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患者にうつすと分かっていても...病欠する医師少ない―米調査

 2015年07月10日 06:00

 米フィラデルフィア小児病院のジュリア・E・シムチャック氏らは、同病院の関連施設に勤務する約500人の医療従事者を対象に調査したところ、患者に感染させる危険性を認識していながら、過去1年間に体調不良でも出勤したことのある人が8割を超えることが分かったと、7月6日発行の米小児科専門誌「JAMA Pediatrics」(電子版)に報告した。下痢でも出勤すると回答した医師も約4割に上っていたという。その背景には、医師の使命感や人員不足などがあるようだ。

発熱あっても2割が「出勤する」

 感染症の症状がある医療従事者が出勤したことがきっかけで、病院内にインフルエンザやノロウイルスなどの感染が広がったという報告は多い。こうしたことは、特に免疫力が落ちている患者や新生児などにとって危険度が高く、さらには医療費を増大させることが指摘されている。

 シムチャック氏らは今回、フィラデルフィア小児病院の関連施設に勤務する医師や高度医療に携わる看護師(診療看護師=NP、医師助手=PA)、助産師らを対象に、無記名アンケート調査を実施。医師280人、看護師・助産師256人から回答が得られた。

 調査結果を見ると、全体の95.3%(504人)は自身が体調不良の日に出勤すれば患者を危険にさらす可能性があることを認識していたが、83.1%(446人)が過去1年間に体調不良でも出勤したことが1回以上あると回答。そうした経験が5回以上ある人も9.3%(50人)いた。

 また、医師280人のうち、症状が「咳(せき)と鼻水のみ」であれば出勤すると回答したのは79.6%に上り、「咳や下痢、喉の痛みなどの明らかな風邪の兆候」でも60.0%、「下痢のみ」で38.9%、「発熱のみ」で21.8%が出勤すると答えた。

患者や同僚を「がっかりさせたくない」

 体調不良でも出勤する理由(医師を含む医療従事者全体)で最も多かったのは、「同僚をがっかりさせたくない」(98.7%)。次いで「マンパワー不足」(94.9%)、「患者をがっかりさせたくない」(92.5%)が続いた。そのほか、「同僚から疎外されることへの恐れ」(64.0%)、「同僚も体調不良でも出勤している」(65.0%)、「治療の継続性を損なわないため」(63.8%)、「自分の業務を代替できるスタッフがほかにいない」(52.6%)などが主な理由だった。

 さらに、出勤した理由に関する自由回答欄には、316人のうち205人(64.9%)が「適切な代替要員の確保や配置といった支援体制が整備されていない、あるいは職員の病欠に対応するためのシステムレベルでの資源が不十分」「重い病気でない限りは出勤すべきとの施設での雰囲気(文化的規範)がある」「どういう症状ならば欠勤すべきなのかが曖昧」といった内容を記していた。

休むべき症状の明確な基準必要

 これらの結果について、シムチャック氏らは「このような医療従事者の行動には、社会的な要因や支援体制に関する要因が複雑に影響していることが浮き彫りになった」と説明した。

 感染症管理の専門家である米ベイラー医科大学のジェフリー・R・スターク教授らは、同号の論評(電子版)で「医療従事者の病欠に対応するための、より安全でより公平なシステムを整備するには、施設は働く人の傷病への"スティグマ"(らく印)をなくすため、施設内の文化を変える必要がある」と強調。「どの程度の症状であれば休暇を取るべきなのか、基準を明確にしておく必要がある」と呼びかけている。

(あなたの健康百科編集部)

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