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大うつ病性障害へのケタミン、ECTに非劣性

非盲検前向きELEK-D試験

2023年05月30日 18:02

256名の医師が参考になったと回答 

イメージ画像 © Adobe Stock ※画像はイメージです

 米・Brigham and Women's HospitalのAmit Anand氏らは、難治性大うつ病性障害(MDD)に対するケタミン静注療法の効果を電気痙攣療法(ECT)と比較する非盲検前向きランダム化比較試験ELEKT-Dの結果をN Engl J Med2023年5月24日オンライン版)に発表。「精神病性の特徴を伴わない難治性MDD治療として、ケタミンはECTに対し非劣性であった」と報告した。

3週間の治療効果を簡易抑うつ症状尺度で評価

 難治性MDDに対し即効性のある治療法として80年近い歴史を有するECTは、治療技術の進歩もあり現在では外来での施行も可能となっている。しかし、認知機能に対する有害事象やスティグマへの懸念から十分利用されていない。

 一方、N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体阻害作用を持つケタミンは、麻酔薬としての利用以外に、麻酔域下用量でMDDの症状を速やかに改善することが知られており、ECTの代替療法として期待されている。

 ELEKT-Dは米国の都市病院や大学病院など5施設で実施された。2017年3月~22年9月に紹介受診した21~75歳の難治性MDD患者403例をケタミン群(200例)、ETC群(203例)にランダムに割り付けた。

 試験期間は3週間で、ケタミン群には2回/週(ケタミン0.5mg/kgを40分かけて静注投与)、ECT群には3回/週の治療を施行した。

 主要評価項目は16項目の自己記入式簡易抑うつ症状尺度(16-item Quick Inventory of Depressive Symptomatology-Self-Report;QIDS-SR-16、0~27点、高スコアほど症状が重い)で評価した最終治療日の反応。QIDS-SR-16スコアのベースラインからの50%以上の低下を反応(response)とし、非劣性マージンは-10%に設定した。
 副次評価項目は、医師の判定によるMontgomery-Åsbergうつ病評価尺度(MADRS)における反応(50%以上の改善)。QIDS-SR-16の寛解(5点以下)、MADRSの寛解(10点以下)などを評価した。

  3週間の治療終了時点で反応が見られた患者を、その後6カ月間追跡した。

反応割合はケタミン群の方が14.2%多い

 ベースラインのケタミン群とECT群の患者背景は、平均年齢45.6歳 vs. 47.1歳、女性53.0% vs. 49.3%、大うつ病エピソード初発年齢19.7歳 vs. 19.4歳、うつ病重症度(MADRSスコア)32.3 vs. 32.6などと差がなかった。併存疾患は全般性不安障害(GAD)が56.5% vs. 55.7%と最も多かった。

 治療開始前に38例が脱落。最終的に195例がケタミン治療を、170例がECTを受けた。ケタミン群の108例(55.4%)、ECT群の70例(41.2%)でQIDS-SR-16による反応が認められた(反応割合の差14.2%、95%CI 3.9~24.2%、非劣性のP<0.001)。多重代入法を用いた感度分析の結果も、主解析と一貫していた。

 MADRSによる反応はケタミン群の99例(50.8%)、ECT群の70例(41.1%)に見られた(反応割合の差9.3%、95%CI -0.9~19.4%)。

 両治療の認知機能への影響を検討するため、改訂版ホプキンス言語学習テスト(範囲-300~200、高スコアほど認知機能が優れる)による遅延想起のTスコアを比較したところ、ケタミン群の-0.9±1.1に対し、ECT群では-9.7±1.2と、低下傾向が見られた(差8.8ポイント、95%CI 5.7~11.9ポイント)。

 患者報告によるQOLの改善に両群で差はなかったが、ECT群には筋骨格系の有害事象発現率が高く(5.3% vs 0.5%)、ケタミン群ではClinician-Administered Dissociative States Scale(CADSS)で評価した解離性症状スコアが高かった。

従来の結果と異なるのは、nonpsychotic例に限定したためか

 ケタミンとECTをめぐっては、これまでECTの方が有効だとする報告が多く(関連記事「大うつ病性障害、ケタミンより電気痙攣療法が有効」、「ケタミンは画期的な抗うつ薬となるか?」)、Anand氏らもこの点について考察で言及。欧州で実施され、ECTに対するケタミンの非劣性が示されなかったketECT試験も紹介している(Int J Neuropsychopharmacol 2022 ;25 :339-349)。

 今回異なる結果が示された理由として、同氏らは①ELEKT-Dは、精神病性の特徴を伴わない(nonsychotic)MDD患者を対象としている、②サンプルサイズが従来の試験よりも大きい、③89%が外来の患者であったーことを指摘。「非盲検でプラセボの設定がない点については試験の限界ではあるが、逆にこの試験デザインは日常診療の設定に近く、強みともいえる」と述べている。

木本 治

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