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乾癬用バイオシミラー、先発薬と遜色なし

リアルワールドデータで検証

2023年03月22日 15:41

336名の医師が参考になったと回答 

イメージ画像 © Adobe Stock ※画像はイメージです

 腫瘍壊死因子(TNF)α阻害薬は乾癬患者の臨床転帰を改善するが、バイオ医薬品は高価なため経済的負担を軽減する代替薬としてバイオ後続品(バイオシミラー)が期待されている。米・Wake Forest School of MedicineのRachel C. Ruda氏らは、乾癬治療に用いる先行バイオ医薬品のTNFα阻害薬からバイオシミラーへの切り替え後の治療成績に関するリアルワールドデータの文献レビューを実施。アダリムマブ、エタネルセプト、インフリキシマブのバイオシミラーに切り替えても、有効性および安全性に関するデータは先発薬と遜色がなかったとJ Dermatolog Treat2023; 34: 2140569)に発表した。

バイオシミラー切り替え例の観察研究をレビュー

 米国で乾癬患者への使用が承認されているTNFα阻害薬のバイオシミラーは、2022年9月時点でアダリムマブが6剤(ABP 501、SB5、GP2017など)、エタネルセプトが2剤(GP2015、SB4)、インフリキシマブが4剤(CT-P13など)。なお日本では、2022年8月時点でバイオシミラーとして8剤(アダリムマブ3剤、インフリキシマブ5剤)が承認されている(日本皮膚科学会『乾癬における生物学的製剤の使用ガイダンス(2022年版)』)。

 乾癬治療におけるバイオシミラーへの切り替え効果を評価する第Ⅲ相ランダム化比較試験(RCT)は多数行われており、バイオシミラーは先発薬と同等の安全性と有効性が示されている。リアルワールドのエビデンスは、これらの臨床試験のデータを補完する役割を果たす。

 今回の文献レビューではPubMedとGoogle Scholarを用いて、乾癬患者における「バイオシミラー間の切り替え」や「先発薬からバイオシミラーへの切り替え」に関する英語論文を検索。乾癬患者を対象に、バイオシミラーの安全性や有効性データを含む観察研究(アダリムマブ5件、エタネルセプト6件、インフリキシマブ6件)を特定した。有効性評価には、乾癬面積と重症度の指標であるPsoriasis Area and Severity Index(PASI)、Visual Analogue Scale(VAS)、皮膚疾患のQOL評価指標であるDermatology Life Quality Index(DLQI)、28関節の疾患活動性スコア(DAS28)、治療継続率などが用いられていた。

有効性は同等、一部の研究で軽度AEが増加

 アダリムマブに関する観察研究5件の症例数は20~726例、追跡期間は6~12カ月。全体として、乾癬患者におけるアダリムマブの先発薬からバイオシミラーへの単一切り替え後の皮膚疾患に対する有効性は同等だった。乾癬性関節炎(PsA)を検討した研究3件中2件では、バイオシミラーへの切り替え後も疾患活動性がコントロールされていた。アダリムマブからアダリムマブバイオシミラー(SB5)に切り替えた20例を対象とした研究1件では、体軸関節炎合併患者5例でBath ankylosing spondylitis disease activity index(BASDAI)が上昇したが、症例数が少なかった。

 切り替え後に軽度の有害事象(AE)が増加した研究は2件あり、このうち1件は対照群が設定されていた。デンマーク国内の全乾癬患者を登録したDERMBIOレジストリを用いて、アダリムマブからGP2017/SB5に切り替えた中等度~重症乾癬患者348例を評価した研究では、先発薬を継続した対照群378例に比べて感染症などのAEが有意に多かった(9.1% vs. 5.0%、P=0.04)。

自己申告で非盲検によるバイアスも

 エタネルセプトに関する観察研究6件の症例数は24~621例、追跡期間は6~12カ月。全体として、乾癬患者におけるエタネルセプトの先発薬からバイオシミラーへの切り替え後、または同薬のバイオシミラー間で、皮膚および関節疾患に対する有効性は同等だった。

 エタネルセプトからSB4に切り替えた24例を対象とした単施設研究では、軽度AE(疲労、胃腸の障害、瘙痒)を自己申告した患者の割合は、切り替え後に0%から16.7%に増加した。この研究の著者らは、自己申告に基づくPASIと医療者が測定したPASIの一致率は69.2%と算定しており、Ruda氏らは「患者は、バイオシミラーよりも先発薬を主観的に好む傾向が示唆される」と指摘。また、患者が申告したAEに非盲検化によるバイアスの影響が考えられるとしている。

 インフリキシマブに関する観察研究6件の症例数は22~356例、追跡期間は6~24カ月。全体として、乾癬患者においてインフリキシマブの先発薬からバイオシミラーへの切り替え後、または同薬のバイオシミラー間で、皮膚および関節疾患に対する有効性は同等だった。統計解析は行われていないが、CT-P13に切り替えた45例を対象とした単施設研究では、切り替え後に軽度AEの割合が6.7%から22.2%に増加した。

ノセボ効果を克服する教育を

 以上の結果から、Ruda氏らは「アダリムマブ、エタネルセプト、インフリキシマブの先発薬からバイオシミラーに切り替えた場合、有効性および安全性のデータは先発薬と同等だった。ただし、これらの研究は症例数、追跡期間および対照群のない単群デザインによって制限される。利用可能なリアルワールドエビデンスは、患者は乾癬治療でバイオシミラーへの切り替えが安全かつ効果的に行えることを示唆している」と結論している。

 一部の研究では、バイオシミラーへの切り替え後に軽度AEが増加した。同氏らは「バイオシミラーに対する患者の否定的な態度は、治療介入への懸念によって症状の悪化が誘発されるノセボ効果の可能性がある。先発薬との違い、バイオシミラーへの切り替え後の調査結果について医師と患者を教育することで、バイオシミラーへの安心感や使用を妨げる障壁の緩和につながるだろう」と述べている。

(坂田真子)

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