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ステロイド無効の重症薬疹、次の選択肢は?

血漿交換療法 vs. 免疫グロブリン療法

2023年03月15日 16:30

383名の医師が参考になったと回答 

イメージ画像 © Adobe Stock ※画像はイメージです

 京都府立医科大学救急医療学教室の宮本雄気氏らは、ステロイド全身投与が無効なStevens-Johnson症候群(SJS)と中毒性表皮壊死融解症(TEN)の患者266例を対象に、血漿交換療法と免疫グロブリン大量静注(IVIG)療法のどちらを先行すべきかを検討する後ろ向きコホート研究を実施。その結果、両者で死亡率に有意差はなかったが、血漿交換療法群では入院期間が延長し医療費が高額だったとJAMA Dermatol2023年3月8日オンライン版)に報告した。

1,200以上の急性期病院を含む日本のデータベースを利用

 SJS/TENは表皮剝離や粘膜侵食を伴う重症薬疹で、ステロイド全身投与が第一選択だが、ステロイドが無効または使用・増量が困難で集中治療を要するケースも少なくない。しかし、SJS/TEN患者における血漿交換療法やIVIG療法などの臨床成績に関するエビデンスは限られる。

 そこで宮本氏らは、1,200施設以上の急性期病院を含む日本のnational administrative claims databaseから2010年7月〜19年3月のデータを抽出。ステロイド全身投与が無効のSJS/TEN患者の次なる治療として、血漿交換療法とIVIG療法の臨床転帰を比較する後ろ向きコホート研究を実施した。

 組み入れ基準は、入院後3日以内にメチルプレドニゾロン換算で1,000mg/日以上のステロイド全身投与を開始した後に、血漿交換療法および/またはIVIG療法を受けた18歳以上のSJS/TEN患者。同日にIVIG療法と血漿交換療法の両方を受けた場合は、血漿交換療法によりIVIG療法で投与された抗体の大部分が除去されること、一般的にIVIG療法は毎日の血漿交換療法後に行われることから、血漿交換療法群に含めた。

 主要評価項目は院内死亡率、副次評価項目は入院期間および医療費とした。データの解析は2020年10月〜21年5月に実施した。

 解析対象は、266例〔平均年齢56.7歳±20.2歳、女性152例(57.1%)〕。内訳は、ステロイド全身投与開始後5日以内にIVIG療法を先行したIVIG療法群が213例、血漿交換療法を先行した血漿交換療法群が53例だった。

IVIGは入院期間が12日短く、医療費は1万米ドル以上安い

 検討の結果、血漿交換療法群の56.6%(53例中30例)が後にIVIG療法を受け、IVIG療法群の6.6%(213例中14例)が後に血漿交換療法を受けた。

 傾向スコアオーバーラップ重み付け法による解析の結果、入院死亡率は血漿交換療法群で18.3%、IVIG療法群で19.5%と両群に有意差はなかった(オッズ比0.93、95%CI 0.38〜2.23、P=0.86)。

 ただし、IVIG療法群と比べて血漿交換療法群では入院期間が有意に長く(32.8日 vs. 45.3日、群間差12.5日、95%CI 0.4〜24.5日、P=0.04)、医療費が有意に高かった(2万3,054米ドル vs. 3万4,262米ドル、同1万1,207米ドル、2,789〜1万9,626米ドル、P=0.009)。

 IVIG療法群に比べ血漿交換療法群で医療費が高く入院期間が長期化した理由として、宮本氏は「血漿交換療法を繰り返すと免疫グロブリンが枯渇し、SJS/TEN患者の主な死因である敗血症への感受性に影響する可能性がある。また、SJS/TEN患者は発症から5日間、Fasリガンドを高濃度に維持することが報告されており、IVIG療法に含まれる抗体はFasとの結合を介した細胞アポトーシスを抑制する。しかし、血漿交換療法群ではIVIG療法を後から行うため、適切なタイミングを逃してIVIG療法による細胞アポトーシスおよび表皮壊死の抑制効果が得られなかった可能性がある」と考察している。

(今手麻衣)

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