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日本の研修医の半数がコロナ治療経験なし

研修医5,976例の解析結果

2023年02月14日 17:00

407名の医師が参考になったと回答 

 順天堂大学医学教育研究室先任准教授の西﨑祐史氏らは、全国の研修医1年目(PGY-1)および2年目(PGY-2)の計6,000例弱を対象に、自己記入式の質問票を用いて新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者のケア経験とメンタルヘルスの関連を検討。その結果、約半数はCOVID-19患者ケアの経験がなく、ケアを担当したCOVID-19患者数が多い研修医ではバーンアウト(燃え尽き症候群)の有病率がやや高かったとBMJ Open2023; 13: e066348)に発表した。

COVID-19患者11例以上担当は7.9%

 対象は、COVID-19流行の第三波の期間に当たる2020年度末(2021年1月18~31日)に、全国583カ所の臨床研修病院で基本的臨床能力評価試験(GM-ITE)を受験したPGY-1およびPGY-2研修医5,976人(男性68.0%、PGY-1研修医50.9%)。

 2項目のPatient Health Questionnaire 2(PHQ-2)質問票を用いて抑うつ症状を評価し、医師の健康評価に関する10項目の質問票Mini-Z 2.0を用いて燃え尽き症候群、ストレス状態、仕事に対する満足度を評価した。

 解析の結果、全体の47.0%(2,807人)はCOVID-19患者のケア経験がなく、COVID-19の発生率が高かった地域に限定した場合でも経験のない研修医が38.1%に上った。ケアを担当したCOVID-19患者数が11例以上の経験豊富な研修医は全体の7.9%(471人)にすぎなかった。

 西﨑氏らは「研修医の労働力としての有用性よりも感染制御を重視し、研修医を最前線のケアから除外した病院が多かった可能性がある」と考察している。

メンタル不調の主因はPPE不足からくる不安

 各評価項目の有病率は、燃え尽き症候群が21.4%(1,277人)、抑うつ症状が29.4%(1,758人)、高ストレス状態が39.2%(2,342人)で、仕事に対する満足度が高いと回答した研修医は62.4%(3,731人)だった。

 ケアを担当したCOVID-19患者数と燃え尽き症候群の間には正の関連が認められた〔無経験群に対する経験豊富群における調整後有病率比(aPR)1.25、95%CI 1.02~1.53、P=0.03〕。一方、ケアを担当したCOVID-19患者数と抑うつ症状(aPR 1.11、95%CI 0.95~1.30、P=0.20)、高ストレス状態(同1.00、0.87~1.14、P=0.94)、高い仕事満足度(同1.08、0.99~1.16、P=0.05)との間には有意な関連が認められなかった。

 これらのメンタルヘルス不調の主な原因は、個人用防護具(PPE)の不足であることが示唆された。PPE充足群に対する不足群におけるaPRは燃え尽き症候群で1.60(95%CI 1.36~1.88)、抑うつ症状で1.35(同1.18~1.55)、高ストレス状態で1.27(同1.13~1.43)だった(全てP<0.001)。

 また、GM-ITEの総得点が高い研修医ほどCOVID-19患者ケアの経験が豊富で、COVID-19患者のケアに携わらないことが研修に悪影響を及ぼしている可能性が示唆された。

 以上を踏まえ、西﨑氏らは「COVID-19パンデミック下でも持続可能な医療システムを構築するには、COVID-19患者ケアの研修を推進していくことが重要」と結論。「パンデミックに『総動員体制』で対処するために、研修医を当初の専門研修領域から異動させる米国のガイドラインのような取り組みについて検討する必要がある」と付言している。

(太田敦子)

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