インフル後の症状に要注意―におい感じない嗅覚障害
2011年11月29日 15:07
においを感じなくなることを嗅覚(きゅうかく)障害といい、インフルエンザなどの感冒にかかった後に起こることがある。東京慈恵会医科大学付属病院耳鼻咽喉科の松脇由典講師は「においが分かりにくいと感じたら、早めに耳鼻咽喉科を受診するように」と勧める。
細胞に障害の可能性
嗅覚障害はさまざまな病気によって引き起こされ、インフルエンザや一般の風邪などの感冒による場合が、慢性副鼻腔(くう)炎によるものに次いで多い。インフルエンザは一般の風邪に比べ症状が重いので、嗅覚障害が起こりやすい。
においを感じ取り、においの情報を脳に伝える嗅細胞と嗅神経は、鼻腔の上方にある。インフルエンザが治っているのににおいが感じられない状態が改善しない場合は、嗅細胞や嗅神経に何らかの障害が起こっていると考えられる。
嗅覚障害の原因を突き止めるには、鼻の内視鏡検査やコンピューター断層撮影装置(CT)、アレルギー検査、鼻汁検査などが行われる。
治癒率は3~6割
嗅覚の測定検査には、(1)試薬のにおいをかいで障害の程度を調べる「基準嗅覚検査(TアンドT)」、(2)ニンニク臭のある薬を静脈に注射し、呼気(吐き出す息)からにおいを感じることができるかどうかを検査する「静脈性嗅覚検査」―の2つがある。
基準嗅覚検査で全く感知できなくても、静脈性嗅覚検査でにおいが感じられれば、嗅覚障害は回復する可能性が高いという。
治療では、主にステロイド点鼻薬が処方され、併せてビタミンB12が服用されることがある。
松脇講師は「感冒後嗅覚障害の治癒率は、約30~60%とあまり良くありませんが、長期間の治療で回復する例も多いので、発症した後3年程度は粘り強く治療を続けてください」と助言。
その上で「インフルエンザが治った後1~2カ月たってから、においを感じないと言って病院を訪ねて来るケースが多いのですが、早く気付いて治療すれば治りやすくなります」と早期発見、早期治療の大切さを訴えている。
2008年11月取材(記事内容、医師の所属・肩書きは取材当時のもの)