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深部脳刺激療法で意識障害が改善

最小意識状態では特に効果高い

2023年03月27日 13:45

276名の医師が参考になったと回答 

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 中国・Capital Medical UniversityのYi Yang氏らは、意識障害(disorders of consciousness)を有する患者に深部脳刺激療法(deep brain stimulation;DBS)を施行した結果、保存的治療を行った群と比べ1年後の意識状態が有意に改善したとStroke Vasc Neurl(2023年3月7日オンライン版)に報告。さらに、意識障害患者の長期転帰を予測するノモグラムを提案した。

期待大きいが治療報告数は少ない

 意識障害は覚醒(arousal)および意識(awareness)の乱れ(disturbances)を呈し、外傷や脳卒中、無酸素症が原因で生じることが多い。意識障害には、昏睡(coma)、植物状態(vegetative state;VS)/無反応覚醒症候群(unresponsive wakefulness syndrome;UWS)、最小意識状態(minimally conscious state;MCS)が含まれるが、総じて自然回復の可能性は低いため、臨床医にとって大きな課題となっている。

 DBSは脳の特定領域に植え込んだ電極から電気刺激を加えることで、神経経路の異常を修復する神経調節技術であり、意識障害に対する有望な治療法として期待されている。

 しかし、中央視床核を治療して行動改善が得られたという2007年の報告以来、DBSの研究は意識障害患者46例を対象とした報告を含めて7報しかなく、症例数の少なさや対照群設定の不備などもあり、一貫した結果は得られていない。

421例のデータを後ろ向きに解析

 Yang氏らは、2011年7月15日~12月31日に、中国のPeople's Liberation Army General HospitalとBeijing Tiantan Hospitalに意識障害で入院した連続421例のデータを後ろ向きに解析した。

 登録基準は①JFK Coma Recovery Scale-Revised (CRS-R)による意識障害の診断、②意識障害の期間が3カ月超、③家族または代理人によるインフォームド・コンセントへの同意―とし、神経学的機能の緩徐な低下の後に生じた突然の意識障害や、意識の改善/悪化が4週間以上進行している患者は除外した。

 主要評価項目は、退院後1年時の意識状態の改善。副次評価項目は、退院後6カ月時の意識状態の改善、無意識状態からの回復。退院後6カ月と1年後にフォローアップ診察を実施し、Glasgow Outcome Scale(GOS)スコアとCRS-Rスコアを記録した。

退院1年後の意識状態を有意に改善

 最終的に365例を解析対象とした。そのうち37例(10.1%)がDBSを受け、328例(89.9%)は保存的治療を受けていた。退院後1年で、DBS群の12例(32.4%)、保存的治療群の14例(4.3%)で意識状態の改善が認められた〔調整後オッズ比(aOR)11.90、95%CI 3.65~38.46、P<0.001〕。

 意識状態(MCS vs. VS/UWS)別に効果の違いを見たところ、DBSはVS/UWSの患者と比べMCSの患者でより効果が高いことが判明した(交互作用のP<0.001)。

 また、MCS患者ではDBSにより、CRS-Rの6つのサブスケール(聴覚機能、視覚機能、運動機能、言語・口腔機能、意思疎通、覚醒)全てが有意に改善した。一方、VS/UWS患者ではDBSで改善したのは、主として意思疎通と覚醒だった。

効果を予測するノモグラムにも期待

 意識障害が改善した患者(26例)と非改善/死亡の患者(339例)における入院時の意識障害期間を見ると、12カ月以上続いていた割合は改善群の38.5%(10例)に対し、非改善/死亡群では68.7%(233例)と有意に多かった(P=0.006)。

 さらにYang氏らは、年齢、意識状態、病因、意識障害期間といった潜在的な関連因子を基に、DBSへの治療効果を予測するノモグラムを作成。優れた予測能が示された(C統計量=0.882)。

 同氏らは「コホート解析において、DBSは意識状態の改善と関連が認められた。今回の結果は、DBSが意識障害患者の意識改善において有望な治療法であることを示唆するものである」と結論している。

木本 治

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