1日1杯の加糖飲料で閉経後の肝がん増加

WHIデータを用いた前向きコホート研究

2023年08月16日 11:10

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　2017〜18年の米国のデータによると、成人の65%以上が加糖飲料を毎日飲んでいる。University of South CarolinaのLonggang Zhao氏らは、閉経後女性を対象に加糖飲料や人工甘味料入り飲料の摂取と肝疾患との関連を検討。閉経後女性では、加糖飲料の摂取量が1カ月当たり3杯以下の集団と比べ、1日1杯以上の集団で肝がんの発症および慢性肝疾患〔非アルコール性脂肪性肝疾患（NAFLD）、肝線維症、肝硬変、アルコール性肝疾患、慢性肝炎〕による死亡のリスクが上昇するとJAMA（2023; 330: 537-546）に報告した。

1日1杯以上群は、加糖飲料で6.8%、人工甘味料入り飲料で13.1％

　対象は、1993～98年に米国の医療機関40施設でWomen's Health Initiative（WHI）に登録し、2020年3月1日まで追跡した50～79歳の閉経後女性。加糖飲料を摂取している9万8,786人と人工甘味料入り飲料を摂取している6万4,787人を組み入れ、摂取量で「月に3杯以下」「週に1～6杯」「1日1杯以上」の各3群に分けた。

　検討の結果、追跡期間の中央値は20.9年だった。ベースライン時における1日1杯以上群は、加糖飲料で6.8%、人工甘味料入り飲料で13.1%だった。

　追跡期間中に、加糖飲料を摂取していた女性のうち207人が肝がんを発症し、148人が慢性肝疾患で死亡した。人工甘味料入り飲料を摂取していた女性では、それぞれ133人、74人だった。

加糖飲料の肝がんリスクは1.85倍、慢性肝疾患死リスクは1.68倍

　加糖飲料摂取女性における肝がんの発症率は、摂取量が月に3杯以下の群で10万人・年当たり10.3件、1日1杯以上の群で同18.0件（傾向のP＝0.02）。登録時の年齢、総エネルギー摂取量、人種と民族、教育歴、喫煙状況、飲酒状況、BMI、身体活動量、非ステロイド抗炎症薬（NSAID）の使用歴、がん家族歴、経口避妊薬の使用歴、閉経後ホルモン療法の有無、糖尿病の既往を調整後に解析したところ、月3杯以下群に比べ1日1杯以上群では、肝がんの発症率が有意に高かった〔調整ハザード比（aHR）1.85、95%CI 1.16～2.96、P＝0.01〕。

　また、慢性肝疾患による死亡率についても、加糖飲料の摂取量が月3杯以下群で10万人・年当たり7.1件、1日1杯以上群で同17.7件（傾向のP＜0.001）。多変量解析の結果、月3杯以下群に比べ1日1杯以上群では、慢性肝疾患による死亡率が有意に高かった（aHR 1.68、95%CI 1.03～2.75、P＝0.04）。

人工甘味料入り飲料では有意差なしだが、さらなる研究が必要

　一方、人工甘味料入り飲料摂取女性における肝がんの発症率は、摂取量が月3杯以下群では10万人・年当たり10.2件、1日1杯以上群では同11.8件（傾向のP＝0.70）で、両群に有意差はなかった（aHR 1.17、95%CI 0.70～1.94、P＝0.55）。

　また、慢性肝疾患による死亡率も、人工甘味料入り飲料の摂取量が月3杯以下群では10万人・年当たり5.3件、1日1杯以上群では同7.1件（傾向のP＝0.32）と両群に有意差はなかった（aHR 0.95、95%CI 0.49～1.84、P＝0.88）。

　Zhao氏らは、「加糖飲料の摂取量が1カ月当たり3杯以下の場合に比べ1日1杯以上の閉経後女性で、肝がん発症および慢性肝疾患死のリスクが高まることが示された」と結論。「そのメカニズムを解明するには、さらなる研究が必要だ」との見解を示した。さらに、「人工甘味料とがん発症リスクに関するデータは一貫していない。近年、さまざまな人工甘味料が登場していることを考慮すると、人工甘味料と肝がん発症リスクとの関連を評価するための研究も重要だ」と付言している。

（菅野　守）