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父親の化学物質曝露で児の心疾患リスク増

2023年02月24日 17:05

334名の医師が参考になったと回答 

イメージ画像 © Adobe Stock ※画像はイメージです

 父親の化学物質などへの曝露が出生児の先天性心疾患(CHD)発症に関連することが示唆されているものの、大規模な前向き研究の報告はなかった。そこで大阪大学大学院医学系研究科招聘教授の磯博康氏らは、「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」の一環として、父親の化学物質などへの曝露頻度と出生児のCHD発症リスクとの関連を検討。その結果、化学物質への週1回以上または月1~3回の曝露が出生児のCHD発症リスクの有意な上昇に関連していたとEnviron Health Prev Med2023; 28: 12)に発表した(関連記事「妊娠中のリフォームが児のリスクに」「父親の殺虫剤への曝露が児の男女比に影響」「親の医療用物質取り扱いと小児がんの関係は?」)。

化学物質への曝露頻度で3群に分けて検討

 CHDは世界的に有病率が高く、主要な先天異常の3分の1を占める。発症には遺伝的因子と環境的因子が関与し、欧州に比べてアジアで発症頻度が高いとの報告がある(J Am Coll Cardiol 2011; 58: 2241-2247)。

 今回の研究対象は、エコチル調査に参加し自記式質問票で有効回答が得られた父児2万8,866組〔父親の職業性曝露あり1万7,219組(父親の平均年齢32±5.8歳)、職業性曝露なし1万1,647組(同33±5.9歳)〕。

 父親の化学物質への職業性曝露については、パートナーの妊娠判明前の3カ月間に父親が仕事で半日以上使用した化学物質の頻度を回答してもらい、①不使用、②月1~3回、③週1回以上-の3群に分類した。ロジスティック回帰分析を用いて、職業性曝露頻度別にCHD発症のオッズ比(OR)、95%CIを算出。交絡因子として両親の年齢、CHDの既往歴、糖尿病(母親は糖尿病または妊娠糖尿病)、教育歴、喫煙習慣、飲酒習慣、BMI(母親は妊娠前のBMI)、母親のてんかん、結合組織疾患、風疹、薬剤使用歴、世帯収入を調整した。出生児のCHDは出生時の医療記録から情報を得た。

週1回以上のプリンタ、月1~3回の無鉛はんだや微生物でリスク上昇

 検討の結果、出生児2万8,866人中175人がCHDを発症し(発症率6.06/1,000)、そのうち父親の職業性曝露あり群は120人だった(同4.16/1,000)。

 化学物質別に見ると、児のCHD発症リスクと有意に関連していたのは、週1回以上の使用ではコピー機/レーザープリンタ(OR 1.38、95%CI 1.00~1.91)、水性ペイント/インクジェットプリンタ(同1.60、1.08~2.37)、月1~3回の使用ではエンジンオイル(同1.68、1.02~2.77)、はんだなど鉛を含む製品(同2.03、1.06~3.88)、無鉛はんだ(同3.45、1.85~6.43)、微生物(同4.51、1.63~12.49)だった()。これらの物質と他の物質を組み合わせて曝露した場合も同様の関連が認められた。

図. 父親の化学物質への職業性曝露と出生児のCHD発症リスクとの関連

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(大阪大学プレスリリース)

 エンジンオイル、はんだなどの鉛を含む製品、無鉛はんだ、微生物において、週1回以上ではなく月1~3回の曝露がリスク上昇と関連した理由について、磯氏らは「定期的に曝露する者が少なく、児のCHD症例が限られていること、日本ではこれらの職業性曝露に対し厳しい規制が適用されていることが背景にあるのではないか」と考察。

 研究の限界として、「化学物質などの使用やその頻度は質問票による評価であり、生体試料の化学物質濃度などの客観的な指標を用いたものではない」と断った上で、同氏らは「母親の妊娠判明前3カ月間における父親の化学物質などへの職業性曝露は、出生児のCHD発症リスク上昇と有意に関連していた。これらの物質は、単独だけでなく他の物質と組み合わせて曝露した場合も同様の関連が認められた。今後は客観的な指標を用いた検討を進めていく」と結論している。

(小野寺尊允)

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