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第30回 日本消化器関連学会週間(JDDW 2022)

治療抵抗性炎症性腸疾患に対する集学的治療

2022年10月27日 06:30

198名の医師が参考になったと回答 

統合プログラム1(パネルディスカッション)

10月27日 9:00〜12:00 第3会場(福岡サンパレス パレスルーム)

司会
池内 浩基 兵庫医大・炎症性腸疾患外科
金井 隆典 慶應義塾大・消化器内科
絹笠 祐介 東京医歯大・消化管外科
演者
Gianluca Pellino Department of Advanced Medical and Surgical Sciences, University of Campania
小島 雄一 新潟大医歯学総合病院・消化器内科
高橋 賢一 東北労災病院・炎症性腸疾患センター
大宮 直木 藤田医大・先端光学診療学
大和田 潤 自治医大・消化器内科
内野 基 兵庫医大・炎症性腸疾患外科
杉本 真也 慶應義塾大・消化器内科
小松 更一 東京大・腫瘍外科
黒木 博介 横浜市立市民病院・炎症性腸疾患科
小嶋 裕一郎 山梨県立中央病院・消化器内科
長沼 誠 関西医大・3内科
岡林 剛史 慶應義塾大・一般消化器外科

 炎症性腸疾患(IBD)は半世紀にわたり患者が増え続けている。難病情報センターの「特定医療費(指定難病)受給者証所持者数」によると、2017年以降に潰瘍性大腸炎(UC)患者が減少しているが()、これは軽症例が指定難病から除外されたためであり、実際の患者数はUC、クローン病(CD)ともに増加している。消化器内科と消化器外科が連携して対応すべき疾患として、重要性は高まる一方である。本セッションの司会を務める池内浩基氏は「IBDセンターの設立が相次いでいるが、IBDを専門とする外科医はいまだ少ない」と指摘。「集学的治療の知見は重要であり、この機会に外科医と内科医で最新の成果を共有してほしい」と述べる。

図.UCおよびCD患者の推移

(難病情報センター「特定疾患医療受給者証所持者数」および「特定医療費(指定難病)受給者証所持者数」

を基に編集部作成)

UC:内科的治療の進歩、手術例の減少・高齢化、UC関連大腸腫瘍

 UCでは内科的治療の進展が著しい。長沼誠氏は、多様な内科的治療法の有効性について多施設コホート研究で評価を実施。入院患者におけるステロイド、タクロリムス、生物学的製剤、JAK阻害薬などの臨床効果を比較する。岡林剛史氏は、手術を施行した薬剤不応性症例の検討から手術回避に有用な薬剤選択を考察する。チオプリン製剤はIBD治療に変革をもたらしたが、NUDT15遺伝子にCys/Cys変異があると早期に重篤な副作用を来すとされている。小嶋裕一郎氏は、UC患者およびCD患者おける遺伝子変異と治療抵抗性との関わりを検討する。

 こうした内科的治療の進歩により手術数は減少し、手術適応としてはがん/dysplasiaが増加している。また、手術症例は明らかに高齢化している。池内氏は「待機手術は減少しているが、緊急手術はむしろ増加しているのが現状である」と述べた。

 がん/dysplasiaの増加については、小松更一氏が大腸癌研究会のデータを用いてIBD関連がん/dysplasiaの特徴と治療成績の変遷を調査した結果を発表する。内野基氏は、同研究会のデータを用いて組織型に注目した検討から、散発性大腸がんと比べてIBD関連がんでは病期進行に伴い組織悪性度の高いがんが増えることを示す。この点について池内氏は、最近はUC患者のがん/dysplasiaに対して内視鏡的サーベイランスが定期的に行われるようになり、早期発見例が増え予後は改善していると説明した。杉本真也氏は、扁平上皮の肛門粘膜と円柱上皮の直腸粘膜が混在する肛門直腸移行部の腫瘍化リスクに着目した、新たなアプローチについて報告する。

CD:結腸全摘か部分切除か、緊急手術例の特徴、短腸症候群、EBD

 CDにおいても、UCと同様に内科的治療は大きな進歩を遂げた。ただしCDの特徴として、症状が出現した時点で既に手術適応となるケースが少なくないことが挙げられる。手術は狭窄に対して施行される場合が多いが、症状は狭窄が進行しないと現れないためである。

 結腸CDに対し結腸全摘術と部分的切除術のどちらを選択すべきかは議論があるが、Gianluca Pellino氏は前向きデータベース研究から、部分的切除術において安全かつ外科的再発率が低かったことを報告する。池内氏は「人種差など考慮すべき点も多いが、注目すべき内容」と語った。

 生物学的製剤の普及以降、CDの緊急手術例は減少傾向にある。小島雄一氏は緊急手術の原因として消化管穿孔が最も多く、CDでは穿孔のリスクを常に念頭に置くべきであるとの報告を行う。また、待機的手術では内視鏡手術が主流となったものの、瘻孔や癒着、膿瘍などで開腹に移行せざるをえない例がある。どのような症例が腹腔鏡手術に至適なのか、高橋賢一氏が検討結果を示す。

 CDでは頻回の手術による短腸症候群が深刻な問題となるが、これに対する新薬としてGLP-2アナログ製剤テデュグルチドが登場した。残存する腸管粘膜の絨毛を伸ばすなどの機序により中心静脈栄養からの離脱を目指す薬剤であり、黒木博介氏が使用経験を含めた腸管不全のマネジメントについて解説する。

 内科で積極的に取り組まれている内視鏡的バルーン拡張術は低侵襲な治療法として急速に普及しているものの、半数以上の例で再拡張が必要という課題が残されている。最新の治療成績について大宮直木氏、大和田潤氏が自施設の成績をそれぞれ紹介する。池内氏は狭窄形成術の再手術率の低さを指摘し、「こうした新しい治療法の優劣や使い分けをめぐり、内科医と外科医との忌憚のない議論が交わされるだろう」と期待を寄せている。

第65回 日本消化器病学会大会 会長 名越 澄子 埼玉医科大学総合医療センター 消化器・肝臓内科
第106回 日本消化器内視鏡学会総会 会長 塩谷 昭子 川崎医科大学 消化器内科
第27回 日本肝臓学会大会 会長 島田 光生 徳島大学大学院 消化器・移植外科学
第21回 日本消化器外科学会大会 会長 大段 秀樹 広島大学大学院 消化器・移植外科学
第61回 日本消化器がん検診学会大会 会長 日山 亨 広島大学保健管理センター

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