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RSウイルスの母子免疫ワクチン、有効率は82%

RSウイルスによる下気道疾患の予防効果

2023年04月14日 17:37

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 英・ロンドン大学衛生学熱帯医学大学院/英国医学研究評議会ガンビア研究拠点のBeate Kampmann氏らは、妊婦への能動免疫により出生児のRSウイルス(RSV)感染に起因する下気道疾患を予防することを目的とした、組み換え2価融合前F蛋白質抗原含有RSV(RSVpreF)ワクチンの有効性と安全性を国際第Ⅲ相二重盲検プラセボ対照ランダム化比較試験MATISSEで検討。中間解析の結果、児の生後90日時における重症の下気道疾患に対し、81.8%の高い有効率が示されたとN Engl J Med2023年4月5日オンライン版)に発表した。同ワクチンは、ファイザーが今年(2023年)2月20日に日本国内での承認申請を行った(関連記事「RSウイルス2価ワクチン、高齢者に有効」)。

妊婦への接種により中和抗体が高率で児に移行

 RSV感染は、6カ月未満児における急性下気道疾患の最もよく見られる原因および主要な死因となるが、承認されたRSV予防ワクチンはまだない。こうした中、妊娠中期後半~後期の妊婦に対するRSVpreFワクチンは、第Ⅱb相試験において安全性プロファイルが良好で、母体に中和抗体反応を引き起こし、児への抗体移行率が高いことが示されている。

 MATISSE試験では、18カ国でワクチン接種予定日に49歳以下かつ妊娠24~36週の合併症を有さない妊婦7,358例を登録し、RSVpreFワクチン120μgまたはプラセボを1回筋肉内接種する群に1:1でランダムに割り付けた。全ての妊婦(ワクチン群3,682例、プラセボ群3,676例)と、これらの母親から出生した児(同3,570例、3,558例)を解析に組み入れた。

 有効性の主要評価項目は、児の生後90、120、150、180日時における医療機関の受診に至った①重症のRSV感染に起因する下気道疾患、②RSV感染に起因する下気道疾患ーの2項目とした。主要評価項目に対するワクチンの有効性を示す試験の成功基準は、ワクチン有効率の信頼区間(CI)の下限が20%を上回ることとした。

重症下気道疾患への有効性で試験の成功基準を達成

 解析の結果、重症のRSV感染に起因する下気道疾患の発症は、生後90日時にはプラセボ群の33例に対しワクチン群では6例(ワクチン有効率81.8%、99.5%CI 40.6~96.3%)、同様に生後180日時にはそれぞれ62例、19例(同69.4%、97.58%CI 44.3~84.1%)だった。いずれもワクチン有効率のCI下限が20%を上回り、成功基準が達成された。

 一方、生後90日時におけるRSV感染に起因する下気道疾患の発症は、プラセボ群の56例に対しワクチン群では24例と少なかったが(ワクチン有効率57.1%、99.5%CI 14.7~79.8%)、ワクチン有効率のCI下限が20%を下回り成功基準は達成されなかった。

 ただし、生後180日時におけるRSV感染に起因する下気道疾患の発症は、プラセボ群の117例に対しワクチン群で57例(ワクチン有効率51.3%、97.58%CI 29.4~66.8%)と、成功基準が達成された。

RSV関連入院も減少、有害事象はプラセボと差なし

 また、ワクチン群ではプラセボ群に比べて児の生後180日までのRSV関連入院が少なく、RSV関連入院に対するワクチン有効率は生後90日時で67.7%(99.17%CI 15.9~89.5%)、生後180日時で56.8%(同10.1~80.7%)だった。

 妊婦における有害事象の発現率は、ワクチン接種後1カ月以内(ワクチン群13.8% vs. プラセボ群13.1%)、出産後1カ月以内(同37.1% vs. 34.5%)のいずれも両群で同等だった。

 局所反応の発現率はプラセボ群に比べてワクチン群で高く、最も発現率が高かったのは注射部位疼痛だった(プラセボ群10% vs. ワクチン群41%)。

 以上の知見を踏まえ、Kampmann氏らは「妊婦へのRSVpreFワクチン接種は、出生児における重症のRSV感染に起因する下気道疾患およびRSV関連入院に対して有効で、安全性プロファイルが良好だった」と結論。「妊娠中期後半~後期のRSVpreFワクチン接種により児の出生後数カ月における重症RSV関連疾患を予防できる可能性が示されたことは、RSV感染に起因する下気道疾患の発症率が高い低・中所得国にとって特に重要」と付言している。

(太田敦子)

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