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痒みと皮疹の改善で、QOLが広範囲に改善

ネモリズマブ国内第Ⅲ相臨床試験のpost hoc解析

2023年04月12日 16:15

351名の医師が参考になったと回答 

 病的な痒みは痛みよりも耐え難いと言われている。アトピー性皮膚炎(AD)で生じる強い痒みは患者のQOLを低下させ掻破行動にもつながり、治療に難渋する医師は多い。2022年、瘙痒を誘発するサイトカインIL-31を標的とした抗IL-31受容体A(IL-31RA)抗体ネモリズマブが登場した。京都大学皮膚科学教室教授の椛島健治氏らは、同薬の国内第Ⅲ相臨床試験のpost hoc解析により、睡眠や生活活動などの複数の患者報告アウトカム(PRO)指標においてQOLの改善が認められたことをDermatol Ther2023; 13: 997-1011)で報告した。

プラセボ対照16週+ネモリズマブ投与52週の計68週のデータを解析

 ネモリズマブ投与によりAD患者の睡眠や日常生活機能が改善することは示されていたが、QOLへの影響について詳細な検討は行われていなかった。そこで、椛島氏らは国内第Ⅲ相臨床試験データをpost hoc解析し、ネモリズマブ60mgの4週間ごとの投与に関して複数のPRO指標による評価を行った。ネモリズマブの国内第Ⅲ相試験は、既存治療の実施下で中等度以上の瘙痒を有する13歳以上の日本人AD患者215例を対象とし、プラセボ対照期間(16週)と、全例にネモリズマブを投与した期間(52週)の計68週で行われた。

 解析に用いたPRO指標は、不眠や睡眠満足度の質問票ISI(Insomnia Severity Index)、直近1週間のQOLの低下度を評価する質問票DLQI (Dermatology Life Quality Index)、痒みや出血などADの自覚症状評価POEM(Patient-Oriented Eczema Measure)、ADによる労働生産性や日常生活活動に対する影響の調査票WPAI-AD(Work Productivity and Activity Impairment-Atopic Dermatitis)である。

睡眠、症状に対する自意識、労働生産性や日常生活活動など複数のQOLが改善

 痒みや皮疹はいずれも、投与開始16週後におけるベースラインからの平均変化率がプラセボ群に比べ、ネモリズマブ群で改善した。

 睡眠の問題はAD患者のQOLを大きく損なうとされるが、16週後の時点でネモリズマブ群では65.0%、プラセボ群では33.8%の症例が睡眠障害に該当しなかった。その他の項目である入眠困難、睡眠の維持、日常生活への支障、睡眠に対する心配においても、ネモリズマブ群ではプラセボ群と比べ有意に改善した(全てP<0.01)。ベースライン時では全例の約80%が睡眠に関する問題や心配ごとを訴えていたが、68週後には約半数が「問題はない」と回答した。

 QOLについて、ベースライン時には90%以上の症例がQOLに中等度〜重度の影響があると回答したが、ネモリズマブ群では16週後で50%、68週後には20%と低下した。DLQI評価におけるネモリズマブの効果発現は速く、投与開始1週後で改善が確認された症例もあった。個々の項目では症状に対する恥ずかしさや自意識、スポーツへの参加、買い物や家事におけるスコアが16週までに0となった症例が、プラセボ群に比べネモリズマブ群で有意に多かった(それぞれP<0.05、P<0.05、P<0.01)

 痒みや出血などのADにおける自覚症状の重症度を評価するPOEMでは、ネモリズマブ群の8割がベースライン時に重度または非常に重度の湿疹を有していたが、16週後に30.7%、68週後には15.9%と大きく減少した。DLQIと同様に、ネモリズマブ群におけるPOEMの改善も1週後から観察され、ネモリズマブ投与により自覚症状が速やかに改善することが示された。

 労働生産性と日常生活活動にはネモリズマブ投与により68週後まで持続的な改善が認められた。活動性の障害率を時間に換算すると、ベースライン時には週40時間の労働もしくは日常生活活動が20時間相当損失していたのが、68週後は8時間の損失にとどまったことになる。

 研究グループは今回の結果について「ネモリズマブの長期投与がコントロールの難しいAD患者の痒みと皮膚症状を改善し、睡眠、対人関係、社会・労働活動能力など多方面にわたってQOLを向上させることを示すもの」としている。

野田優子

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