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がん終末期、過ごす場所で生存期間に差なし

2023年04月26日 05:00

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イメージ画像 © Adobe Stock ※画像はイメージです

 がん患者のQuality of death(QOD、死の質)は、終末期を過ごす場所の影響を受けるとされる。しかし、過ごす場所や受ける治療・ケアが生存期間に及ぼす影響は明らかでない。筑波大学医学医療系講師の濵野淳氏らは、進行がん患者が終末期の治療・ケアを受けた場所〔自宅(自宅群)と緩和ケア病棟(緩和ケア病棟群)〕別に生存期間を検証した結果、自宅群でやや⻑かったものの、大きな違いはなかったとPLoS One2023 ; 18: e0284147)に発表した。

予後で日、週、月単位に層別化して比較

 濵野氏らが以前行った研究では、自宅群と緩和病棟ケア群の生存期間は、同等または自宅群で⻑い可能性が示されている(Cancer 2016; 122: 1453-1460)。

 今回の対象は、在宅医療を提供している国内45医療機関で2017年7~12月に訪問診療を受けた進行がん患者1,890例と、2017年1~12月の期間に国内23医療機関で緩和ケア病棟に入院した進行がん患者988例。死亡日が不明な者は除外した。modified Prognosis in Palliative Care Study predictor model A(PiPS-A)で評価した客観的な予後予測指標に基づき、生命予後が日単位(0~13日)、週単位(14~55日)、月単位(55日超)の3群に層別化し、各群において自宅群と緩和ケア病棟群の生存日数を比較した。

 その結果、予後が月単位と見込まれる患者の生存期間は、緩和ケア病棟群の32日(95%CI 28.9〜35.4日)に対し自宅群では65日(同58.2~73.2日)と有意に⻑かった(P<0.001、図1)。

図1. 予後が月単位と見込まれる患者の生存曲線(横軸:生存日数、縦軸:生存率)

fig_01_de_765_400pix.png

 さらに予後が週単位と見込まれる患者においても、生存期間は緩和ケア病棟群の22日(95%CI 20.3〜22.9日)に対し自宅群は32日(同28.9〜35.4日間)と有意に⻑かった(P<0.001、図2)。

図2. 予後が週単位と見込まれる患者の生存曲線

fig_02_de_765_400pix.png

(図1、2とも筑波大学プレスリリースより)

 予後が日単位と見込まれる患者の生存期間は、緩和ケア病棟群が9日(95%CI 8.3〜10.4日)、自宅群が10日(同8.1〜11.8日)と、有意差は認められなかった(P=0.157)。また、Cox比例ハザードモデルで患者背景、症状、受けた治療・ケアなどを調整した解析では、自宅群で有意に生存期間が⻑かった(ハザード比0.82、95%CI 0.71~0.95、P=0.007)。

 以上を踏まえ、濵野氏は「終末期の治療・ケアを自宅で受けた進行がん患者では、緩和ケア病棟で受けた患者よりも生存期間が長かった。ただし、生命予後が日単位と見込まれる患者では有意差が認められないなど、両群に大きな違いはなかった。また症状、受けた治療・ケアの経時的な生存期間への影響や、両群の背景因子が異なる可能性などは検討していない点、ランダム化比較試験ではないため生存期間に影響しうる交絡因子の存在を考慮していない点には留意する必要がある」と結論。その上で「自宅の方が⻑生きできるとは言い切れないが、終末期を自宅で過ごすことで生存期間の短縮を危惧する医師、患者および家族に対し、その可能性は低いと説明する一助となる知見だ」と付言している。

(小野寺尊允)

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