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化学療法の心毒性に有効な心保護薬は?

RCT 33件のメタ解析

2023年03月29日 16:54

352名の医師が参考になったと回答 

 米・University at BuffaloのAli Mir氏らは、化学療法に関連して生じる心障害(心毒性)に対する心保護薬の効果を検討したランダム化比較試験(RCT)33件・3,285例のネットワークメタ解析を実施。薬剤のクラス別では、スタチン系薬、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)、ACE阻害薬、β遮断薬が有効性を示した一方で、アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)の有効性は認められなかったと、Cardio-oncology2023年; 9: 10)に発表した。薬剤別の解析では、アルドステロン受容体拮抗作用を持つMRAスピロノラクトンが左室駆出率(LVEF)やトロポニンIの改善効果が最も高く、B型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)の改善度はACE阻害薬エナラプリルに次いで高かった。

LVEF改善、クラス別ではスタチンが有用

 既報では、一般的な心保護薬の使用が化学療法による心毒性を軽減する可能性が示されているが、サンプルサイズが小さく結果が一貫していなかった。

 そこでMir氏らは、医学データベースPubMed、Cochrane library、Scopus、Web of Scienceに2022年1月まで掲載された論文を検索。化学療法による心毒性が認められる患者を対象にLVEF、BNP、トロポニンI、症候性心不全に対するスタチン系薬、MRA、ACE阻害薬、ARB、β遮断薬の効果を検討したRCT 33件・3,285例を抽出してネットワークメタ解析に組み入れた。

 解析の結果、LVEFの改善度が最も高かったのは、薬剤別ではスピロノラクトン〔対照群との平均差(MD)12.80、95%CI 7.90~17.70〕、次いでエナラプリル(同7.62、5.31~9.94)、β遮断薬のnebivolol(同7.30、2.39~12.21)、スタチン(同6.72、3.58~9.85)の順だった。薬剤クラス別では、スタチン系薬(MD 6.72、95%CI 3.36~10.08)、MRA(同6.58、2.58~10.58)、ACE阻害薬(同5.36、3.71~7.01)、β遮断薬(同3.05、1.73~4.38)の順だった。ただし、薬剤別(P<0.0001、I2=98.1%)、薬剤クラス別(P<0.001、I2=98.3%)のいずれも研究間の異質性が高かった。

ARBは有意な効果示せず

 BNPの改善度が最も高かったのは、薬剤別ではエナラプリル(MD -49.00、95%CI -68.89~-29.11)、次いでスピロノラクトン(同-16.00、-23.9~-8.10)だった。薬剤クラス別ではACE阻害薬(同-37.67、-56.81~-18.53)、MRA(同-16.00、-30.92~-1.08)の順だった。

 トロポニンIの有意な改善が認められたのは、薬剤別ではスピロノラクトン(MD -0.01、95%CI -0.02~-0.01)、薬剤クラス別ではMRA(同-0.01、-0.02~-0.01)とβ遮断薬(同-0.02、-0.02~-0.01)だった。

 症候性心不全のリスクが対照群に対し最も低かった薬剤はエナラプリル(リスク比0.05、95%CI 0.00~0.75)だった。一方、薬剤クラス間では有意差がなかった。

 以上の結果から、Mir氏らは「薬剤別ではスピロノラクトン、薬剤クラス別ではスタチン系薬が最も高いLVEF改善効果を示した一方で、ARBは化学療法による心毒性に対する有効性は認められなかった」と結論。「スピロノラクトンの有効性は、心筋損傷後の心臓リモデリングに対するアルドステロン受容体拮抗の有益な作用(抗線維化作用および抗酸化作用)により説明できる可能性がある。スタチン系薬も抗炎症作用および抗酸化作用を有し、心臓リモデリングを抑制する」と考察している。

(太田敦子)

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