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SotaterceptでPAH患者の運動能力改善

第Ⅲ相STELLAR試験の結果

2023年03月20日 11:15

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 ドイツ・Hannover Medical SchoolのMarius M. Hoeper氏らは、肺動脈性肺高血圧症(PAH)に対する新しい薬剤sotaterceptの有効性と安全性を評価する第Ⅲ相多施設共同国際二重盲検プラセボ対照試験STELLARの結果をN Engl J Med2023年3月6日オンライン版)に発表。同薬は基礎治療を受けているPAH患者の運動能力を改善したと報告した。

TGF-βスーパーファミリーのシグナル伝達を修復

 PAHは肺動脈の増殖性リモデリングを特徴とする難治性の進行性疾患である。血管内腔の狭窄が進み肺動脈圧の亢進が長期化すると、心臓への負荷が増大し、最終的には右室不全や死に至る。

 現在利用可能な治療薬としては、PDE5阻害薬やエンドセリン受容体拮抗薬、可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激薬、プロスタサイクリン系薬などがあり、単剤または併用で用いることで、肺の血液動態、運動能力、無増悪生存の改善が期待される。しかし、PAH患者の診断後生存期間の中央値は5~7年と、過去10年間で大幅な改善は見られていない。

 最近の研究で、骨形成因子Ⅱ型 (BMPⅡ)、アクチビン2型受容体A(ActRⅡA)、ActRⅡAリガンドのアクチビンA/アクチビンB、成長分化因子(GDF8やGDF11)を含むトランスフォーミング増殖因子(TGF)-βスーパーファミリーによるシグナル伝達の変化がPAHの病態において果たす役割が注目されている。

 sotaterceptは、ヒトActRⅡAの細胞外ドメインに結合しているヒトIgGのFcドメインで構成される画期的な融合蛋白であり、TGF-βスーパーファミリーメンバーのリガンドトラップとして作用する。同薬はこういったリガンドを阻害することで肺動脈のホメオスタシスを調整し、増殖抑制やアポトーシス促進方向へのシグナルを回復させることが期待されている。

24週後の6分間歩行距離の変化を評価

 1~3剤の基礎治療(background treatment)を受けているPAH患者(WHO機能クラスⅡ~Ⅲ)323例をsotatercept群(163例、女性129例、年齢47.6±14.1歳)とプラセボ群(160例、同女性127例、48.3±15.5歳)にランダムに割り付け、sotaterceptまたはプラセボ(生理食塩水)を3週ごとに皮下注投与した。初回用量は0.3mg/kgとし、2回目から0.7mg/kgに増量、基礎治療は継続した。

 主要評価項目は6分間歩行距離で評価した24週時における運動能力(exercise capacity)のベースラインからの変化。

 副次評価項目として、複合項目の改善〔multicomponent improvement:6分間歩行距離の改善、N末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)値の改善、WHO機能クラスの改善またはクラスⅡの維持の3項目を全て達成〕を筆頭に9項目を定め、階層的検定を実施した。

歩行距離と8つ目までの副次評価項目、有意に改善

 試験の結果、24週時における6分間歩行距離のベースラインからの変化中央値はプラセボ群の1.0m(95%CI -0.3~3.5m)に対し、sotatercept群では34.4m(同33.0~35.3m)だった。Hodges-Lehmann推定で計算したこの差の推定量は40.8m(95%CI 27.5~54.1m、P<0.001)だった。

 副次評価項目については、最初の8項目はプラセボ群に対しsotatercept群で有意な改善を認めたが、9番目のPulmonary Arterial Hypertension-Symptoms and Impact(PAH-SYMPACT)の認知/感情影響ドメインスコアの変化に有意な改善は見られなかった。

 プラセボ群に比べsotatercept群で多かった有害事象は、鼻血、眩暈、毛細血管拡張症、ヘモグロビン値上昇、血小板減少、血圧上昇などであった。

死亡率の改善につながるかどうかは不明

 考察でHoeper氏らは「安全性プロファイルは第Ⅱ相のULSAR試験(N Engl J Med 2021; 384 :1204-1215)で観察されたものと一致していた」と指摘。しかし、今回の試験はWHO機能クラスⅡ~Ⅲの患者のみが対象であったこと、多様な原因によるPAHをカバーしていないことなどから、結果の一般化には限界があるとしている。

 また、今回の試験デザインでは死亡率に及ぼす影響は評価できない点にも言及。「副次評価項目の1番目に設定した複合項目の改善は、最近のレジストリ解析(J Heart Lung Transplant 2022; 41: 971-81)で、死亡相対リスクの50%以上低下との関連が報告されているものの、この複合項目の改善が臨床転帰の頑健(robust)な代理エンドポイントといえるかどうかは不明であり、今後、大規模な前向き試験での検証が必要だ」と述べている。

木本 治

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