腰椎手術が高齢者の多剤併用を改善
藤田医大が調査
2023年03月30日 11:17
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多剤併用(ポリファーマシー)は特に高齢者で問題視されていることから、藤田医科大学整形外科学講座教授の藤田順之氏らは、高齢の腰部脊柱管狭窄症(LSS)患者の腰椎手術前後における処方薬について調べた結果、術後は多剤併用患者の割合が減少していたことをBMC Geriatr(2023; 23: 169)に報告した。
約100例の術後半年と1年の処方状況を比較
明確な定義はないものの、1日当たり5〜6種の薬剤の処方が多剤併用とされるケースが多い。多剤併用は不適切処方の可能性に加え、高齢者では転倒などの有害事象や飲み間違えのリスクもあり、問題視されている。また、高齢のLSS患者では複数の鎮痛薬が処方されるなど、多剤併用患者の割合が多いと想定されるが、その実態は明らかでないという。
そこで藤田氏らは、2020年4月〜21年3月に同大学病院で腰椎手術を受けた65歳以上のLSS患者132例のうち、術後6カ月および12カ月時に外来受診をした102例を対象に、処方状況を調査、比較した。処方医は術前術後で同一であり、患者が同調査の対象であることは知らない。
主な患者背景は平均年齢が75.5歳、男性が56例、平均BMIが23.8、既往歴は糖尿病が31例、高血圧が65例、脂質異常症が56例、心血管疾患が34例、脳血管疾患が11例、がんが18例で、手術は除圧が59例、除圧と固定術の併用が43例だった。また、1日当たりの処方薬が6種以上を多剤併用と定義したところ、68例(66.7%)が多剤併用に該当し、10種以上が30.4%を占めた。
鎮痛薬と消化器疾患治療薬が有意に減少
術前および術後6カ月と12カ月時の処方状況を比較したところ、術前に比べ多剤併用患者の割合は術後6カ月時が57.8%、1年時が55.9%と有意な減少傾向が示された(P=0.007)。減薬について見たところ3種以上が25.5%、1〜2種が21.6%だったが、増薬された患者も26.5%いた。薬剤の種類別では、鎮痛薬と併用して処方される消化器疾患治療薬で有意な減少が認められた(ともにP<0.01)。
以上から、藤田氏らは「高齢LSS患者では多剤併用の割合が多かったものの、腰椎手術による減薬効果が示唆された」と結論。「特に高齢LSS患者においては、適切なタイミングで手術を受けた方が良い」とコメントしている。
(編集部)