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アルツハイマー病、4割が誤診、見逃し2割

2023年04月11日 17:34

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イメージ画像 © Adobe Stock ※画像はイメージです

 新潟大学脳研究所遺伝子機能解析学分野の春日健作氏らの研究グループは、認知症患者から検査目的で採取した脳脊髄液を解析し、診断に最適化されたバイオマーカーの組み合わせを用いてリアルワールドにおけるアルツハイマー病の有病率を算出。日常診療でアルツハイマー病と診断された患者の4割弱は、生物学的にはアルツハイマー病以外の病態であったとNeurobiol Aging(2023; 127: 23-32)に報告した。一方、アルツハイマー病と診断されなかった患者の2割強は生物学的にアルツハイマー病と判断された。

「生物学的アルツハイマー病」と「アルツハイマー症候群」

 従来、軽度認知障害(MCI)などの症状に基づきアルツハイマー病と診断された患者の中には、アミロイドβ(Aβ)沈着、タウ蛋白質蓄積といったアルツハイマー病に特有の脳内病理を持たない患者が存在した。そのため、近年は脳内に病理変化が認められた患者を「生物学的アルツハイマー病」、それ以外を「アルツハイマー症候群(Alzheimer's clinical syndrome;ACS)」と区別することが提唱されている。

 これまで研究グループは、生物学的アルツハイマー病のバイオマーカーに関し、Aβ沈着マーカーとしてのAβ42、タウ蛋白質蓄積マーカーとしてのリン酸化タウ(p-tau)、神経変性マーカーとしての総タウ蛋白質(t-tau)の有用性を報告してきた。今回、さらに既報で有用性が報告されているAβ42/Aβ40比とニューロフィラメント軽鎖を加え、アルツハイマー病の診断に最適なバイオマーカーの組み合わせを検討し、国内のリアルワールドにおける有病率を初めて推算した。

バイオマーカーの有用性をリアルワールドで検証

 対象は、2013年10月~22年6月に新潟大学と関連施設において検査目的で脳脊髄液を採取した558例。臨床診断結果からACS群230例と非ACS群328例に分け、脳脊髄液中のAβ42、Aβ42/Aβ40比、p-tau、t-tau、ニューロフィラメント軽鎖の5項目を測定、比較解析した。

 その結果、Aβ沈着マーカー(Aβ42およびAβ42/Aβ40比)の臨床診断との一致率はACS群で87.4%、非ACS群で74.1%だった。非ACS群ではAβ42が異常値を示すものの、Aβ42/Aβ40比は正常である「見かけ上のAβ沈着」が23.8%に認められた。

 神経変性マーカー(t-tauおよびニューロフィラメント軽鎖)の臨床診断との一致率はACS群で40.4%、非ACS群で24.4%であり、両群ともt-tauに比べニューロフィラメント軽鎖が異常値を示す頻度が高かった。また、ACS群のうち生物学的アルツハイマー病と考えられた患者では、t-tauが40.5%、ニューロフィラメント軽鎖が83.1%の頻度で陽性を示した。

 さらにタウ蛋白質蓄積マーカー(p-tau)とAβ42/Aβ40比を組み合わせて検証したところ、ACS群のうち生物学的アルツハイマー病と考えられたのは64.3%であり、35.7%は臨床症状から誤診されていると考えられた。一方、非ACS群の24.4%で生物学的アルツハイマー病に特有の病理変化が認められた。

日常診療への活用を期待

 以上の結果を踏まえ、研究グループは「日常診療においてアルツハイマー病と診断された患者の4割弱は、脳脊髄液バイオマーカーの解析結果からアルツハイマー病以外が原因の病態であることが示された。また、Aβ沈着マーカーとしてはAβ単独よりもAβ42/Aβ40比が、神経変性マーカーとしてはt-tauよりもニューロフィラメント軽鎖が優れており、より精度の高いバイオマーカーとして、Aβ42/Aβ40比とニューロフィラメント軽鎖の組み合わせが推奨される」と結論。「脳脊髄液バイオマーカーを日常診療に活用することでMCIから認知症の原因が正確に診断でき、適切な治療につなげられると期待される」と展望している。

(栗原裕美)

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