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11月3日

AI診断による消化器診療の新展開

2023年11月03日 06:15

104名の医師が参考になったと回答 

ワークショップ1 提案:日本消化器病学会

11月2日(木) 9:00~11:30 第1会場(神戸国際展示場2号館 ホール北)

[司会]

高山 哲治氏

徳島大大学院・消化器内科学

藤城 光弘氏

東京大・消化器内科

[演者]

瀧浪 将貴氏

磐田市立総合病院・消化器内科

山口 寛二氏

京都府立医大・消化器内科

桑原 崇通氏

愛知県がんセンター・消化器内科

新倉 量太氏

東京医大病院・内視鏡センター

上山 浩也氏

順天堂大・消化器内科

上間 遼太郎氏

大阪大・消化器内科

窪澤 陽子氏

慶應義塾大・腫瘍センター低侵襲療法研究開発部門、慶應義塾大・消化器内科

平塚 裕也氏

福岡大筑紫病院・消化器内科

宮口 和也氏

埼玉医大病院・消化管内科

杉村 直毅氏

佐野病院・消化器センター

山田 真善氏

国立がん研究センター中央病院・内視鏡科、国立がん研究センター研究所・医療AI研究開発分野

加藤 駿氏

昭和大横浜市北部病院・消化器センター

近藤 礼一郎氏

久留米大・病理学

倉富 夏彦氏

山梨大・消化器内科

 消化器病領域では、2018年に人工知能(AI)を搭載した大腸内視鏡診断支援ソフトウエアが承認されて以来、さまざまな疾患分野において医療用AIの開発が進み、専門医に劣らない診断能を有するAIシステムが登場するなど、その性能も急速に向上している。本セッションでは多方面での活用に期待が高まるAIについて、前臨床から実臨床まで幅広い領域における最新の研究が報告された。冒頭、司会の哲治氏は「本セッションには45題に上る応募が寄せられ、その中から厳選した演題を取り上げた」と、セッションへの注目度および演題の質の高さを評した。

新規開発だけでなく、性能向上に向けた改良も進む

 瀧浪将貴氏は、透視下内視鏡検査時に透視モニターへの複数の視線をリアルタイムに推定するAIの開発を進める。「視線の検出精度は93.0%を達成し、実臨床においても術者の不要な被曝の回数と割合が低減した」と報告した。

 非アルコール性脂肪肝炎(NASH)における線維化進展症例を非侵襲的に検出するAIの開発に取り組む山口寛二氏は、旧来のシステムで用いていた年齢、性、肝機能などの12因子から、精度が低く欠落が多い腹囲を除いた11因子で検出する改良を実施。海外を含め臨床試験などへの活用に期待を寄せた。

 桑原崇通氏は、スーパーコンピューターを用いた学習・内的検証により膵腫瘤を3群(carcinoma/neoplastic non carcinoma/non neoplastic)に鑑別するAIを開発。「外的検証において89.4%と高い鑑別診断能が得られ、超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)での診断が困難な症例に対しても有用」と述べた。

 多様な胃がんモデルを生成するAIを開発する新倉量太氏は、内視鏡専門医による診断実証を踏まえた実際の胃がん画像と遜色ない生成画像を供覧。生成画像を通じた医師のトレーニングやAI開発の教材として用いることを提案した。

 胃がん早期診断においては、狭帯域光観察(NBI)併用拡大内視鏡(M-NBI)診断支援システムへの注目が高まっている。上山浩也氏は、6,000件超のM-NBI画像と最新の画像認識モデルにより新規AIシステムM-NBI AIを開発。内視鏡専門医と同等の診断精度を有し、現状の内視鏡システムに実装可能であるという。同氏は「胃がん診断の向上に寄与できる」と述べた。

 上間遼太郎氏は、超音波内視鏡検査(EUS)における診断精度のばらつきを是正するため、AIを用いた早期胃がんEUS深達度診断システムを開発。内部・外部検証データセットにより評価した結果、画像スタイル変換を適用することで専門医と同等の深達度診断能を示したと報告した。

 十二指腸腫瘍の内視鏡診断アルゴリズムは確立されておらず、診断に迷うことも多いという。窪澤陽子氏は、腫瘍/非腫瘍を鑑別するAIシステムを開発。陽性的中率は90%以上で、非腫瘍性病変を陽性と診断するケースなく、良好な検出能であった。

 全ての大腸内視鏡検査でにAIを用いることで、大腸腺腫やポリープなど検出率の向上が期待されている。平塚裕也氏は、内視鏡検査時に内視鏡システム「CAD-EYE」を併用した際の検出精度を検証。腺腫見逃し率(AMR)とポリープ見逃し率において、非併用群に比べ併用群で有意に低い結果が得られた。

 宮口和也氏は、大腸腺腫検出率(ADR)を向上させる因子として画像強調観察とAI支援システムに着目。Linked Color Imaging(LCI)による内視鏡検査単独群とAI併用群でADRおよび1人当たりの平均腺腫検出数(MAP)を評価し、ADRとMAPのいずれにおいても、単独群に比べ併用群で有意に良好だったと報告した。

 杉村直毅氏は、大腸病変指摘支援用AI「EndoBRAIN-EYE」についてVer1.2.0と最新のVer1.2.3を比較。検出精度の向上度合いを検証した結果、陽性的中率はVer1.2.0の12%に対しVer1.2.3では43%と向上し、「バージョンアップにより精度が大きくした」と述べた。

 大腸内視鏡検査中に大腸がんおよび前がん病変を自動的に検出するリアルタイム内視鏡診断支援AIシステム「WISE VISION」を開発する山田真善氏。「性能向上を目的とした350病変の動画を用いた転移学習の実施により、隆起型・表面型病変のいずれにおいても陽性・陰性的中率が改善し、目標の検出精度を得られた」と報告した。

 加藤駿氏は、大腸内視鏡診療における腫瘍/非腫瘍の鑑別に関し、汎用スコープによるNBI画像をAIで解析する質的診断支援プログラム「NBI-CAD」を開発。主要評価項目である腫瘍性病変に対する感度は97.9%、副次評価項目の特異度は84.0%と高く、それぞれ90%以上、80%以上とした目標値を達成し、薬機法承認を取得したことを発表した。

 近藤礼一郎氏は、肝細胞がん(HCC)の術後再発リスクの評価指標として核異型に注目し、肝組織標本を用いてHCCの核異型を定量的に解析するディープラーニングモデルを作成。AIの活用により核異型の定量的な評価が可能となり、核異型の評価はHCCの術後再発予防に有用だと述べた。

 膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)では、良性/悪性を判定するバイオマーカーの登場が期待されている。倉富夏彦氏は、その候補の1つである膵液中エクソソームに内包されるマイクロRNA(miRNA)について、次世代シークエンサーとAIを用いた網羅的な解析を実施。数あるmiRNAの中から5つのバイオマーカー候補を見いだし、臨床データと組み合わせることで簡便に良性/悪性を判定できたと報告した。

 最新のAI研究の成果報告が相次いだことから、各講演後の質疑応答は大変活発なものとなった。消化器領域におけるAIに対する期待の高さがうかがわれた。

第66回日本消化器病学会大会

[会長]坂本 直哉 
北海道大学大学院 消化器内科学

第108回日本消化器内視鏡学会総会

[会長]矢作 直久 
慶應義塾大学 腫瘍センター

第28回日本肝臓学会大会

[会長]四柳  宏 
東京大学医科学研究所先端医療研究センター感染症分野

第22回日本消化器外科学会大会

[会長]堀口 明彦 
藤田医科大学ばんたね病院 外科

第62回日本消化器がん検診学会大会

[会長]金岡  繁 
浜松医療センター 消化器内科

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