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ピロリ除菌で1型糖尿病転帰が改善か

ポーランド・予備的研究

2023年03月17日 17:47

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イメージ画像 © Adobe Stock ※画像はイメージです

 Helicobacter pylori(HP)感染は、糖尿病患者でより高頻度に診断される。ポーランド・Poznan University of Medical SciencesのAgnieszka E. Zawada氏らは1型糖尿病の成人患者103例を対象とした予備的研究で、HP感染の有病率と皮膚の終末糖化産物(AGE)との関連を検討。その結果、1型糖尿病患者ではHP感染が皮膚のAGE蓄積の増加に関連しており、HPの除菌により1型糖尿病の転帰が改善する可能性が示されたとAdv Clin Exp Med2023年3月7日オンライン版)に発表した。

HP除菌による臨床的利点を探索

 1型糖尿病患者のインスリン抵抗性は、内膜中膜複合体厚(IMT)の肥厚、皮膚のAGE蓄積、慢性合併症の発症に関連している。HP除菌と身体測定指標およびインスリン抵抗性指数との関連を評価することで、HP除菌による臨床的利点を見いだす可能性がある。そこでZawada氏らは、1型糖尿病患者のHP感染と皮膚のAGE蓄積量との関連を評価した。

 対象は、2017~20年にPoznan University of Medical Sciencesを受診した1型糖尿病罹病期間が5年超〔中央値17年、四分位範囲(IQR)12~23年〕で18歳以上の白人患者103例(年齢中央値34歳、女性53例)。HbA1c中央値は8.2%(IQR 7.1~9%)、糖尿病網膜症は37.9%、末梢神経障害は31.1%、糖尿病腎症は9.7%、皮膚AGE中央値は2.2AU(IQR 1.9~2.7AU)だった。

 HPの検査は、糞便中抗原測定法を使用。皮膚AGE値は、AGE Reader(DiagnOptics)を用いて皮膚自発蛍光(skin autofluorescence;SAF)を測定し推算した。

ビタミンD濃度低下、皮膚AGE量増加に関連

 解析の結果、患者の30%がHP陽性と判明した。HP陽性群31例とHP陰性群72例で年齢、性、糖尿病罹病期間、代謝管理、炎症性マーカー、体脂肪量、BMI、脂質状態に差はなかった。一方、皮膚AGE蓄積量の中央値はHP陽性群が2.6AU(IQR 2.3~3.1AU)、HP陰性群が2.1AU(同1.8~2.5AU)と、両群に有意差が見られた(P<0.001)。また血清ビタミンD濃度は、HP陽性群に比べてHP陰性群で有意に高かった(16mg/dL、IQR 12~21mg/dL vs. 21mg/dL、同14.5~31mg/dL、P=0.024)。

 ロジスティック回帰分析では、年齢、性、喫煙状況、BMI、動脈性高血圧症、HbA1c値、LDLコレステロール(LDL-C)値を調整後も、HP感染はビタミンD濃度の低下(オッズ比 0.89、95%CI 0.81~0.96、P=0.005)、皮膚AGE蓄積量の増加(同5.43、1.88~18.55、P=0.003)と有意に関連していた。

HP除菌、ビタミンDの効果検証を

 以上の結果から、Zawada氏らは「HP感染を伴う1型糖尿病患者で皮膚のAGE蓄積量が増加していることは、この患者集団のHP除菌療法を検討する理由になりうる。1型糖尿病患者では、ビタミンD濃度の低下がHP感染と関連していた。より大規模な1型糖尿病患者集団で検証する必要がある」と結論している。

 なお、糖尿病患者の慢性合併症とHP感染との関連を評価した研究では一貫した知見は得られていない。一方、胃上皮細胞における終末糖化産物受容体(RAGE)の発現は、非感染細胞と比べてHP感染細胞で増加することが知られている。

 同氏氏らは「HP除菌がAGEを減少させるというエビデンスはなく、これは重要な追跡研究になるだろう。HP陽性患者でビタミンD濃度が低下していることも重要だ。現在、HP感染治療にビタミンD投与を組み込むべきかどうかが議論されているが、1型糖尿病患者においてHP感染治療中および治療後のビタミンD補充の有用性を示唆するデータは増えている」と付言している。

坂田真子

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