日本の伝統芸能を守りながら、さらに進化して次世代への架け橋に
片岡 愛之助 歌舞伎俳優
1972年3月4日生まれ。大阪府出身。屋号は松嶋屋。定紋は追いかけ五枚銀杏。1981年12月、十三代目片岡仁左衛門の部屋子となり、南座『勧進帳』の太刀持で片岡千代丸を名のり初舞台。1992年1月、片岡秀太郎の養子となり、大阪・中座『勧進帳』の駿河次郎ほかで六代目として片岡愛之助を襲名。2008年12月、上方舞楳茂都流四代目家元を継承し、三代目として楳茂都扇性(うめもとせんしょう)を襲名。近年は歌舞伎のみならず、舞台・映画・TVドラマでも活躍する。〔写真/吉場正行(人物)、村本祥一(静物)〕
歌舞伎俳優としての活躍をはじめ、映画や舞台、さらには話題を集めたTVドラマ『半沢直樹』(TBS系)の官僚役など、幅広い活動で話題を集める片岡愛之助さん。今回は、歌舞伎という日本が誇る伝統芸能をどのように受け継ぎ、さらに未来へ向け発展させていくかを伺った。
愛之助さんが着用されているスーツは、糸の染色から生地の織り、裁断・縫製から加工まですべての工程を日本国内で行っている『五大陸』の新作。「かせ染め」と呼ばれる昔ながらの染色技法を用い、希少な織機を用いて低速で織り上げられた生地は「レトロテック」と命名され、モダンさを携えた現代のジェントルマンに相応しいエレガントな風合いを有している。スーツ79,000円+税、ベスト25,000円+税(パターンメイド対応)、シャツ14,000円+税、タイ8,900円+税、カラーバー3,000円+税、チーフ4,500円+税。
先達の教えを吸収しながら自分の型に昇華していく
「公演が始まると、一日中現場にいる生活です。このライフスタイルはきっとお医者さんと同じはず」と笑う愛之助さん。仕事に対する真摯な姿勢は、語られる言葉の端々から感じられる。
「僕らは身体が資本ですので、病気やけがをしたら公演に穴を空けてしまうことになります。代わりの人にお役をやっていただくということは最大の無念、一番つらいのは自分です。観に来てくださるお客様を残念がらせてしまうことになりますし、結局その評価は自分に返ってくるものですから。そのためにも日頃から健康には、気を配るようになりました。特に結婚してからは、自分一人の身体ではないことを実感し、初めて人間ドックにも行きました。年に1回知人の医療機関で受けるように心がけています」
歌舞伎俳優として、先達からはどのようなことを学んできたのだろうか?
「歌舞伎の世界では、そのお役を勤められた先輩の元に習いに行くというのが慣わしです。先輩方によって教え方はさまざまで、息継ぎや声の出どころまでも寸分たがわず、自分の通りにやってもらいたいという方もいます。また、自分に合ったものを見つけて演じなさいと教える方もいます。大きく分けて歌舞伎は、関西で発展した『上方歌舞伎』と『江戸歌舞伎』があります。上方は型がないとよく言われますが、それは個々人の型というものがあるため。身体つきや声、性格などはそれぞれなので、自分に合ったものを探しなさい、ということを教えられました。伝統芸能としての歌舞伎の決まり事は正確に受け継ぎ、そこから自分の型へと昇華させるということでしょうか」
もともと歌舞伎は現代劇最先端で「傾いている」ということ
「伝統芸能としての古典歌舞伎をベースに、他のジャンルと歌舞伎を融合したコラボレーション歌舞伎にトライしたり、こけら落としから今年で10年目になる永楽館歌舞伎では『仙石騒動』を上演します。これは約130年前に演じられて以来の復活歌舞伎。構想も新たに、超大作を大幅に改訂して皆様に楽しんでいただき、ただ演じるだけでなく今後も再演できる作品を目指しています。また、フラメンコと歌舞伎を融合した『GOEMON 石川五右衛門』も好評で、何度も再演させていただいています。もともと歌舞伎は当時の現代劇。最先端で傾いているのが傾奇者で、今一番新しいことを取り入れて演じるのが歌舞伎なのです。だから漫画を歌舞伎化した『ワンピース歌舞伎』もあり、いろいろな歌舞伎があることを知っていただき、劇場に足を運んで空気感を体験していただきたい」と語る愛之助さん。
日本の文化を世界に発信するためにはどうすればよいのだろうか。
「まずは自分たちの文化をよく知っていただきたいですね。間もなく2020年には東京オリンピックが開催されます。海外から多くのお客様が東京を訪れますが、歌舞伎座の前に来た外国人の方から歌舞伎について尋ねられたとき、観たことがなくて答えられない、なんて寂しいですよね。皆さんが日本の代表として胸を張って説明できるように、これをきっかけに観ていただければと思います。歌舞伎を観るのに勉強なんて必要ありません、もともと庶民の娯楽なんですから。いつの間にか高尚芸術的な扱いをされているのはもったいないことです。映画と一緒で、気楽な格好と気分で楽しんでいただければいいのです」
文化を大切にすることが国の発展につながる
愛之助さんに歌舞伎の見方のコツをお伺いすると、
「ぜひイヤホンガイドを利用してみてください。歌舞伎を見慣れた方でも、初めての演目を観るときには、イヤホンガイドを使っていただき、説明を聞いていただければ、舞台に上がった俳優の紹介や衣裳や鬘などの色合いや形の意味も分かります。歌舞伎座では英語の字幕ガイドもありますから、海外の方をお連れしたときも安心です」とアドバイス。
そんな愛之助さんが今後、目指すことはどのようなことだろうか?
「もっと歌舞伎を海外に発信したいと思っています。海外での公演では全ての道具を日本から運ぶなど大掛かりになってしまい、コストや文化の違い、さらには世界情勢などに影響されてしまいがち。しかしそういったことを乗り越えてでも実現できるように、国をあげ皆一緒になって努力していきたいと考えています。なぜなら、文化を大切にする国こそ、経済が回っていると思うから。文化と経済の両輪を大切にすることがいい影響につながると思います」と話す。
最後に普段の装いを伺うと、
「プライベートで食事に行くときにはスーツを着たりします。普段は和装なので、あらためて新鮮な気持ちになりますね。医師の方も日常の白衣から、たまにドレスアップしてリラックスした時間を楽しむ、そんなひとときも大切なのではないでしょうか」と笑顔を見せてくれた。
伝統と革新。日本から発信する世界服『五大陸』
紳士の装いには各国の歴史に裏打ちされた特徴がある。英国の伝統、フランスの華やぎ、イタリアの粋、アメリカの合理性......。これらの優れた長所を日本の繊細さでまとめ上げた日本人の新しい紳士的スタイルを提案する『五大陸』。ジャパンメイドにこだわり25周年を迎えたブランドは、今シーズンも注目のアイテムを揃えている。
1. 上質な生地で究極の着心地を実現五大陸のものづくりのキーワードが「SLOW VINTAGE」。静岡県浜松、かつては遠州と呼ばれた場所で、旧式シャトル織機で選りすぐった糸を高密度に織り上げたシャツ地を使用している。丈夫で柔らかく、美しい光沢とさらっとした着心地が味わえる。各14,000円+税。
2. Vゾーンを輝かす日本の伝統織京都の西陣で織られた生地を使用したネクタイ。上質なシルクをできるだけ天然の状態に保つことによる、柔らかな触り心地と深みのある発色が特長。ヴィンテージ調の柄をモダンに仕上げている。Vゾーンが引き締るネクタイだ。左・中央/各10,000円+税、右/8,900円+税。
3. 真冬も紳士の凛々しさを纏うウールにカシミアをブレンドすることにより、上品な艶感と柔らかな着心地を実現したチェスターフィールドコート。生地にはなめらかな肌触りが特長のビーバー加工が施されており、これ一着でスタイリッシュな装いが完成する。日本製。130,000円+税。
4. 日本製本格靴は抜群の履き心地日本屈指のカスタムメイドシューズメーカーへ、木型からオリジナルでオーダーし出来上がったドレスシューズ。グッドイヤーウェルテッド式の本格靴は、長く履き続けられる逸品だ。上/65,000円+税、下/55,000円+税。
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- 日本の伝統芸能を守りながら、さらに進化して次世代への架け橋に
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- 日本茶の新しい可能性を探索し続ける
- いつ飲んでも美味しいお酒を目指して
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