糖尿病足潰瘍にエスモロール外用が有効

2023年05月19日 17:55

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　インド・Post graduate Institute of Medical Education and ResearchのAshu Rastogi氏らは、糖尿病足潰瘍（DFU）に対する標準治療とエスモロール外用薬併用の有効性および安全性を検証する第Ⅲ相多施設共同二重盲検プラセボ対照ランダム化比較試験（RCT）を実施。標準治療単独と比べ、標準治療＋エスモロールの併用で12週間の創閉鎖達成率が良好だったとJAMA Netw Open（2023; 6: e2311509）に報告した。

グレードIAおよびICの非感染性全層DFU患者176例が対象

　現在、日本では短時間作用型β₁遮断薬エスモロールの静注製剤が手術時の上室性頻脈性不整脈に対する緊急処置を適応として用いられているが、DFUの適応はない。一方、エスモロール外用薬（ゲル剤）は創傷治癒のメカニズムを再活性化する作用があるとされ、DFUに対する効果が期待されている。

　DFUに対する外用エスモロールの有効性と安全性を評価した第Ⅰ／Ⅱ相試験では、プラセボ群と比べてエスモロール 14％ゲルと標準治療の併用群で潰瘍面積縮小（80.7％ vs. 86.6％）、潰瘍体積縮小（84.6％ vs. 99.4%）、早期閉創（53.5日 vs. 49.5日）が示された。

　Rastogi氏らは今回、DFUに対する外用エスモロールの有効性と安全性を検証するため、2018年12月26日〜20年8月19日にインドの27施設で第Ⅲ相RCTを実施した。対象は、18〜75歳の1型または2型糖尿病でグレードIAおよびIC（テキサス大学分類）の非感染性全層DFUを呈する患者176例（男性69.3％、平均年齢56.4±9.0歳、平均HbA1c値8.6±1.6%、平均潰瘍面積4.7±2.9cm²）。潰瘍面積が2～15cm²（脱脂後）、スクリーニング時に6週間以上開創した患者を組み入れた。

　対象を、エスモロール14％ゲル＋標準治療併用群、標準治療単独群、プラセボ（vehicle）＋標準治療群に3：3：1でランダムに割り付け、1日2回治療を行った。試験期間は、①スクリーニング期：初回訪問からベースラインまでの1週間（7～10日）、②治療期：ベースラインから最大12週間（84±3日）、③観察期：12週間（84±5日）―の計25週間とし、スクリーニング期には標準治療を行い、潰瘍面積が30％以上縮小した患者は除外した。

　主要評価項目は、エスモロール併用群と標準治療単独群における治療期に創閉鎖を達成した患者の割合とした。副次評価項目は、両群における試験終了（24週間）までに創閉鎖を達成した患者の割合、および治療期の創閉鎖までの期間とした。安全性の評価は3群で行った。

併用群で創閉鎖達成のオッズ比2.13

　有効性の解析対象は140例。治療期に創閉鎖を達成した患者の割合は、標準治療単独群と比べエスモロール併用群で有意に多かった〔41.7％ vs. 60.3％、オッズ比（OR）2.13、95%CI 1.08〜4.17、P＝0.03〕。

　試験を完遂した120例の解析においても、試験終了までに創閉鎖を達成した患者の割合は、標準治療単独群と比べエスモロール併用群で有意に多かった（55.6％ vs. 77.2％、OR 2.71、95% CI 1.22〜5.99、P＝0.01）。

　Kaplan-Meier解析による創閉鎖までの期間の中央値は、エスモロール併用群では85日と、少なくとも50％の患者が治療開始から約12週間で創閉鎖を達成した。一方、標準治療単独群では創閉鎖達成率が41.7%にとどまり、中央値は推定不能であった。

　サブグループ解析の結果、潰瘍のサイズ（5cm²未満／以上）、部位（足底／非足底）にかかわらずエスモロール併用群と創閉鎖達成との有意な関連が示された。また、エスモロール併用群における創閉鎖達成と有意に関連する因子として体重80kg以上（OR 4.04、95%CI 1.07〜15.27、P＝0.04）、BMI 25以上（同2.72、1.08〜6.79、P＝0.03）といったDFU治癒を妨げる要因の保有が抽出された。

　有害事象は全体で33例63件に発生したが、そのうち55件（87.3％）は試験薬との関連がないと判定された。

　以上から、Rastogi氏らは「DFUの治療において、エスモロールを標準治療に加えることは有効である可能性が示唆された」と結論している。

（今手麻衣）