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HPV自己検診は未受診者への対策に寄与

2023年04月05日 17:21

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イメージ画像 © Adobe Stock ※画像はイメージです

 札幌医科大学産婦人科学講座の西村庸子氏らは、来院による子宮頸がん検診未受診者への対策として、尿分泌物または尿の自己採取によるヒトパピローマウイルス(HPV)検診(HPV自己検診)の有効性を検証した。その結果、HPV自己検診により子宮頸がんや子宮頸部異形成が発見された患者に治療を行うことができ、有効性が示されたとBMC Public Health2023; 23: 473)に報告した(関連記事「生理用ナプキンで子宮頸がん検診?!」)。

検診受診率は40%と低く、罹患率上昇の一因

 世界保健機関(WHO)は、子宮頸がん患者を減少させるためには、2030年までに①女性の90%が15歳までにHPVワクチン接種を完了すべき、②女性の70%が35歳までに精密検査を行い、さらに45歳までに再検査を受けるべき、③子宮頸がんや前がん病変を有すると特定された女性の90%が治療を受けるべきーとの目標を示している。しかし、日本における子宮頸がん検診受診率は約40%と低く、経済協力開発機構(OECD)加盟国において受診率は最低区分に位置している。

 こうした中、HPV自己検診は子宮頸がん検診未受診者への対策として海外ではオランダやオーストラリアなどで採用されており、奏功している。そこで西村氏らは、HPV自己検診の有効性を検証することを目的に、2020年12月〜22年9月に北海道室蘭市で研究を実施した。

 室蘭市内には婦人科外来を開設している総合病院が3つしかなく、室蘭市外在住者が他市の婦人科を受診するには1時間以上かかること、定期検診でHPV陽性と判定されたほぼ全員がこれらの婦人科外来を受診しており、正確な受診率の把握やフォローアップが可能であることが選定理由となった。

 対象は、過去5年間に子宮頸がん検診の受診歴がない20~50歳の7,653例。HPV自己検診に関する情報を郵送し、希望した1,674例(22.1%)に検査キットを送付した。そのうち返送された952例(58.6%)の検体を検査した。

 主要評価項目は、HPV自己検診陽性例のうち、病院を受診して子宮頸がん検診を受けた者の割合とした。副次評価項目は、病院で子宮頸がん検診を受けた者のうち、子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)以上と診断された者の割合とした。

HPV自己検診の陽性率は9.3%

 解析の結果、HPV自己検診を行った952例中、陽性例は89例(陽性率9.3%)であった。そのうち71例(79.8%、平均年齢±標準偏差36.3±8.7歳)が指定病院を受診し、精密検査を受けた。71例のうちCIN2以上と診断されたのは13例(18.3%、同41.8±7.0歳)で、内訳は子宮頸がんと外陰がんが各1例、CIN3が8例、CIN2が3例だった。

 71例を平均8.6ヶ月追跡した結果、子宮頸がんおよび外陰がんと診断された2例は根治手術を受け、CIN3と診断された8例中3例が子宮全摘術、5例が子宮頸部円錐切除術を受けた。CIN2と診断された3例中1例は、その後の経過観察でCIN3と診断され子宮頸部円錐切除術を受けた。

 以上から、室蘭市の一般住民を対象とした今回の研究では、HPV自己検診を紹介された者の12.6%が検査を受け、そのうち1.4%が子宮頸がんや前がん病変の手術を受けた。

 これらの結果について、西村氏は「検診受診率が低く、子宮頸がんが増加傾向にある日本において、HPV自己検診が今後有効な方法となる可能性が示唆された。さらに、HPV陽性者に対するフォローアップ検査の重要性も示されている」と結論している。

(今手麻衣)

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