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卵黄コリン摂取で言語記憶が改善

日本人中高年60例が対象のRCT

2023年06月30日 17:07

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イメージ画像 © Adobe Stock ※画像はイメージです

 神経伝達物質アセチルコリンの前駆体であるコリンのうち、ホスファチジルコリンなどの卵黄コリン※1には認知機能との関連が報告されている。キユーピー株式会社の山下そよぐ氏らは、認知症がない60~80歳の中高年60例を対象に、卵黄コリンを含むサプリメントの継続摂取が認知機能に及ぼす影響を12週間の二重盲検プラセボ対照ランダム化プラセボ対照比較試験(RCT)で検討。その結果、卵黄コリン300mg/日の継続摂取により言語記憶の改善が示唆されたとLipids Health Dis2023; 22: 75)に発表した(関連記事「記憶力低下に強く関連する生活習慣因子とは」)。

Cognitraxの結果を比較

 山下氏らは、食品中におけるリン脂質の一種であるホスファチジルコリンを多く含む卵黄に焦点を当て、卵黄コリンの継続摂取が認知機能に及ぼす影響を二重盲検プラセボ対照RCTで検討した。

 同試験は、2021年8~12月に株式会社ケイ・エス・オーで実施した。対象は、Mini Mental State Examination日本語版(MMSE-J)で26点以上と判定された認知症はないが物忘れを自覚/指摘された60~80歳の中高年60例で、精神疾患や脳血管障害などの既往例は除外した。卵黄コリン約300mgを含むサプリメントを毎日摂取するコリン群(30例)とプラセボ群(30例)にランダムに割り付け、12週間摂取してもらった。

 主要評価項目は、コンピュータを用いた認知機能検査であるCognitraxの7種類のテスト〔①言語記憶、②視覚記憶、③指タッピング、④symbol digit coding(SCD)、⑤ストループテスト、⑥注意シフトテスト、⑦持続処理テスト〕で評価した11領域※2のスコア変化量とした。
 副次評価項目は、Trail Making Test(TMT)パートAおよびB、MOS Short-Form 36-Item Health Survey(SF-36)、日本語版WHO-5精神的健康状態表、血漿コリン濃度などの変化量とした。各評価項目は、サプリメント摂取前、摂取6週後、12週後に測定した。

 試験期間中の脱落者はいなかったが、認知機能との関連が報告されている血圧などの検査値について、摂取後に10%以上の変化があり基準を逸脱した例を含む19例を除外し、プラセボ群21例(平均年齢66歳、男性11例)とコリン群20例(同65歳、12例)を解析対象とした。

6週後に血漿中遊離コリン濃度上昇

 解析の結果、摂取6週後および12週後における言語記憶スコアのベースラインからの平均変化量に両群で有意差が認められ(プラセボ群:-0.33と0.33、コリン群:3.35と2.75、順にP=0.003、P=0.043)、言語記憶テストにおける遅延記憶の正解数の平均変化量にも有意差が認められた(同-0.10と-0.24 、1.95と1.60、順にP=0.015、P=0.046)。

 また、6週後における処理速度スコアおよびSCDテストの正解数の平均変化量にも有意差が認められたが(プラセボ群:2.86と2.90、コリン群:-1.40と-1.20、順にP=0.045、P=0.021)、12週後には消失した。

 12週後におけるSF-36の身体的側面のQOLサマリースコアの平均変化量は、プラセボ群に比べてコリン群で有意に低かった(1.88 vs. -1.76、P=0.029)。この結果について、山下氏らは「今回の研究は新型コロナウイルスの感染拡大期に実施したため、身体活動量の低下が影響した可能性がある」と考察している。

 TMTスコア、WHO-5の結果に両群で有意差はなかった。

 血漿中の遊離コリン濃度の平均変化量は、6週後にはプラセボ群と比べてコリン群で有意に高く(0.34μM vs 1.80μM、P=0.039)、12週後もコリン群の方が高かったが有意差はなかった。同氏らによると、卵黄コリンが脳内でアセチルコリン前駆体として機能し、アセチルコリン濃度を上昇させることが示唆されるという。

日本の食事摂取基準にコリンは未記載

 以上の結果から、山下氏らは「日本人中高年では卵黄コリン300mg/日の摂取により血漿遊離コリン濃度が上昇し、認知機能の一部分である言語記憶が改善することが示された。卵黄コリンの定期的な摂取を食事に取り入れることは、認知症がない成人の脳機能を維持する上で効果的な戦略となる可能性がある」と結論している。

 コリンは日本の食事摂取基準には記載されておらず、食品成分表にもコリンのデータはない。同氏らは「コリン摂取の影響をより正確に評価するには、日本で食事によるコリン摂取量を調査するか、食事摂取基準にコリンが記載されている地域で介入試験を実施する必要がある」とコメントしている。

※1ホスファチジルコリンはコリンの一般的な供給源であり、認知機能を維持する効果が期待されている。卵黄中のコリン化合物は主にホスファチジルコリンとその代謝産物であるリゾホスファチジルコリンおよびα-グリセロホスホコリンで構成され、これらは総称して卵黄コリンと呼ばれる。

※2Cognitraxで評価する認知機能領域:総合記憶力、言語記憶、視覚記憶、精神運動速度、反応時間、複合注意力、認知柔軟性、処理速度、実行機能、単純注意力、運動速度

(坂田真子)

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