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経口TKIが抗認知症薬として浮上

既存の抗認知症薬に上乗せ

2023年04月04日 16:20

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 フランス・Sorbonne UniversityのBruno Dubois氏らは、probableアルツハイマー病(AD)で軽度~中等度の認知機能低下を有すると診断され、コリンエステラーゼ阻害薬(ChEI)またはNMDA受容体拮抗薬メマンチンの治療を最低6カ月間受けている患者を対象に、経口チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)masitinibの上乗せ効果を検証する国際第Ⅲ相多施設共同プラセボ対照二重盲検ランダム化比較試験AB09004を実施。プラセボと比べmasitinib上乗せで認知機能が有意に改善したとAlzheimers Res Ther2023; 15: 39)に発表した。同氏らは「AD患者に対するTKIの有効性を初めて示した第Ⅲ相試験」としている。

用量固定アームと漸増アームで検討

 masitinibはマスト細胞およびミクログリア/マクロファージの活性阻害により神経変性疾患において神経保護作用を示し、小規模の第Ⅱ相試験では軽度~中等度ADの進行を遅延することが示されていた。

 AB09004試験では、probable ADの臨床診断基準に合致し、ベースラインのMini-Mental State Examination(MMSE)スコアが12~25点(軽度~中等度の認知症に相当)で6カ月以上ChEI/メマンチンまたは両薬による標準治療を受けていた50歳以上の患者を登録。①用量固定アーム:370例(年齢中央値73歳)をmasitinib 4.5mg/kg/日またはプラセボを投与する群に1:1でランダムに割り付け、②用量漸増アーム:278例(同72歳)をmasitinibまたはプラセボを初期用量4.5mg/kg/日で12週間投与後6.0mg/kg/日まで漸増する群に2:1でランダムに割り付けーそれぞれ標準治療に上乗せして24週間投与した。

 主要評価項目は、ADの認知機能の評価尺度(Alzheimer's Disease Assessment Scale-cognitive subscale;ADAS-cog)スコア(範囲0~70、高スコアほど認知機能が低下)および日常生活機能の評価尺度(Alzheimer's Disease Cooperative Study Activities of Daily Living Inventory scale;ADCS-ADL)スコア(範囲0~78、低スコアほど日常生活機能が低下)の24週時におけるベースラインからの変化量とした。

4.5mg/kg/日の24週間投与で日常生活機能も改善傾向

 解析の結果、用量固定アームではADAS-cogスコアの変化量はプラセボ群の0.69(機能低下が促進)に対しmasitinib 4.5mg群で-1.46(機能が改善)と有意な認知機能低下の遅延効果が認められた(最小二乗平均差-2.15、97.5%CI -3.48~-0.81、P<0.001)。

 ADCS-ADLスコアに関しても、プラセボ群の-0.81(機能低下が促進)に対しmasitinib 4.5mg群で1.01(機能が改善)と、有意ではないものの日常生活機能の改善傾向が認められた(最小二乗平均差1.82、97.5%CI -0.15~3.79、P=0.038)。

 また、24週時の認知機能の改善率(臨床的奏効率)は、プラセボ群の13%に対しmasitinib 4.5mg群で22.5%と有意に高かった(オッズ比1.96、95%CI 1.11~3.46、P=0.020)。

 一方、用量漸増アームでは、ADAS-cogスコア(最小二乗平均差-0.43、97.5%CI -1.81~0.95、P=0.483)、ADCS-ADLスコア(同0.20、-1.64~2.04、P=0.807)のいずれもmasitinib 6.0mg漸増群とプラセボ群に有意差はなかった。

 masitinibの安全性プロファイルは既報と同等だった。治療下での有害事象の発現率は、masitinib 4.5mg群が87%、同6.0mg漸増群が86%、プールしたプラセボ群が77.5%だった。プールしたプラセボ群と比べてmasitinib群で最も多く見られた非致死性の重篤な有害事象は、好中球減少症(4.5mg群/6.0mg漸増群各3例)、肺炎(4.5mg群3例)、Stevens-Johnson症候群(6.0mg漸増群3例)だった(全て1.6%)。

 以上の知見を踏まえ、Dubois氏らは「ChEIまたはメマンチンによる標準治療へのmasitinib 4.5mg/kg/日の24週間投与の上乗せは、軽度~中等度AD患者における認知機能低下を有意に遅延し、安全性プロファイルも許容できるものだった」と結論。「masitinibの治療標的から見て、今回の結果はマスト細胞およびミクログリア/マクロファージが軽度~中等度ADの病態生理に関与している可能性を示唆するものだ」と付言している。

(太田敦子)

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