メニューを開く 検索

トップ »  医療ニュース »  2023年 »  感染症 »  日本におけるコロナ無症状感染の動向を解明

日本におけるコロナ無症状感染の動向を解明

2023年01月18日 17:09

498名の医師が参考になったと回答 

イメージ画像 © Adobe Stock ※画像はイメージです

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のパンデミック初期、日本では十分なPCR検査体制が整備されておらず、クラスター対策として検査対象を有症状者と濃厚接触者などに限定したため、無症状感染の実態は明らかでなかった。自治医科大学臨床薬理学准教授の相澤健一氏らは、2021年2~12月に無症状の一般人口を対象に行われた大規模モニタリング検査のデータを用いて横断研究を実施。流行第四~五波におけるSARS-CoV-2の無症状感染および流行の動向を明らかにしたとJAMA Netw Open2022; 5: e2247704)に発表した(関連記事「新型コロナ、無症状感染者の割合は?」)。

唾液PCR検査を受けた108万例超を解析

 SARS-CoV-2の感染拡大を抑制するには、有症状者と濃厚接触者だけでなく、気付かないうちに他人を感染させてしまう無症状感染者への対策が不可欠である。しかしSARS-CoV-2パンデミック初期には、無症状者に対するPCR検査は陽性率(事前確率)が低く偽陽性者が続出するとの誤解や、PCR検査体制が整備されていないなどの理由から積極的な集団検査が控えられたため、無症状感染の実態は明らかでなかった。

 そこで相澤氏らは、政府が2021年2~12月に無症状の一般人口を対象に実施した「感染拡大の予兆の早期探知のためのモニタリング検査」のデータを解析。2021年3月第4週~9月第4週における無症状感染の実態を検討する横断研究を行った。

 モニタリング検査の対象地域は、第2回緊急事態宣言が発令された14都道府県(北海道、宮城県、栃木県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、岐阜県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県、福岡県、沖縄県)で、総人口の62.6%を占める。

 解析対象は、唾液によるPCR検査を受けた無症状者108万2,976例(男性52%、平均年齢39.4歳)。検体は、クラスター発生リスクが高いと考えられる事業所、工場、建設現場、駅、空港、繁華街、学校、幼稚園、学生寮などで採取した。陽性判定基準は、日本の標準であるCt値40とした(一部の施設は38)。

 研究期間はアルファ株が主流だった第四波(2021年4~6月中旬)、デルタ株が主流となった第五波(同年6月末~9月)に該当し、東京オリンピック・パラリンピック大会の会期が含まれる。SARS-CoV-2ワクチンは、2月の医療従事者対象の臨時接種を皮切りに、4月には高齢者や高リスク者への接種が、6月には職域接種が開始された。

 経時的解析および層別解析を実施し、無症状陽性率と新型コロナウイルス感染症(COVID-19)新規患者数やワクチン接種との関連、年齢層およびCt値別の無症状有病率などを検討した。

ウイルス量が多い無症状者の増加が感染拡大の契機か

 解析の結果、無症状陽性率はCOVID-19新規患者数と高い相関関係を示した。この相関は第四波で顕著で、第五波ではやや乖離が見られた(図1-上)。陽性率はワクチン未接種者で高く、接種回数が増えるほど低下したことから(図1-下)、第五波で流行の主体が感染力の強いデルタ株に移行したことやワクチン接種率の上昇に伴う感染者減少の影響が考えられた。

図1. 無症状陽性率と有症状患者数との相関(上)、ワクチン接種回数別に見た無症状陽性率(下)

40531_fig01.jpg

 研究期間中の無症状陽性率は、最小が第四波と第五波の間の感染収束期の0.03%(95%CI 0.02~0.05%)、最大が第五波の感染拡大期の0.33%(同0.25~0.43%)だった。陽性判定基準に英国などの標準であるCt値25を適用した場合、陽性率は8.3%と10分の1以下に低下することが示された。相澤氏らは「ロックダウンなどの強力な感染対策を行った欧米と比べ低い日本の陽性率には、高いマスク着用率などの文化的要因やワクチンプログラムの全国的な展開が寄与している可能性がある」と指摘。また、無症状陽性率に占める低Ct値の割合は感染の拡大に先行して増加し、収束に先行して減少していたことから、同氏らは「ウイルス量が多い無症状感染者の増加が感染拡大の契機となった可能性が示唆された」と考察している。

 年齢層別に見ると、第四波、第五波とも20歳未満や20歳代の若年層で無症状陽性率が高く、第五波では20歳未満が顕著に高かった(図2)。ワクチン接種の開始時期が遅かった若年層では接種率が低く、先述の通り接種率と陽性率には反比例の関係が見られたことから、ワクチン接種による無症状感染の抑制が示された。

図2. 年齢層別に見た無症状陽性率

40531_fig02.jpg

(図1、2とも自治医科大学プレスリリースより)

一般人口に対するPCR検査は有用

 以上を踏まえ、相澤氏は「大規模モニタリング検査データを用いた横断研究により、流行第四~五波における無症状感染の実態を明らかにした。一般人口を対象としたPCR検査は、市中感染の動向把握、感染地域における高リスク集団の同定、感染予防行動の指針として有用である」と結論。「感染症対策の基本として、クラスター対策に加え一般人口のモニタリング検査の活用が期待される」と付言している。

(小野寺尊允)

無料でいますぐ会員登録を行う

【医師限定】

初回登録で500円分のポイントをもれなく進呈!

(5月末迄/過去ご登録のある方を除く)

  • ・ ご利用無料、14.5万人の医師が利用
  • ・ 医学・医療の最新ニュースを毎日お届け
  • ・ ギフト券に交換可能なポイントプログラム
  • ・ 独自の特集・連載、学会レポートなど充実のコンテンツ

ワンクリックアンケート

円安水準を更新。円安で何を思う?

トップ »  医療ニュース »  2023年 »  感染症 »  日本におけるコロナ無症状感染の動向を解明