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認知検査の運用変更で高齢の自動車事故減少

2023年02月03日 16:24

490名の医師が参考になったと回答 

イメージ画像 © Adobe Stock ※画像はイメージです

 日本では交通安全推進のため、75歳以上の高齢ドライバーを対象に2009年から運転免許証更新時の認知機能検査が義務化され、2017年から検査の運⽤⽅法が変更された。免許証更新前に専⾨医の診断が必要となるケースや認知症と診断された場合、免許の取り消しや停⽌の対象となる。筑波大学医学医療系の稲田晴彦氏らは、2012~19年に全国で発⽣した⾼齢ドライバーによる交通事故のデータを⽤いて、2017年の運⽤変更後における75歳以上のドライバーの事故発生件数、自転⾞や徒歩で移動中に負った交通外傷について検証。運用変更後に自動車事故が減少したとJ Am Geriatr Soc2023年1月25日オンライン版)に発表した(関連記事「中等度認知機能障害を抱える高齢ドライバーの存在が明らかに」「高齢運転者は赤信号でイライラ増」「MCI高齢者でも運転能力は改善する!」)。

男性で交通事故率が低下

 交通事故件数が減少傾向にある中、⾼齢ドライバーが起こす事故の割合は増加し続けている。近年、アクセルとブレーキの踏み間違いや逆⾛などを原因とする相次ぐ事故が大きく報道され、世間の注⽬を集めている。これまで安全確保を⽬的として、1998年に⾼齢者講習、2009年に認知機能検査が75歳以上の運転免許証更新時に義務化された。しかし、稲田氏らの先⾏研究によると義務化後も事故は減少せず、高齢者が⾃転⾞や徒歩で移動する際の外傷が増加していた(Accid Anal Prev 2015; 75: 55-60)。

 2017年3⽉に運転免許証更新時の認知機能検査の運⽤⽅法が変更され、「認知症のおそれがある」と判定された場合は、免許証更新前に専⾨医の診断を受ける必要があり、認知症と診断されると免許の取り消しや停⽌が可能となった。

 そこで同氏らは、運⽤変更後に高齢者のドライバーとしての事故および⾃転⾞乗車中や歩行中の交通外傷の発生件数がどの程度変化したのかを分析した。研究では公益財団法⼈交通事故総合分析センターから⼊⼿した2012年7⽉~19年12⽉に全国で発⽣し、警察に報告された交通事故のデータを使⽤した。2017年3⽉の認知機能検査の運⽤変更後に、75歳以上で男⼥別の各年齢層(75~79歳、80~84歳、85歳以上)のドライバーが当事者となった事故発生率(性・年齢層別の⼈⼝当たり)と、免許証更新時の認知機能検査の対象外だった70~74歳のドライバーの事故発生率を比較。率⽐の変化を分断時系列解析を⽤いて分析し、⾼齢者の⾃転⾞乗車中や歩⾏中の交通外傷発生率(性・年齢層別の⼈⼝当たり)の変化も同様に分析した。

 その結果、2017年3⽉以降のドライバーとしての事故発生率は、いずれの年齢層でも男性が低下し、⼥性では統計学的に有意な変化が⾒られなかった()。

図. 認知機能検査の運⽤変更前後における1カ⽉当たりの交通事故率⽐

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(筑波大学プレスリリースより)

自転車・歩行中の外傷は女性で増加

 ⼀⽅、⾃転⾞乗車中や歩⾏中の交通外傷発生率は、⼥性で上昇していた。また、2017年3⽉以降の事故・交通外傷発生率の傾向の変化に基づき推定したところ、認知機能検査の運⽤が変更された2017年3⽉から2019年12⽉までに、75歳以上のドライバーの事故は3,670件(95%CI 2,104件~5,125件)減少し、⾃転⾞乗車中や歩⾏中の交通外傷は959件(同24件~1,834件)増加したと推定された。

 以上を踏まえ、稲田氏らは「運転免許証更新時の認知機能検査は、2017年3⽉の運⽤変更によりドライバーとしての事故発生件数を減らした可能性がある⼀⽅、⾃転⾞や歩⾏者としての交通外傷は増えた可能性が⽰唆された」と結論。その上で「2017年ごろから⾼齢ドライバーで増加している⾃主的な運転免許証返納が⼀因である可能性も考えられる。この運転免許証返納の増加を考慮し、今回の分析では免許証保有者ではなく、⼈⼝当たりの事故発生率の変化を検討することで75歳以上の⼈⼝全体における事故発⽣件数の変化を検討した」と付言している。

(小野寺尊允)

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