージ画像 © Adobe Stock ※画像はイメージです

 高齢の治療抵抗性うつ病において、抗うつ薬の増強療法または切り替えのベネフィットとリスクは詳細に検討されていない。米・Washington UniversityのEric J. Lenze氏らは、アリピプラゾールとbupropionを用いた10週間のランダム化比較試験OPTIMUMの結果、bupropionへの切り替えに比べアリピプラゾール増強療法で心理的幸福度(well-being)が有意に改善したことなどを報告した。なお同試験は2段階式で、両薬が無効または不適格な患者においてリチウムまたはノルトリプチリンの使用も検討している。詳細は、N Engle J Med2023年3月3日オンライン版)に掲載されている。

ステップ1で約620例、ステップ2で約250例をランダム化

 Lenze氏らは、まず2017年2月~19年12月に北米の5施設で登録した60歳以上の治療抵抗性うつ病患者619例を非盲検下で①現在の抗うつ薬+アリピプラゾール増強療法(2.5mg/日開始、最大15mg/日、211例)、②現在の抗うつ薬+bupropion増強療法(150mg/日開始、目標300mg/日、最大450mg/日、206例)、③現在の抗うつ薬を漸減し、bupropionに切り替え(用量設定は追加群と同じ、202例)―の3群に1:1:1でランダムに割り付けて治療した(ステップ1)。

 次に、ステップ1が無効または不適格な患者125例とステップ2から治療を開始する患者123例の計248例を①現在の抗うつ薬+炭酸リチウム増強療法(150mgまたは300mg/日、最大1,200mg/日、127例)、 ②現在の抗うつ薬からノルトリプチリンへの切り替え(25mg/日開始、目標血中濃度80~120ng/mL、121例)―の2群に1:1でランダムに割り付け治療した(ステップ2)。

 各ステップとも治療を約10週間継続。主要評価項目は心理的幸福度のベースラインからの変化(Tスコア)とし、米国立衛生研究所Toolbox Emotion Battery(NIHTB-EB)における心理的幸福度のサブ指標3つのうち前向き感情(Positive Affect)と生活満足度(General Life Satisfaction)のスコアを用いて評価した(一般における両サブ指標の平均点は50点、高得点ほど幸福度が高い)。副次評価項目は、うつ病の寛解率とした(有意水準P<0.025)。

うつ病寛解率はアリピプラゾール増強群とbupropion増強群で良好

 ステップ1の平均年齢は69.3歳で、女性が66.7%だった。心理的幸福度のTスコアは、アリピプラゾール増強群で4.83点、bupropion増強群で4.33点、bupropion切り替え群で2.04点。上昇幅はbupropion切り替え群に対し、アリピプラゾール増強群で有意に大きかった(群間差2.79点、95%CI 0.56~5.02点、P=0.014)。一方、bupropion増強群とbupropion切り替え群(同2.29点、0.01~4.57点、P=0.049)、アリピプラゾール増強群とbupropion増強群(同0.5点、-1.69~2.69点)との間に有意差はなかった。

 寛解率はアリピプラゾール増強群が28.9%、bupropion増強群が28.2%、切り替え群が19.3%。bupropion切り替え群に対するリスク比は、アリピプラゾール増強群で1.50(95%CI 1.06~2.13)、bupropion増強群で1.49(同1.04~2.12)と、増強の2群で良好だった。有害事象としての転倒率は、bupropion増強群で最も高かった。

リチウム増強とノルトリプチリン切り替えは同等

 ステップ2の平均年齢は68.5歳で、女性は69.8%だった。心理的幸福度のTスコアは、リチウム増強群で3.17点、ノルトリプチリン群で2.18点だった(群間差0.99点、95%CI −1.92~3.91点)。

 寛解率はリチウム増強群が18.9%、ノルトリプチリン切り替え群が21.5%で、ノルトリプチリン切り替え群に対するリチウム増強群のリスク比は、0.84(95%CI 0.53~1.36)だった。転倒率は両群で同等だった。

 Lenze氏らは「高齢の治療抵抗性うつ病患者を対象とした10週間の治療において、bupropion切り替えに比べアリピプラゾール増強療法で心理的幸福度が有意に改善し、寛解率も高かった。また、これらの治療が無効または不適格な患者において、リチウム増強療法とノルトリプチリン切り替えは、心理的幸福度の改善率およびうつ病の寛解率が同程度だった」と結論している。

(小路浩史)

変更履歴(2023年3月15日):日本未承認薬につきブプロピオンを欧文表記に変更しました

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