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症状負荷大きいほどSGLT2阻害薬の便益大

DELIVER試験の事前設定解析結果

2023年02月08日 18:00

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 米・University of Missouri-Kansas CityのMikhail N. Kosiborod氏らは、SGLT2阻害薬ダパグリフロジンの第Ⅲ相二重盲検ランダム化比較試験(RCT)DELIVERの事前に設定されたサブ解析(prespecified analysis)の結果をJ Am Coll Cardiol2023;81:460-473)に発表。左室駆出率(LVEF)が軽度に低下した心不全(HFmrEF)患者またはLVEFが保持された心不全(HFpEF)患者に対する同薬の効果は、ベースラインの症状負荷(symptom burden)が大きい症例ほど顕著だったと報告した。

ベースラインの症状負荷別に効果を解析

 DELIVER試験の主解析において、ダパグリフロジンがHFmrEFおよびHFpEF患者の心血管死や心不全増悪リスクを抑制することは、すでに報告されている(関連記事「ダパグリフロジン、駆出率にかかわらず有効」)。

 今回のサブ解析の目的は、①DELIVER試験で確認された臨床転帰に対するダパグリフロジンの効果がベースラインの症状負荷〔カンザスシティ心筋症質問票の総合症状スコア(KCCQ-TSS:0~100、低スコアほど高リスク)で評価〕によって異なるかどうか、②ダパグリフロジンがKCCQの各ドメインに対して広く効果を発揮するかどうか―を明らかにすること。

KCCQ-TSS低値例ほど複合主要評価項目の改善が大きい

 DELIVER試験では、症候性のHFmrEFまたはHFpEF患者6,263例をダパグリフロジン10mg群とプラセボ群に1:1で割り付けた。

 サブ解析ではベースラインのKCCQ-TSS(中央値72.9)で3群に層別化し〔63未満群(2,040例)、63~84群(1,955例)、84超群(1,800例)〕、複合主要評価項目〔心血管死または心不全増悪(心不全による入院/緊急受診)〕に対する効果を解析した。その結果、症状負荷が大きい患者ほどプラセボに対するダパグリフロジンのベネフィットが顕著であった〔KCCQ-TSS 63未満群(ハザード比 0.70、95%CI 0.58~0.84、P<0.001)、同63~84群(同0.81、0.65~1.01、P=0.06)、84超群(同1.07、0.83~1.37、P=0.62)、交互作用のP=0.026〕。

 心不全の増悪(交互作用のP=0.032)、心血管死および心不全イベントの総数(交互作用のP=0.046)でも同様の傾向が認められたが、心血管死に症状負荷による臨床ベネフィットの差は見られなかった。

KCCQの各ドメインも有意に改善

 次にKCCQ-TSSおよび各ドメインのスコア(平均値)の推移をプラセボ群と比較したところ、試験開始後8カ月時点のKCCQ-TSS(+2.4、95%CI +1.5~3.3)、身体制限スコア〔KCCQ-PLS(+1.4、同+0.9~3.0)、臨床要約スコア〔KCCQ-CSS(+2.3、同+1.5~3.2)〕、KCCQ総合要約スコア〔KCCQ-OSS (+2.1、同1.3~2.9)〕がいずれも有意に改善していた(全てP<0.001)。これらの改善は1カ月時点から観察され、経時的に改善幅は大きくなっていった。

事前設定された評価項目であり臨床的意義大きい

 Kosiborod氏らは「今回の結果は臨床的な意義が大きい」と述べ、その理由を次のように説明している。① ダパグリフロジンはKCCQの全てのドメインで改善を示したが、これは事前に設定された副次評価項目であり、階層的検定(hierarchical testing)に含まれている(EMPERO-PRESERVED試験やPARAGON-HF試験では、KCCQは事前設定された副次評価項目でなく、階層的検定にも含まれない)、②ダパグリフロジンの臨床ベネフィットはベースラインの症状負荷が大きい患者の方が顕著だった。症状負荷が大きい患者は臨床イベントの絶対リスクも大きいので、SGLT2阻害薬投与による絶対利益が大きくなることは予想されたが、症状負荷が大きい患者群の方が相対リスクの低下が大きいという知見は、他のSGLT2阻害薬の試験では観察されていない。

 研究の限界については、①KCCQスコアのデータが得られなかった患者が存在、②ランダム化割り付けから8カ月後までのデータであり、長期の治療効果は評価できていない、③大規模試験ではあるが、幾つかのサブグループのサンプルサイズは小さい、④登録/除外基準があるため極めて高リスクの患者は含まれていない可能性があり、試験結果を一般化するには不十分―としている。

木本 治

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