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モルヌピラビル、ワクチン接種例での有効性は?

オミクロン株感染者対象のランダム化比較試験

2023年01月17日 05:05

364名の医師が参考になったと回答 

 英・University of OxfordのChristopher C. Butler氏らは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチン接種済みで重症化リスクが高い新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者に対する抗ウイルス薬モルヌピラビルの有効性を2万5,000例超対象の多施設非盲検ランダム化比較試験PANORAMICで検討。その結果、標準治療例と比べてモルヌピラビル早期投与例では回復が早かったものの、全入院または全死亡のリスクは低下しなかったとLancet2022年12月22日オンライン版)に発表した。

全入院・全死亡率は両群1%

 同試験では、オミクロン株が優勢だった2021年12月8日~22年4月27日に、50歳以上(併存疾患を有する場合は18歳以上)でSARS-CoV-2感染陽性の確定診断後7日以内かつCOVID-19の症状を発現後5日以内の入院していない地域在住者2万5,783例を登録(平均年齢56.6歳、併存疾患あり69%、SARS-CoV-2ワクチンを少なくとも3回接種済み94%)。標準治療に加えモルヌピラビル800mgを1日2回5日間投与する群(1万2,821例)と標準治療を単独で行う群(1万2,962例)に1:1でランダムに割り付け、自己記入式のオンライン日誌を用いて28日間追跡した。

 ベースライン時の年齢、ワクチン接種、併存疾患を調整後のベイズロジスティック回帰モデルによる解析で、主要評価項目としたランダム化後28日以内の全入院または全死亡の発生率は、標準治療群の1%に対しモルヌピラビル群で1%と有意差がなかった〔調整後オッズ比1.06、95%確信区間(CrI)0.81~1.41、優越性の確率P=0.33〕。

モルヌピラビル群で回復が4.2日早く、受診回数が減少

 一方、モルヌピラビル群は標準治療群と比べて回復が早かった。回復期間(ランダム化後、患者が最初に「COVID-19から完全に回復したと感じられる」と回答した日まで)の中央値は、標準治療群の15日(四分位範囲7日~未到達)に対しモルヌピラビル群では9日(同5~23日)。調整後群間差は4.2日(95%CrI 3.8~4.6日)、ハザード比は1.36(95%CrI 1.32~1.40)だった(優越性の事後確率P>0.99)。

 また、標準治療群と比べてモルヌピラビル群では早期の持続的回復(14日目までに回復し28日目まで持続)の割合が多く、プライマリケアの受診回数が少なかった。

 SARS-CoV-2ウイルス量が測定可能だった患者の解析では、治療開始後7日目に検出限界以下となった割合が、標準治療群の39例中1例(3%)に対しモルヌピラビル群では34例中7例(21%)と有意に高かった(P=0.039)。

 以上の結果を踏まえ、Butler氏らは「これまでのモルヌピラビルの臨床試験では、オミクロン株が出現する前のワクチン未接種の患者が大半を占めていた。今回のオミクロン株が優勢だった期間に行った試験では、モルヌピラビルはSARS-CoV-2ワクチン接種済みの重症化リスクが高いCOVID-19患者の入院・死亡リスクを低下させなかった」と結論している。

 一方、「回復期間の短縮、プライマリケア受診の減少、ウイルス量の減少といったベネフィットは、COVID-19の流行、医療サービスへの負担、薬剤費、社会情勢、費用効果、機会費用の観点から検討する必要がある」と指摘し、「モルヌピラビルの長期有効性を検討するために患者の追跡が続けられており、詳細なウイルス学的解析や医療経済学的解析が進行中」としている。

(太田敦子)

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