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コロナ感染動物の死体からウイルスが伝播

適切な処置で予防可能か

2023年01月25日 17:39

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イメージ画像 © Adobe Stock ※画像はイメージです

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染者が亡くなった場合については、接触感染防止処置、搬送、葬儀、火葬などに関するガイドラインが定められ、遺体との接触が制限されていた。しかし、死亡した感染者の遺体から周囲にウイルスが伝播するかは明らかでなかった。東京大学医科学研究所ウイルス感染部門特任教授の河岡義裕氏らは、SARS-CoV-2に感染したハムスターの死体から生体にウイルス伝播が生じることを確認。ただし、エンゼルケア処置や腐敗変化を防止する衛生保全処置であるエンバーミングを施すことで、ウイルス伝播を抑制できたとmSphere2023年1月10日オンライン版)に発表した。

感染ハムスターの死体または生体と24時間同居させて検討

 今年(2023年)1月6日に「新型コロナウイルス感染症により亡くなられた方及びその疑いがある方の処置、搬送、葬儀、火葬等に関するガイドライン」の改訂が発表されるまで、接触感染防止の観点から、SARS-CoV-2感染例または疑い例が亡くなった場合、遺体を納体袋に収容する、遺体への接触を避ける、通夜や葬儀の開催は可能な場合のみ検討しオンラインを推奨するなど、厳しい制限が課されていた。しかし、遺体からの感染リスクについては十分に検討されていない。

 そこで河岡氏らは、SARS-CoV-2/UT-NCGM02/human/2020(武漢株)の103 PFUに感染させた生後6カ月のハムスターと非感染ハムスターを用いて3件の動物実験を行い、死体からSARS-CoV-2が伝播しうるかを検証した。

 まず、SARS-CoV-2感染ハムスターの①生体1匹と非感染ハムスター2匹(2組)、②死体1匹と非感染ハムスター2匹(10組)-をケージに同居させた。24時間後に感染ハムスターをケージから取り出し、3日後に非感染ハムスターのウイルス量を測定した。

 その結果、感染生体と同居した非感染ハムスターは2組ともウイルス伝播が確認された(図-A)。一方、死体と同居させた場合は10組中3組でウイルス伝播が確認され、死体から生体に感染する可能性が示された(図-B)。

図. 感染ハムスターの生体または死体からのウイルス伝播

fig_765-309.png

(東京大学医科学研究所プレスリリースより)

 次に体液の流出などを阻止するエンゼルケア処置の有効性を確認するため、鼻腔、口腔、肛門の封鎖処置を施した感染ハムスターの死体1匹と非感染ハムスター2匹(10組)をケージに同居させ、同様に検討した。その結果、全10組でウイルスの伝播は認められなかった。

 さらに死体の血液を防腐効果がある薬液に入れ替えることで腐敗変化を防止するエンバーミング処置を施した感染ハムスターの死体1匹と、非感染ハムスター2匹(10組)を同居させて検討したところ、いずれもウイルスの伝播は認められなかった。

感染死体から生体への感染経路特定が課題

 以上を踏まえ、同氏らは「ハムスターを用いた実験により、SARS-CoV-2が死体から生体に伝播する可能性が示された。ただし、適切なエンゼルケア処置やエンバーミング処置を施すことで、ウイルス伝播を防ぐことができた。SARS-CoV-2感染遺体と接する際の感染防止策としては、腔部の封鎖処置やエンバーミング処置が有効であることが示唆された」と結論。その上で「今回の実験で示された感染死体から生体への感染経路を特定するには、さらなる研究が必要だ」と付言している。

※研究成果の一部は、2023年1月6日に改訂されたガイドラインにおけるエンゼルケア(死後処置)に活用されている

(小野寺尊允)

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