小児皮膚疾患に植物療法が有効か

スイス・システマチックレビュー

2023年04月07日 05:00

　スイス・University of BernのEvelyne Kloter氏らは、小児～青少年における皮膚障害の補完代替医療（complementary and alternative medicine ；CAM）として使用が増加している植物療法（フィトセラピー）の有効性を検討したシステマチックレビューの結果をComplement Ther Med（2023; 74: 102942）に報告。月見草オイルがアトピー性皮膚炎に有効な可能性があることなどを紹介している。

「自然で安全」という理由で好む親が多い

　小児や青少年の皮膚障害はめずらしいものではなく、3歳以下の小児のアトピー性皮膚炎とおむつ皮膚炎（おむつかぶれ）の有病率はそれぞれは20％、25％とされている。局所ステロイドなど従来の治療薬はさまざまな副作用があるため、長期使用は推奨されていない。

　一方、CAMについては、50％以上の親が「自然で安全」という理由から、既存の薬物療法より薬草療法（ハーブセラピー）や植物療法を好むとの研究もある（Complement Ther Med 2013; 21 Suppl 1: S34-S47）。

　Kloter氏らは‟phytotherapy"、‟skin disorders"、‟injuries"、‟herbal medicine"、‟wound healing"といった語を用いてPubMed、EMBASE、CINAHLに2020年7月27日までに登録された英語およびドイツ語の論文を検索。レビュー論文、メタ解析、5例未満の症例集積研究を除外し、最終的に17報を解析対象とした。

月見草オイルはアトピー性皮膚炎に有効

　17報のうち7報はアトピー性皮膚炎を対象としたものだった。0～17歳の計630例を対象とした試験がイタリア、スウェーデン、韓国、フランス、フィンランド、スペインで実施され、6報がランダム化比較試験（RCT）、1報が縦断観察研究だった。

　診断基準にHanifin ＆ Rajkaを用いていたのは1報だけで、残りの6報には診断基準の記載がなかった。

　5報は月見草オイル（evening primrose）のカプセル剤または軟膏、2報はカシス（blackcurrant）オイルとシダの一種ダイオウウラボシ（Polypodium leucotomos）の効果を検討したものだった。このうちBordoniらの報告では、プラセボ群と比べ標準治療に月見草オイルを4週間上乗せした群でアトピー性湿疹が有意に改善した（P＜0.01、Drugs Exp Clin Res 1988; 14: 291-297）。他の4報でも月見草オイルの有効性を示唆する結果が報告されていた。

ヒレハリソウは創傷治癒を促進

　おむつ皮膚炎を対象とした報告は3報で、0～3歳児計215例が対象。3報ともイランで実施された二重盲検RCTで、キンセンカ（calendula）、アロエ（aloe vera）、 カモミール（chamomile）の治療効果が検討された。いずれの試験でも安全性は確認されたが、対照薬（ベントナイト）を含む他の治療薬と比べて有意な効果は示されなかった。

　創傷治癒に関しては、ヒレハリソウ（comfrey）、 マンサク（hamamelis）、オリーブ（olive）、 オトギリソウ（hypericum）、インドセンダン（neem）、 ホワイトオーク（white oak）、 ミルラ／没薬（myrrh）の効果に関する研究が7報（11歳以下の小児計1,513例）あり、ヒレハリソウで小児の創傷治癒が早まることが報告されていた（Arzneimittelforschung 2012; 62: 285-289、Int J Pediatr Adolesc Med 2018; 5: 135-141 ）

安全な治療薬として検討可能

　最後にKloter氏らは「今回検討した17報のうちJadadスコアが3点以上だったのは9報のみであり、8報は研究の質が低かった」と指摘。「しかし、有害事象の報告はほとんどなかったので、月見草オイルとヒレハリソウに関しては、小児および青少年の皮膚障害に対する安全な治療薬として検討の余地がある」と結論している。アロエとカモミールに関しては、ポジティブな結果を示した試験はなかった。

（木本 治）