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限局性前立腺がんの15年追跡研究

積極的監視、摘除術、放射線で死亡率に差なし

2023年03月24日 17:22

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 英・University of OxfordのFreddie C. Hamdy氏らは、限局性前立腺がん患者に対する3種類の治療〔積極的監視(active monitoring)療法、前立腺摘除術、放射線療法〕の予後を約15年追跡した第Ⅲ相非盲検Prostate Testing for Cancer and Treatment(ProtecT)試験の結果をN Engl J Med2023年3月11日オンライン版)に報告。3つの治療法で死亡率に差はなかったと述べている。(関連記事「前立腺全摘と経過観察で全死亡率に差なし」「前立腺がん監視療法で過剰治療を防げ!」)

前立腺がん1,600例以上を3群に割り付け

 最近のマルチパラメトリックMRIや標的生検(targeted biopsy)の進歩により、indolent disease(進行・増殖が遅いがん)の診断数は減る可能性があるものの、限局性前立腺がんのリスク分類/層別化(risk stratification)に基づく過剰治療や過少治療については、依然として論争の余地が残っている。

 ProtecT試験は1999~2009年に英国で前立腺特異的抗原(PSA)検査を受けた50~69歳の8万2,429例のうち、限局性前立腺がんと診断された1,643例を積極的監視療法群(545例)、前立腺摘除術群(553例)、放射線療法群(545例)にランダムに割り付け、予後を追跡した試験である。試験方法の詳細と10年追跡の結果は既に発表されている(N Engl J Med 2016; 375: 1415-1424、関連記事「前立腺がん死亡率、監視療法と根治療法に差なし」)。

 主要評価項目は前立腺特異的死亡率、副次評価項目は、全死亡、転移、病勢進行、長期アンドロゲン除去療法(ADT)の開始である。

 診断時、患者の77%が低リスクがんと見なされていたため、Hamdy氏らは、Cancer of the Prostate Risk Assessment(CAPRA)、D'Amico、Cambridge Prognostic Groupのリスク層別システム(リスク分類)を用いたサブグループ解析も実施し、結果解釈の参考とした。

監視療法群で転移やADT、病勢進行増えるも、死亡率は変わらず

 追跡期間中央値は15年(範囲11~21年)で、1,610例(98%)の追跡データが得られた。リスク層別解析の結果、診断時点で3分の1以上が中等度~高リスクの前立腺がんだったことが判明した。

 前立腺がん特異的死亡は全体で45例(2.7%)、内訳は積極的監視療法群17例(3.1%)、前立腺摘除術群12例(2.2%)、放射線療法群16例(2.9%)。積極的監視療法群に対するハザード比(HR)は、前立腺摘除術群0.66(95%CI 0.31~1.39)、放射線療法群0.88(同0.44~1.74)といずれも有意差はなかった(3群比較のP=0.53)。

 全死亡数〔356例(21.7%)〕は、積極的監視療法群124例、前立腺摘除術群117例、放射線療法群115例で、同様に3群間で有意差はなかった。

 転移は、積極的監視療法群の51例(9.4%)、前立腺摘除術群の26例(4.7%)、放射線療法群の27例(5.0%)に発生。長期ADTは、それぞれ69例(12.7%)、40例(7.2%)、42例(7.7%)で開始され、病勢進行は、141例(25.9%)、58例(10.5%)、60例(11.0%)に見られ、いずれも積極的監視療法群と他の2群に有意差が認められた。

 積極的監視療法群のうち133例(24.4%)は、前立腺がんに対する治療を全く行わなかったにもかかわらず、追跡期間終了時で生存していた。ベースラインのPSA値、腫瘍病期や悪性度、リスク層別スコアの前立腺がん特異的死亡率への寄与に差は確認されなかった。

ガイドラインの限界示すも最新診断技術は反映されていない

 結果について、Hamdy氏らは「われわれは、PSA検査で同定した臨床的限局性前立腺がんに対する治療の有効性について、長年検討を続けている。今回報告した15年追跡の解析結果から、3つの治療群で前立腺がん特異的死亡率(97%が生存)や全死亡率(78%が生存)に差がないことが明らかになった」と結論。

 さらに「前立腺摘除術や放射線療法により転移や局所進行、長期ADTの数こそ減るものの、これらの減少は死亡率の低下にはつながらなかった」と述べ、「主要ガイドラインではベースラインのPSA値、臨床病期、Gleasonグレード、生検所見に基づくリスク層別化を推奨しているが、われわれの試験はそのような方法の限界を明らかにした」と考察している。

 最後に同氏らは、試験開始以降の治療や診断の進歩について言及。同試験の患者登録に際しては、マルチパラメトリックMRIや前立腺特異的膜抗原(PSMA)を標的としたPET診断は使用されず、生検も画像誘導で行われたものではないと付言し、研究の限界であると断っている。

木本 治

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