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コロナ関連急性脳症の実態明らかに

2023年04月03日 13:35

324名の医師が参考になったと回答 

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は主に呼吸器に感染し、脳に影響を及ぼすことはまれと考えられていた。ところが、2022年に基礎疾患のない小児が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に伴う急性脳症で死亡したことから、SARS-CoV-2の脳への影響に対する関心がにわかに高まった。東京女子医科大学八千代医療センター小児科教授の高梨潤一氏、東京都医学総合研究所脳・神経科学研究分野こどもの脳プロジェクトプロジェクトリーダーの佐久間啓氏らは、日本の小児におけるCOVID-19関連急性脳症の実態把握を目的に全国調査を実施。その結果、急性脳症に至った患児の半数以上が後遺症なく回復した一方で、死亡例や重度の後遺症が残る児もいたこと、ウイルス関連急性脳症の中でも急性脳症症候群は重症化しやすいことなどが明らかになったと、Front Neurosci2023; 17: 1085082)に発表した。

痙攣、意識障害、異常な言動で急性脳症に警戒

 調査方法は、日本小児神経学会会員を対象としたウェブアンケート。2020年1月1日~22年5月31日にCOVID-19に伴う急性脳症を発症した18歳未満の小児について、年齢、性、症状、診断名、転帰などを回答してもらった。

 その結果、COVID-19関連急性脳症患児は34例報告された。急性脳症の原因となる基礎疾患を有する3例を除く31例について詳しく検討したところ、29例はオミクロン株が流行の主体となった2022年1月以降の発症だった。しかし、同時期にはCOVID-19の罹患者数も急増していたため、2021年以前と2022年以降で急性脳症の発症割合に差はなく、オミクロン株が急性脳症を引き起こしやすいわけではないことが示された。

 成人、特に高齢者ではCOVID-19による重症肺炎の治療中に脳症を発症するケースが多いことが報告されている。しかし今回、急性脳症発症前に肺炎などの重い呼吸障害を呈していた児はおらず、症状としては痙攣、意識障害、異常な言動などが多かった。高梨氏らは「COVID-19による発熱に加えこれらの症状が出現したら、急性脳症に注意する必要がある」と指摘している。

 急性脳症の転帰を見ると、31例中19例は急性脳症発症前の状態まで回復した一方で、4例は死亡()。なんらかの神経学的後遺症が残った8例のうち5例は重度だった。同じ急性脳症でも、患児によって回復の程度に大きな差があることが示された。

図.急性脳症の転帰

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(東京女子医科大学プレスリリースより)

ワクチン接種により予防できるか検討が必要

 急性脳症は、特徴的な臨床所見および画像所見を呈する複数の急性脳症症候群といずれの症候群にも属さないタイプで構成される。これまでの日本における調査では、急性脳症症候群のうち痙攣重積型(二相性)急性脳症(AESD)が最も多く、次いで可逆性脳梁膨大部病変を有する軽症脳炎・脳症(MERS)だった。今回の調査でもAESDが31例中5例と最も多く、過去の結果と一致した。一方、これまで極めてまれとされていた劇症脳浮腫を伴う脳症(AFCE)や出血性ショック脳症症候群(HSES)が比較的多かった(それぞれ3例、2例)。AFCEとHSESはいずれも脳浮腫が急速に進行し致死率が高いことから、急性脳症症候群の診療では特に注意を要するという。

 急性脳症患児では、AESDやMERSなど急性脳症症候群のいずれかのタイプに分類される児といずれのタイプにも属さない児が約半数ずつとされる。そこで、急性脳症症候群の児とその他の急性脳症の児に分けて転帰を比較した。その結果、完全回復した割合は、その他の急性脳症の児の82.3%(14/17例)と比べ急性脳症症候群の児では35.7%(5/14例)と、転帰が明らかに不良であった。

 高梨氏らは「ウイルス関連急性脳症の中でも特徴的な臨床所見および画像所見を呈する急性脳症症候群を発症したCOVID-19患児は、重症化しやすいことが明らかになった。これらの症候群を重点的に研究することで、より多くの命が救えるはずだ」と結論。さらに、「ウイルス関連急性脳症の原因はいまだ不明であり、有効な治療法は確立されていない。今後は治療内容についてのデータを集積し、新たな治療法の開発に向けたエビデンスの構築を図りたい。また、小児に対するSARS-CoV-2ワクチン接種が急性脳症の予防につながるかについても検討したい」と展望している。

(比企野綾子)

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